余った香典は誰のもの?香典にまつわる注意点や生じうるトラブルについて

大切な方を亡くされ、葬儀を執り行っている皆様、心からお悔やみ申し上げます。

葬儀費用については全額ないし一定額を香典から支払うことを検討されている方もおられるでしょうが、この香典はそもそも誰のものなのでしょうか。このような話はあまり一般的な話ではなく、自分が当事者となるまで意識しない方が多いと思われます。もっとも、香典を相続財産としてよいのかという点や税務上どのように取り扱われるのかという点については、よくわからないまま判断すると法律上誤った判断をする恐れがあり、後のトラブルにつながりかねません。

そこで、本記事では、香典にまつわる注意点や生じうるトラブルをご紹介いたします。本記事を読むことで、香典についての知識を深めていただけますと幸いです。

1.香典の特徴について

(1)香典は相続財産に当たるか

結論から申し上げますと、香典は、被相続人に対して与えられるものではないため、相続財産には該当しません。一般に、香典は遺族の方の負担を軽減することを目的とする喪主への贈与と考えられています。そのため、香典については、他の相続財産とは異なるルールが適用されることになります。

(2)税務上の注意点

まず、香典については、(1)に記載のとおり相続財産ではありませんので、相続税はかかりません

次に、香典に対して贈与税がかかるかについてですが、国税庁のHPの「タックスアンサーNo4405」では、贈与税のかからない財産として「個人から受け取る香典で・・・社会通念上相当と認められるもの」としています。したがって、社会通念上相当(=常識的に考えて妥当)な香典の額と認められるものの場合には贈与税もかからないということになります。もっとも、香典に対して贈与税が発生するかについて、具体的にいくらもらうと贈与税が発生するかなどの基準はなく、社会的な常識等を考慮して妥当な額といえるかによって決定されるところ、かかる判断を行うためには一定の専門的知見が必要となります。

以上から、香典に対して贈与税がかかるかご不安な方は、お近くの税理士等の専門家に相談してみるのがよろしいかと思われます。

2.香典で生じうるトラブル

(1)香典について生じるトラブルの具体例

一般的に香典については、葬儀費用に充てられるところ、香典を全て葬儀費用に充てる限りにおいてトラブルになる事例は少ないでしょう。

もっとも、社葬などを行い、香典の総額が葬儀費用よりも高くなった場合には、余った香典を喪主が取得するか、相続人が取得するかでトラブルになることがあります。

(2)余った香典は誰のものか

余った香典が誰のものになるかについて、法律は明確な規定を設けていません。余剰分の香典を誰が取得するかについては、喪主に帰属するという考えと、相続人に帰属するという考え方があります。

裁判例でも余剰分の香典の帰属について明確に判断したものはありません。もっとも、香典について、香典の基本的性格は葬式費用の一部負担であり、香典は喪主に贈られたものと解するのが相当であるとした裁判例(広島高裁平成3年9月30日)があります。この裁判例は、香典を喪主への贈与としているところ、贈与の範囲について具体的にどの範囲という限定を付しておらず、香典の全額が喪主への贈与であることを前提としていると思われます。そのため、この裁判例は、余剰分の香典について喪主に帰属するという考え方と親和性が高いものといえるでしょう。ただし、香典の基本的性格を葬式費用の一部負担としている以上、余った香典を喪主が私的に使い込んだというような場合には、かかる裁判例を前提としても、当該香典については、喪主に帰属しないとされる可能性が高いです。

3.香典トラブルに対する対応策

(1)トラブルにならないための予防策

2(2)に記載のとおり、香典に余剰が生じた場合に当該香典が誰に帰属するかについて、明確な規定はありません。そのため、後のトラブルを防止するという観点では、香典に余剰分が生じた場合にどのように分配するかについてあらかじめ書面等で合意をしておく方法が考えられます。

また、香典の総額や使途について明確にしておくことものちのトラブル防止という観点から望ましいといえるでしょう。

(2)トラブルが生じてしまった場合にはどうすればよいか

香典についてトラブルが生じてしまった場合、当事者間で協議を行う方法のほか、家庭裁判所に対し調停や審判の申立てを行う方法や地方裁判所に訴訟提起をする方法が考えられます

いずれの方法にもメリット、デメリットがあり、ベストな解決方法は人によって様々です。そのため、どの方法による解決が自分にとってベストな解決方法か気になる方は、弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

4.香典トラブルに関して千瑞穂法律事務所ができること 

香典についての説明は以上のとおりであるところ、特に香典で余剰金が生じた場合にはトラブルとなる可能性を含んでいると言えます。

千瑞穂法律事務所では上記のようなトラブルを抱えている方々を全面的にサポートしていきます。具体的には、法律相談を通じた適切な解決手段をアドバイスすることや調停ないし訴訟の代理人となり、書類の作成や手続きのサポートをするといったことを行っております。

また、香典についてトラブルが生じている場合、相続財産についても同時にトラブルが生じている可能性が高いと思われるところ、それぞれについて解決することが望ましいのか、それとも一挙に解決することが望ましいかなど、一人一人の状況に応じて、ベストな対応は異なると思われます。そして、ベストな対応をするには、その分野について深い知識を持つ専門家のサポートが不可欠です。

千瑞穂法律事務所では、相続分野を得意分野としており、当事務所の口コミで丁寧な対応であると依頼者様から高く評価していただいている弁護士が在籍しており、依頼者様のお話をじっくり聞いたうえで最も満足のいく解決方法を提示することができます。また、30年以上にわたって裁判官を務めた弁護士も在籍しており、裁判官の視点も踏まえた解決方法の提示をすることも可能です。

香典についてのトラブルで悩まれている方は、お気軽にご相談ください。

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