身寄りのない親戚が死亡。立替えた葬儀等の費用は?残った遺産の取得(相続)をできるのか?

1 はじめに

 身寄りのない親戚が亡くなり、葬儀や関連費用を立て替えた場合、その費用の精算や残された遺産の取得方法について、多くの方が疑問を抱かれることでしょう。本記事では、具体的な事例をもとに、これらの問題に対する法的な手続きや注意点を詳しく解説します。

2 参考事例の紹介

質問:先日、私の姪が亡くなりました。アパートの自室内で亡くなっているのが発見されたときには、死後1週間ほど経っていたようでした。

姪の両親は既に他界していて、兄弟もいないので相続人はいません。

私が親戚として姪の部屋の特殊清掃の手配や、火葬・葬儀などの事後手続を全て行い、費用が全部で150万円ほどかかりました。

姪の預金口座には500万円ほどありましたが、口座凍結されたので引出しはできませんでした。

私が支出した費用はどうなりますか? 姪の預金を私が相続することはできますか?

3 相続財産清算人の選任申立

 人がお亡くなりになった場合、多くの場合、相続人が死後の手続きを行います。そして、多くの場合、死後の手続きに要した費用は、相続人間の遺産分割協議において、必要経費として遺産から支出されることになります。

 ところが、相続人が誰もいない場合、相続人でない人が、やむを得ず、亡くなった方の死後の諸手続きを行うことがあります。その諸手続きに要した費用を、亡くなった方の遺産で支払ってもらうためには、まず、その遺産を管理して清算処理をする人である相続財産清算人を家庭裁判所に選任するように申立をすることが必要になります。

 相続財産清算人は、亡くなられた方の財産を管理して、その財産を処分したり、債権者に対して債務の弁済を行ったりする役割を担います。

【相続財産清算人の選任申立の手続き】

●申立人:

利害関係人(葬儀費用を立て替えた人など)や検察官が申し立てることができます。

●申立先:

亡くなられた方(被相続人)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所。

●必要書類:

⑴申立書

⑵被相続人の出生時から死亡時までの戸籍謄本類

⑶被相続人の住民票除票または戸籍附票

⑷財産関係資料(預貯金の通帳、不動産全部事項証明書、株や債券といった有価証券に関する資料など)

⑸被相続人との利害関係を示す資料(例えば、被相続人と同居していたことがわかる住民票、健康保険証、看護記録や親族関係を示す戸籍謄本類、被相続人が書き残したメモ、被相続人が支払うべき費用を立て替え払いしたことを示す書類など)

●費用:

⑴収入印紙代(800円程度)

⑵予納郵便切手代(申立先の家庭裁判所によって、それぞれ異なるので確認が必要です)

⑶官報公告費用(約4000~5000円程度)

⑷予納金(選任された相続財産清算人が行うべき活動の内容に応じて、家庭裁判所が決定します。少なくとも10万円から20万円は必要で、活動内容によって、それ以上の金額の予納が必要となります)

4 葬儀費用等の請求手続

 相続財産清算人が選任された後、本来、亡くなられた方が支払うべきであった費用などを支払った人は、それらの費用を被相続人の財産(遺産)から優先的に支払うように、相続財産清算人に対して請求することになります。

【手続きの流れ】

⑴費用の証明:立て替えた費用の領収書や明細書を相続財産管理人に提出します。

⑵相続財産清算人の判断:相続財産清算人は、提出された資料をもとに、費用の妥当性や必要性を判断します。

⑶家庭裁判所の許可:相続財産清算人は、家庭裁判所と協議し、支出の範囲や金額が合理的かどうかを検討します。家庭裁判所が許可した範囲内で、費用を支出した人に対して、遺産からの支払いが行われます。

 注意点として、支出したのが葬儀費用の場合、葬儀の規模や内容、費用の額が社会通念上適切であることが求められます。過度に高額な葬儀費用や、被相続人の意思に反するような支出は、認められない可能性があります。

5 残余財産分与請求(特別縁故者)

 上記の費用支払の請求と併せて、特別縁故者として残余財産の分与を請求することも考えられます。

 特別縁故者とは、亡くなった人(被相続人)と特別に親しい関係にあったことを理由に、相続人ではないにもかかわらず、遺産の全部又は一部を取得できることになる人をいいます。

 特別縁故者として認められる可能性があるのは、次のような人です。

⑴被相続人と生計を同じくしていた人

 内縁関係にあった人や、事実上の養子・養親などとして、被相続人と同居して生計を同じくしていた人は、特別縁故者として認められる可能性があります。

⑵被相続人の療養看護に努めた人

 被相続人の生前に、ずっと親身になって世話や介護を行っていた人は、特別縁故者として認められる可能性があります。自宅療養の場合だけでなく、施設療養の場合も、認められる場合はあります。もっとも、介護や看護を仕事として行っていた人は、原則として特別縁故者とは認められません。

⑶被相続人と特別密接な関係にあった人

 その他にも、亡くなられた方(被相続人)と特別に密接な関係にあった人は、特別縁故者と認められる可能性があります。

 特別に密接な関係があったと言えるためには、通常の交流があった程度では足りません。上記⑴の生計を同一にしていた場合や、上記⑵の療養看護の場合と同程度に密接な交流があり、その方に相続財産を分与することが被相続人の意思に合致するとみられる場合といえるか、が重要になります。

 例えば、生前に被相続人と特に親しく交流していた友人知人の方や、遺言書こそないものの、生前に被相続人が「財産を譲りたい」と言っていたことが証明できるような相手の方、被相続人から生前に継続的に金銭援助を受けていた人などが考えられます。

【手続きの流れ】

 特別縁故者であると主張する人が、遺産からの財産分与を求める申立をするのは、「相続人不存在の確定後3カ月以内」に行わねばなりません。その期限を過ぎると遺産からの財産分与を受けられなくなるので、注意が必要です。

●必要書類:

⑴申立書

⑵申立人の住民票または戸籍附票

⑶被相続人の戸籍(除籍)謄本

●費用:

収入印紙 800円

6 生前にできる対策(遺言書等の作成)

 法定相続人がいない方が亡くなられた場合、生前にその方の面倒を見ていた方や、お亡くなりになった後に葬儀を行った方などが、その方の遺産から立て替えた費用の支出などを得ようとすると、上述したような手続きを行わなければならず、大変、面倒です。また、せっかく手続きをしても、家庭裁判所に認めてもらえないリスクもあります。

 そのような手間やリスクを避けるためには、生前に、遺言書や死後事務委任契約書を作成しておいてもらうという対策をしておくことができればベストです。

 具体的には、生前にお世話になっていた方に対して、財産を残す(遺贈する)といった内容の遺言書を作成してもらい、かつ、そのお世話になった方を遺言執行者として指名しておくこと、葬儀の方法などを指定して、その葬儀の主催を委ねる死後事務委任委任契約書を作成すること、そして遺言書や死後事務委任契約書を公正証書で作成しておくといった準備ができていると、お亡くなりになったあとの手続きがスムーズになります。

7 特別縁故者の生前対策、死後の各種申立は、千瑞穂法律事務所にご相談下さい

 千瑞穂法律事務所には、長年にわたり裁判官や公証人を務めた弁護士や、家庭裁判所の現役の非常勤裁判官として多くの遺産分割問題に取り組んでいる弁護士が在籍しています。そうした経験と実績に基づいて、特別縁故者の生前対策、死後の各種申立てについて、適切な法的助言を行うことができます。

 特別縁故者の生前対策、死後の各種申立ての問題でお困りごとがあれば、まずはお気軽に、千瑞穂法律事務所にご相談下さい。

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