遺産分割をやり直すと税金(相続税・贈与税・所得税)はかかりますか?

よくあるご質問

3年前に父が亡くなり、相続人である私と兄の二人で父の遺産を相続しました。遺産分割協議に基づいて相続税申告も終えました。

 ところが最近、父の事業を承継した兄が不況で苦しんでいます。そこで私が相続で得た賃貸アパートを兄に譲ろうと思っています。単純な贈与では贈与税が発生してしまいます。そこで、遺産分割協議をやり直し、賃貸アパートも兄が相続したことにしたいと思っているのですが、できるでしょうか?

遺産分割をやり直す場合、相続税とは別に贈与税・所得税が発生する場合がある

 遺産分割の方法には「協議」「調停」「審判」があります。このうち「協議」による遺産分割は、相続人全員の同意があれば、遺産分割を合意解除したものとして、やり直すことができます(最高裁平成2年9月27日判決)。しかし「調停」や「審判」により遺産分割が成立している場合は、無効・取消原因に該当する場合でなければ、やり直しはできません。代表的な無効原因としては、遺産分割成立後に新たな遺産が発見され、新発見の財産だけを分割することができない場合や、詐欺や脅迫などで相続人の意思表示に問題があった場合などです。

 もっとも、遺産分割のやり直しができる場合でも、税金との関係では注意が必要です。

 遺産分割協議を合意解除してやり直した場合でも、相続税法上は「相続とは別の原因による財産の移転」すなわち、相続人間で新たな財産の贈与・譲渡行為があったと捉えられ、既に納めた相続税とは別に、贈与税・所得税が課税される可能性が高いからです(東京高裁平成12年1月26日判決参照)。

 他方、判決もしくは判決と同一の効力を有する和解や調停により遺産分割が無効となった場合、遺産分割は最初から存在しなかったことになります。そのため、やり直しの遺産分割は、法的には「分割後の再分割」ではなく、「最初の遺産分割」となるため、相続税のみが発生し、贈与税・所得税は課税されません(国税通則法23条2項)。

 このことを知った上で、遺産分割協議をやり直したい相続人が、贈与税・所得税の発生を回避する目的で、敢えて遺産分割の無効確認訴訟を提起するケースもあります。しかし、税務当局はこのような「馴れ合い訴訟」に厳しく目を光らせており、たとえ裁判所で無効判決が出た場合でも、税務上は遺産分割の無効が認められずに、贈与税・所得税が課される場合もあるので、注意が必要です(福岡高裁平成13年4月12日判決参照)。

 このように遺産分割のやり直しには課税上のリスクが高いので、やり直しにならないように、慎重に行うことが重要です。

まずは弁護士にご相談ください。

遺産分割のやり直しには、様々な問題が発生します。

遺産分割のやり直しをご検討される方は、ぜひ弁護士に一度ご相談ください。

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