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◆検認の目的
遺言の検認とは、亡くなられた方が自筆で作成された遺言書(自筆証書遺言)について、その存在や内容を家庭裁判所が確認する手続のことを指します。この手続きは、自筆の遺言書が偽造・変造されることを防ぐ目的で行われます。
◆検認の手順
具体的な手続きの流れは以下の通りです。
(1)家庭裁判所への申立て
遺言書が発見されたら、まずは遺言書の保管者(見つけた人)は遺言書の検認を家庭裁判所に申し立てる必要があります。遺言書を勝手に開封してはならず、未開封のまま提出します。提出の際には、戸籍謄本や遺言者の死亡診断書、申立書が必要です。
(2)検認期日の通知
家庭裁判所は検認の期日を定め、相続人全員にその期日を通知します。相続人が出席することで、遺言書の存在や内容を確認し合う機会が与えられます。
(3)検認期日の実施
検認期日には、家庭裁判所において遺言書が開封され、その内容が確認されます。相続人や関係者が立ち会うことができます。家庭裁判所は、遺言書の形式的な確認を行い、必要に応じて写真撮影や内容の記録を行います。
(4)検認調書の作成
検認が完了すると、家庭裁判所は検認調書を作成します。この調書には、検認の結果が記載されます。これにより、遺言書の存在と内容が公式に記録され、後に紛争が起こった場合に証拠として利用されます。
◆預金の引出しや相続登記で活用
亡くなった方を名義人とする預貯金については、金融機関が名義人の死亡を知った時点で凍結され、原則として引出しができなくなります。その預貯金を取得するのが誰かについて自筆証書遺言に記載がある場合、検認手続を経た遺言書を金融機関に持ち込めば、金融機関は対象となる預貯金の解約・引出しに応じてくれます。
また、亡くなった方を所有名義人とする不動産についても、その不動産を取得するのが誰であるかについて自筆証書遺言に記載がある場合、検認手続を経た遺言書を法務局に持ち込めば、法務局は対象となる不動産の名義変更に応じてくれます。
逆に言えば、いくら自筆証書遺言に、預貯金や不動産の取得者についての記載があっても、家庭裁判所での検認手続を経ていない場合、金融機関や法務局は対応してくれませんので、注意が必要です。
◆検認手続と遺言の法的有効性
注意しなければならないのは、家庭裁判所の検認手続を経ていれば、遺言書の記載内容が法的に有効であると確定するわけではない、ということです。
ですから、検認手続を経た自筆証書遺言について、法定相続人の中から「その遺言書は無効だ!」といって法的有効性を争う人が出てくることもありえます。その場合、遺言書が法的に有効なのか無効なのかについては、地方裁判所での訴訟で判断してもらうことになります。
◆検認を弁護士に依頼するメリット
検認について弁護士に依頼するメリットは、戸籍の収集作業や、家庭裁判所への申請書類の作成など、煩わしい準備を全て弁護士に任せられることと、家庭裁判所で行われる検認期日において弁護士に同席をお願いできることにあります。
特に相続人間での紛争がすでに顕在化しているような場合、家庭裁判所での検認期日において、法定相続人間での言い争いが発生してしまうようなケースもあります。そのような場合、自分の側に代理人弁護士が同席していると安心です。
◆検認の費用について
(1)裁判所への費用
遺言の検認について、裁判所へ申し立てる際に必要な費用は、遺言書1通につき800円(収入印紙)になります。もし遺言書が封書の形になっている場合には、封書1通につき800円(収入印紙)となります。
検認手続が終了した後、検認済証明書が貼り付けられた遺言書原本を返還してもらう必要があるのですが、その手数料として遺言書1通につき150円(収入印紙)が必要です。
(2)千瑞穂法律事務所への費用
遺言書の検認申し立ての弁護士費用は、11万円(税込)です。この費用の中には、戸籍等の必要な資料の収集作業や家庭裁判所への申立書類の作成・提出、家庭裁判所での検認期日への弁護士の同席が含まれます。
なお、戸籍等を収集する際に、市区町村に対して納付する手数料や郵送のやりとりに要する郵便費用は、実費として別途、必要になりますが、通常、必要となる実費は1万円~2万円程度です。