遺言書の作成を検討されている方へ

1 「遺言」と「遺言書」

遺言書の作成を検討されている方へ

「遺言」とは、亡くなった人が、その生前に、自分が死んだ際に遺された財産を、誰に、どれだけ残すか(分配するか)について、自分の意思を示すものをいいます。

「遺言書」とは、「遺言」を書面に残したものをいいます。

2 法的な効力をもつ「遺言」とは?

亡くなった方が、生前に話していたことも、日常用語では「遺言」と呼ばれます。しかし、法的な効力をもつ「遺言」は、法律に定められた形式に基づいて作成された書面としての「遺言書」の形で作成しておく必要があります。

たとえ「遺言書」と題する書面があったとしても、それが法律に定められた形式に基づいて作成されていなかった場合には、法的な効力はないので、注意する必要があります。

3 「遺言書」を作成する場面

(1)自分自身の「遺言書」の作成

「遺言書」を作成する場面の典型例は、自分自身の「遺言書」を作成するものです。自分が将来、死んだ際に、自分の遺産を相続人たちがどう分配するかで揉め事がおこらないように、事前に自分の意思を示しておくために「遺言書」を作成します。

(2)親の「遺言書」の作成

「遺言書」を作成する場面では、自分自身の「遺言書」ではなく、自分の親の「遺言書」を作成するというものもあります。将来、親が亡くなったときに、親の遺産をめぐって相続人たちで揉めることを心配し、揉めごとが発生しないように、親に「遺言書」を作成しておいてほしいと希望する子どもは、少なくありません。

そのような観点から、子どもが親に促して、親が「遺言書」を作成するというケースもあります。もちろん、このようなケースにおいても、「遺言書」を作成するか否かや、どのような内容の「遺言書」を作成するかについての最終的な判断を行うのは、親自身になります。

4 「遺言書」の種類

法律によって定められた「遺言書」の種類のうち、特に重要で、よく使われるのが「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」です。

「自筆証書遺言」は、自分で手書きで作成し署名する方法で、「公正証書遺言」は、公証人の関与のもとに作成する方法です。

「公正証書遺言」は、法律の専門家である公証人が関与しますので、遺言書の形式面については心配する必要はありません。他方、「自筆証書遺言」の場合には、「遺言書」を作成するのはご本人なので、「遺言書」の形式面について、法的に必要な要件を満たしているかを、よく注意する必要があります。

自分自身の「遺言書」を作成する場合でも、自分の親が「遺言書」を作成しようとしている場合でも、せっかく作成する「遺言書」が、形式面の不備によって無効にならないように、法律上の要件や手続きについて充分に確認しておく必要があります。

5 「自筆証書遺言」のメリット・デメリット

「自筆証書遺言」のメリット・デメリットは次のとおりです。

(1)メリット

  • 他人が関与せずに自分だけで手軽に作成できる
  • 作成するのに特別な費用がかからず経済的負担がない
  • 自分で保管することもできるし、法務局で預かってもらえる(遺言書保管制度)
  • 法務局で預かってもらう場合、死後に家庭裁判所での「検認」がいらない

(2)デメリット

  • 法律の専門家が関与せず、法的な必要要件が守られずに、無効になりやすい
  • 自分で保管している場合に、紛失してしまうリスクがある
  • 自分の死後、誰にも発見されずに、遺言が実現されないリスクがある
  • 法務局に預けなかった場合、隠蔽・破棄・変造されるリスクがある
  • 法務局に預けなかった場合、死後に家庭裁判所での「検認」が必要になる

6 「公正証書遺言」のメリット・デメリット

「公正証書遺言」のメリット・デメリットは次のとおりです。

(1)メリット

  • 法律の専門家である公証人が関与するため、形式不備がなく、無効になりにくい
  • 公証人役場が保管してくれるので、紛失・隠蔽・破棄・変造のリスクがない
  • 相続人が公証人役場に問い合わせることにより、発見されやすい
  • 寝たきり状態になっても、公証人が自宅や病院に出向いてくれ、作成できる
  • 死後に家庭裁判所での「検認」を行う必要がない

(2)デメリット

  • 公証人に支払う手数料などの費用がかかる
  • 公証人との面談やメール・電話でのやりとりなどが必要で、手間がかかる
  • 有効な「遺言書」にするためには、証人が2人、必要である

7 「遺言書」作成を弁護士に相談する  

「遺言書」を作成することにより、将来、遺産分割における問題や遺族間での争いを防げる可能性があります。もっとも、せっかく「遺言書」を作成しても、その形式面で法律上の要件をみたさずに無効になってしまうこともあります。

また、「遺言書」の内容によっても、書き方によっては防げた紛争を、逆に招いてしまう場合もあります。

これらのトラブルを避けるためには、「遺言書」を作成される際には、「遺言書」について詳しい法律の専門家である弁護士に相談されることをお勧めします。

関連ページ

keyboard_arrow_up

0829620339 問い合わせバナー 事務所概要・アクセス