はじめに:広島の資産家・経営者の間で「デジタル遺産」の相談が増えている理由
(1) 「思い出の写真」だけではない、巨額資産のリスク
近年、テレビや雑誌で「デジタル遺産」という言葉を耳にする機会が増えました。「スマートフォンのロックが開かない」「SNSの追悼アカウントをどうするか」といった話題が一般的ですが、資産をお持ちの方や経営者の方にとって、デジタル遺産は「思い出」だけの問題ではありません。 それは、数千万円、時には億単位の金融資産が、誰にも知られずにデジタル空間に埋没してしまうという、極めて深刻な経済的リスクを含んでいます。
(2) 広島でも急増する「見えない資産」のトラブル
実際に、広島市にお住まいの資産家の方や、代々事業を営む経営者の方々から、当事務所へ寄せられる相談の質が変わってきています。
- 「亡くなった父が、ネット証券で株取引をしていたようだが、どこの証券会社かわからない」
- 「海外の口座に資産があるらしいが、ログインIDが不明で、現地の言葉もわからず手出しができない」
- 「仮想通貨(暗号資産)を持っていると聞いていたが、ウォレットのパスワードが見つからない」
これらは決して、東京のような大都市圏だけの話ではありません。ここ広島においても、インターネットバンキングの普及や資産運用の多様化により、「通帳のない資産」は急増しています。
(3) 発見の遅れが招く「税務調査」と「争族」
デジタル資産の恐ろしい点は、「見えない」ことです。見えないからこそ、発見が遅れ、遺産分割協議が終わった後に多額の財産が出てきて揉め事になったり、最悪の場合、広島国税局の税務調査で指摘を受け、多額のペナルティ(重加算税など)を課されたりするケースも現実に起こり得ます。
本記事では、広島を中心に多くの相続案件、とりわけ複雑な資産背景を持つ富裕層の相続をサポートしてきた弁護士の視点から、デジタル遺産に潜むリスクと、今すぐ取るべき具体的な防衛策について、徹底的に解説します。
1 広島の富裕層が見落としがちな「高額デジタル遺産」の範囲
「自分はデジタルに疎いから関係ない」と考えているシニア世代の方ほど、注意が必要です。なぜなら、ご自身の意図しないところで、資産がデジタル化されているケースが多いからです。ここでは、広島の富裕層が特に注意すべき「見えない資産」の正体を明らかにします。
1-1 地方銀行のインターネットバンキングも「デジタル遺産」
(1)通帳が存在しない「ネット支店・Web通帳」の盲点
「デジタル遺産」と聞くと、ビットコインなどの新しい技術を想像しがちですが、最も身近で、かつ高額な遺産となりやすいのが「インターネットバンキング」です。 広島にお住まいの皆様にとってなじみの深い広島銀行やもみじ銀行などの地方銀行でも、近年は「Web通帳(通帳レス口座)」への切り替えが進んでいます。紙の通帳を発行せず、スマホやパソコンで明細を確認するスタイルです。
(2)家族が「通帳がない=口座がない」と誤認するリスク
これは非常に便利ですが、相続の場面では大きな落とし穴となります。遺された家族は、まず自宅の金庫やタンスから「紙の通帳」を探します。しかし、Web通帳口座には紙の通帳が存在しません。 そのため、「通帳がない=その銀行には口座がない」と誤認してしまうのです。その結果、数百万、数千万の預金が手つかずのまま放置され、長期間誰にも気づかれないまま「休眠預金」となってしまうリスクがあります。
1-2 資産運用・経営資産としてのデジタル財産
富裕層の方々は、資産保全のために多様なポートフォリオを組まれていることが一般的です。その多くが、現在はデジタル上で管理されています。
(1)ネット証券・暗号資産(仮想通貨)・FXアカウント
店舗型の証券会社と異なり、担当者が付かないネット証券(楽天証券、SBI証券など)では、口座名義人が亡くなっても証券会社側から連絡が来ることはありません。パソコンの中にしか存在しない株式や投資信託は、非常に発見困難な財産です。 また、数年前に「試しに買ってみた」ビットコインなどの暗号資産やNFTが、現在では大きな価値を持っていることも珍しくありません。しかし、これらにアクセスするための「秘密鍵(パスワード)」がわからなければ、その資産は事実上、電子の海に消えてしまいます。
(2)海外の金融機関・オフショア口座のオンライン管理画面
資産分散のために海外の金融機関を利用している場合、郵送物が届かず、全てオンラインで完結しているケースも多々あります。現地の言語での対応が必要になることも多く、家族にとっては大きな障壁となります。
(3)経営者・法人名義の重要アカウント
事業を営まれている経営者・オーナー社長の場合、問題はさらに複雑です。法人名義のネットバンキング口座や、会社のWEBサイト・ドメイン管理権限、クラウド会計データのアクセス権なども、広義のデジタル遺産に含まれます。 これらは個人の財産であると同時に「会社の命運を握る鍵」でもあります。社長にもしものことがあった際、経理担当者もログインできず、従業員への給与支払いや取引先への送金がストップしてしまう事態は、何としても避けなければなりません。 当事務所では、広島市内で事業を行う親族経営の会社の顧問弁護士も数多く務めており、こうした「事業承継に絡むデジタル資産の引き継ぎ」についても、経営上のリスク管理としてアドバイスを行っています。
2 「パスワードが分からない」では済まない! 3つの重大リスク
デジタル資産のIDやパスワードが不明であることの弊害は、「ログインできない」という単純な話では終わりません。そこには、法的なトラブル、税務的なペナルティ、そして親族間の不和という、3つの重大なリスクが潜んでいます。
2-1 【税務リスク】広島国税局管内でも強化される「情報収集」
(1)税務署はデジタル上の入出金履歴(足跡)を徹底的に調査する
「デジタル資産だから、税務署にもバレないだろう」と考えるのは、極めて危険な誤解です。むしろ、デジタルデータは「痕跡(ログ)」が必ず残るため、税務署にとっては調査しやすい対象とも言えます。 相続税の申告において、広島国税局をはじめとする税務当局は、近年デジタル資産の調査能力を飛躍的に向上させています。
例えば、亡くなった方のメインバンクの入出金履歴(これもデジタルで照会可能です)を数年分遡り、ネット証券や暗号資産取引所への送金履歴があれば、そこから「申告されていない資産があるはずだ」と特定します。
(2)「知らなかった」は通用しない重加算税のペナルティ
もし、相続人の方々がそのデジタル資産の存在を知らず、悪意なく相続税申告から漏れてしまっていたとしても、税務署から見れば「申告漏れ」です。場合によっては「仮装・隠蔽」とみなされ、本来の税金に加え、35%〜40%もの重い重加算税が課される可能性があります。
当事務所は、国税OBである税理士(資産税分野を長年担当)が所属する税理士事務所と緊密に連携しています。そのため、「税務署がどこを見ているか」「どのようなお金の動きが指摘されやすいか」という視点を持った上で、法的な調査・対策を行うことが可能です。
2-2 【資産消失】数千万円単位の資産が永遠に引き出せなくなる
(1)ログインID不明による口座凍結と海外業者の対応困難性
デジタル資産、特に暗号資産や海外のネット口座においては、セキュリティが極めて堅牢に作られています。これは通常時には「安全」を意味しますが、相続時には「壁」となります。 正規のIDとパスワード、あるいは二段階認証のためのスマートフォン(SIMカード)がなければ、相続人であってもアクセスが拒絶されることが多々あります。特に海外の業者の場合、日本の戸籍謄本や遺産分割協議書を提出しても、「現地の法律に基づく手続きが必要」と跳ね返されたり、そもそも日本語でのサポートが皆無であったりと、手続きが暗礁に乗り上げるケースが後を絶ちません。
(2)公的な証明書が存在しない怖さ
結果として、そこに数千万円の価値があると分かっていても、永久に引き出せない「凍結資産」となってしまうのです。広島市内にある不動産であれば、登記簿などの公的な証明書が存在し、時間はかかっても必ず相続手続きができますが、デジタル資産にはそのような公的な後ろ盾がないものが多く、一度失うと取り返しがつかないという怖さがあります。
2-3 【争族トラブル】「県外に住む相続人」との情報格差
(1)広島の実家と県外の子供との間で生じる情報格差
デジタル遺産特有の問題として、「家族間の情報格差」が挙げられます。例えば、広島のご実家で同居していた長男は、親のパソコンを見る機会があり、ネット証券の存在を知っていたとします。一方で、進学や就職で東京や大阪に住んでいる次男・長女は、親のデジタル資産のことなど全く知りません。
(2)隠匿の疑いが招く遺産分割協議の紛糾
いざ相続となった際、もし長男がその情報を開示せず、こっそりと自分のものにしていたり、あるいはパスワードがわからず「無かったこと」にしようとしたりしたらどうなるでしょうか。 後になって「お父さんは株をやっていたはずだ」「もっと預金があったはずだ」と他の相続人が疑い始めると、一気に親族間の不信感が高まります。「兄さんが隠しているんじゃないか?」という疑念は、遺産分割協議を泥沼化させます。
当事務所には、広島家庭裁判所の現役の非常勤裁判官(家事調停官)を務める弁護士が在籍しております。調停の現場で、こうした「使途不明金」や「隠し財産」の疑いが、いかに家族の絆を壊し、解決を困難にするかを日々目の当たりにしています。

3 弁護士が推奨する「広島の資産家のための」生前対策
デジタル資産のリスクを回避する唯一かつ最善の方法は、「生前の準備」に尽きます。ご本人が元気なうちにしかできない対策があります。ここでは、法的な効力を持たせた確実な対策をご紹介します。
3-1 資産目録の作成と「デジタル遺品」の整理
(1)ID・パスワードを安全かつ見つかる場所に保管する
まずは、ご自身のデジタル資産の「棚卸し」から始めましょう。利用している銀行名(ネット支店含む)、証券会社名、暗号資産取引所、サブスクリプション等をリストアップし、紙の「財産目録」として残すことが第一歩です。 ただし、パスワードをそのまま紙に書いて机の上に置いておくのはセキュリティ上危険です。広島の銀行の貸金庫を利用したり、信頼できる専門家に預けたりするなど、「家族が見つけられる場所」かつ「安全な場所」に保管する方法が重要です。
(2)不要なネット資産の「断捨離」
また、この機会に「終活」の一環として、使っていないクレジットカードや、少額しか入っていない休眠口座、不要なサブスクリプションを解約する「デジタル断捨離」をお勧めします。遺される家族の手続き負担を減らすことは、立派な相続対策です。
3-2 法的効力を持たせる「遺言書」への記載
(1)デジタル資産の承継者と権限を明確にする
財産目録を作っただけでは、法的な強制力はありません。「誰にどのデジタル資産を継がせるか」を明確にするためには、遺言書の作成が必須です。 特にデジタル資産は、通常の預貯金以上に手続きが複雑です。遺言書の中で、「〇〇銀行のネット口座にある預金は長男に相続させる」と指定するだけでなく、その手続きをスムーズに行うための権限(アカウントの解約権限等)についても触れておく必要があります。
(2)裁判官・公証人経験に基づく強固な遺言作成
当事務所には、裁判官を35年間、公証人を8年間勤めたベテラン弁護士が在籍しています。公証人とは、まさに公正証書遺言を作成するプロフェッショナルです。 「どのような文言で遺言を残せば、金融機関やデジタル業者がスムーズに手続きに応じてくれるか」「法的に不備のない遺言はどうあるべきか」という実務の勘所を熟知しています。デジタル資産のような新しい形態の財産を扱う場合でも、長年の経験に基づく法的思考により、紛争を未然に防ぐ強固な遺言書の作成をサポートいたします。
3-3 「民事信託(家族信託)」で認知症リスクに備える
(1)デジタル資産管理を家族に託す契約
さらに進んだ対策として、「民事信託(家族信託)」の活用も視野に入ります。例えば、暗号資産やネット証券の運用をご自身が認知症等で判断能力を喪失した後も継続したい、あるいは凍結させずに管理したい場合、信頼できる家族に管理権限を託す契約を結んでおく方法です。
(2)広島における信託実務の第一人者によるサポート
前述の元公証人の弁護士は、公証人在職中に数多くの信託契約公正証書を作成しており、広島における信託実務の第一人者とも言える存在です。デジタル資産と信託を組み合わせた高度な資産承継スキームについても、安心してご相談いただけます。
4 すでに相続が発生している場合の対処法(広島の相続人の皆様へ)
もし、対策をする前に相続が発生してしまった場合でも、諦めるのは早計です。残された手掛かりからデジタル資産を発見し、保全するための調査手法があります。
4-1 デジタル遺産を発見するための調査手法
(1)デバイスと通知からの推認
まずは、故人のスマートフォンやパソコン、郵便物を徹底的に確認してください。「【重要】〇〇銀行」「取引報告書」などの件名でメール検索をかけたり、ブラウザのお気に入りに金融機関がないか確認したりします。
(2)入出金履歴から「見えない口座」を特定する
通帳やキャッシュカードがあるメイン口座の動きを見て、不明な振替(〇〇ショウケン、〇〇コイン等)がないかチェックすることも重要です。また、ネット専業銀行でも、年に一度程度は「重要なお知らせ」が郵便で届くことがあります。
4-2 手続きが困難な場合の専門家連携
(1) 弁護士照会による資産の洗い出し
自力での調査に限界を感じた場合は、弁護士の介入が効果的です。弁護士は「弁護士会照会(23条照会)」という法的な調査権限を持っており、金融機関に対して故人の取引履歴や残高の開示を求めることで、隠れた口座を洗い出せる可能性があります。
(2)不動産手続きとのワンストップ対応
また、デジタル資産だけでなく、広島市内の不動産や、県外の投資用不動産が遺産に含まれている場合も多々あります。 当事務所は、全国規模の大手司法書士法人「みつ葉グループ」の広島拠点と同一事務所内で連携運営しており、不動産登記の実務にも即座に対応可能です。デジタル資産の解約と、不動産の名義変更をワンストップで並行して進められるため、手続きのスピードが格段に上がります。
5 広島でデジタル遺産・富裕層の相続を当事務所に依頼するメリット
デジタル遺産の相続は、ITの知識だけでなく、法律、税務、そして不動産など、多角的な専門知識が求められる総力戦です。当事務所が、広島の資産家・経営者の皆様に選ばれている理由をご説明します。
5-1 「裁判官・公証人の視点」と「現場の交渉力」の融合
(1)法の番人としての重厚な知識
相続は、ただ手続きをすれば良いものではありません。「親族間で揉めないか」「税務署に指摘されないか」という深い洞察が必要です。当事務所では、元裁判官・元公証人という「法の番人」としての重厚な知識と経験を活かし、法的安定性の高い解決策を提案します。
(2)紛争現場で培った交渉力
それに加え、遺産分割や株式争奪などの紛争現場で戦ってきた弁護士の「交渉力」を融合させ、依頼者様の利益を最大化します。
5-3 広島の専門家ネットワークによる包括的サポート
(1) 税理士連携による税務調査対策
相続税の問題であれば連携する資産税専門の税理士とタッグを組み、税務調査リスクまで見据えたサポートを行います。
(2)複雑な資産(収益不動産・自社株)への対応力
特に、賃貸アパートなどの収益不動産や、同族会社の株式(自社株)が絡む相続においては、評価額の算定や分割方法が極めて難解になりますが、当事務所には親族経営企業の事業承継や、収益不動産に関する紛争解決の実績が豊富にあります。 デジタル資産という「新しい課題」と、不動産・自社株という「伝統的な課題」。この両方を、広島という地域に根差したネットワークで解決できるのが、当事務所の最大の強みです。

6 よくあるご質問(FAQ):デジタル遺産相続の疑問
広島の皆様からよくいただく、デジタル遺産に関する具体的なご質問にお答えします。
Q1. スマホのロックが解除できません。中身を見ないと相続手続きはできませんか?
スマートフォンのロック解除がどうしてもできない場合でも、相続手続き自体は可能です。重要なのは「スマホの中身(写真等)」ではなく、「金融機関との取引事実」です。郵便物やメインバンクの通帳の履歴から取引先金融機関を特定できれば、スマホを開かずに直接金融機関へ照会をかけることができます。ただし、暗号資産のウォレット等、スマホ内にしか鍵がない場合は専門的な技術調査が必要になることもありますので、弁護士へご相談ください。
Q2. ネット証券のIDとパスワードが分かりません。どうすれば良いですか?
IDやパスワードが不明でも、相続人であることを証明する書類(戸籍謄本など)を証券会社に提出すれば、口座の有無の照会や、残高証明書の発行依頼が可能です。ネット証券であっても、相続手続きのための書式は郵送等で対応してくれます。まずは「どこの証券会社を使っていたか」を特定することが先決です。
Q3. 仮想通貨(暗号資産)にも相続税はかかりますか?
はい、かかります。亡くなった日の時価(評価額)で日本円に換算し、相続税の課税対象となります。暗号資産は価格変動が激しいため、評価額の算定や納税資金の確保(現金化のタイミング)が非常に重要です。申告漏れが多い分野ですので、税理士・弁護士と連携して慎重に進める必要があります。
Q4. 広島市外や海外に住んでいる相続人がいて、話し合いが進みません。
デジタル遺産に限らず、遠方の相続人との遺産分割協議は難航しがちです。当事務所では、Web会議システム等も活用しつつ、弁護士が代理人として間に入り、感情的な対立を避けながら法的に公平な分割案を提示・交渉することが可能です。
まとめ:広島でデジタル資産の相続・遺言にお悩みの方はご相談ください
デジタル化が進む現代において、資産家の方々にとって「デジタル遺産対策」は、避けては通れないリスクマネジメントです。 「見えない資産」は見えないからこそ、放置すればするほど、ご家族に大きな負担とリスクを背負わせることになります。
しかし、ご安心ください。生前に適切な準備をしておけば、デジタル資産は次世代への有益な贈り物となります。また、相続発生後であっても、専門家の力を借りれば、資産を取り戻せる可能性は十分にあります。
「自分の場合はどのような対策が必要か」 「亡くなった父のパソコンに資産が入っているかもしれない」
そのようにお感じの方は、ぜひ一度、当事務所の無料相談をご利用ください。広島市および近郊エリアの皆様からのご相談を、経験豊富な弁護士チームがお待ちしております。

