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1 相続放棄の期間制限
相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に行なわなければなりません。この期間を「熟慮期間」と言います。相続人は、この熟慮期間の間に、家庭裁判所に対して相続放棄申述書を提出する必要があります。
熟慮期間内に相続放棄あるいは限定承認を行わない場合には、単純承認したものとみなされ、相続人は被相続人のプラス財産だけではなく、借金などのマイナス財産もまとめて承継することになります。
「自己のために相続の開始があったことを知った時」とは、被相続人が亡くなったこと、および自分が相続人になったことを知った時のことです。
ですから、たとえば、被相続人が亡くなってから3ヶ月を既に経過していたとしても、そのことを知って自分が相続人であると分かってから3ヶ月以内であれば、その旨を説明することによって、家庭裁判所に相続放棄申述書を受け付けてもらうことができます。
この「3か月」については、初日を算入しないで計算します(初日不算入)。たとえば被相続人が亡くなったことを死亡日当日である6月15日に知ったとすると、翌日の6月16日から計算して3か月後である日(9月15日)が、熟慮期間の期限となります。
2 熟慮期間の伸長の申請
相続放棄をするか否かの重要な判断材料になるのが、被相続人の財産の調査結果です。プラス財産よりもマイナス財産が大幅に多い場合には、相続放棄をするという結論になるでしょう。
ですが、被相続人の財産調査が3ヶ月以内に終わらないケースも多々あります。財産調査が終わらなければ、相続放棄をするか否か、適切な判断ができません。
このような場合、家庭裁判所に申立てることで、熟慮期間を伸ばしてもらえる可能性があります。伸長が認められる期間は、通常、1ヶ月~3ヶ月ほどで、事情に応じて変わります。
3 熟慮期間の3か月が経過してしまった場合
上記の通り、被相続人がなくなったこと及び自己が相続人となったことを知ってから3か月が経過してしまった場合には、その後は、原則として、相続放棄申述書は受理されず、マイナス財産である債務も含めたすべての財産を相続することになる「単純承認」をしたものとみなされます。
もっとも、被相続人がなくなったこと及び自己が相続人となったことを知ってから3か月が経過した後になって、督促状が届くなどして、初めて被相続人の借金を知るケースも少なくありません。
このような場合には、熟慮期間の起算点を繰り下げることにより、形式的には3か月が経過していたとしても、相続放棄申述書が受理される場合があります。
上記の熟慮期間の繰り下げが認められるのは、相続放棄をしなかったのが「被相続人に相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、被相続人の生活歴、被相続人と相続人との間の交際状態その他諸般の状況からみて当該相続人に対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があって、相続人において右のように信ずるについて相当な理由があると認めるとき」(最判昭和59年4月27日)であり、このようなときには、「熟慮期間は相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべき時から起算す」ることになります。
そして、相続放棄申述書の受理との関係では、「家庭裁判所の相続放棄の申述の受理は本来その非訟事件たる性質、及びその審判手続の審理の限界などに照らし、被相続人の死亡時から3か月の期間経過後の放棄申述であっても右の相当な理由を認めるべき特別の事情の主張があり、かつそれが相当と認めうる余地のあるものについては、その実態的真実の有無の判定は訴訟手続に委ね、当該申述が真意に出たものであることを確認したうえ、原則として申述を受理すべきものである」(大阪高決昭和61年6月16日)とされています。
そのため、事情によっては例外的に、原則的な熟慮期間を経過してしまった後であっても、相続放棄申述書が受理される可能性はあります。
ただ、相続放棄申述書が受理されるためには、相当な理由を認めるべき特別の事情について適切に主張する必要があり、相続放棄申述書が受理されなかったには被相続人は多大なマイナス財産を承継しなければならない事態につながりかねないことからすると、被相続人がなくなったこと及び自己が相続人となったことを知ってから3か月が経過した場合は、弁護士に相談することをお勧めします。