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相続法改正のポイント解説 配偶者居住権・遺留分侵害額請求・特別な寄与など

2025-04-18

相続に関する法律が40年ぶりに改正

何がどう変わるの? いつから?

相続に関する法律が変わるという話を聞きました。何がどう変わるのですか? ポイントを教えて下さい。また、改正された法律はいつから施行されるのでしょうか?

「配偶者居住権」の新設など変更点多数

段階的施行、早いもので2019年1月19日から

 民法の相続に関する部分が昭和55年以来約40年ぶりに大幅に見直されました。何が変わったのか、いつから施行されるのかなどを簡単にポイントだけをご説明します。

①配偶者居住権の新設

(2020年4月1日施行)

 新設される配偶者居住権により、相続の際の家の権利は「配偶者居住権」と「負担付き所有権」に分割されることになりました。これにより、家に住み続ける妻は、受け取れる預貯金等が増えることになります。

②夫婦間の居住用不動産贈与等の優遇措置

(2019年7月1日施行)

 婚姻期間が20年以上の夫婦間での居住用不動産の生前贈与等については「遺産の先渡し」と扱う必要がなくなり、相続の際に遺産に含めなくてよいことになりました。

③預貯金の払戻し制度の創設

(2019年7月1日施行)

 最高裁判所の平成28年12月19日判決により、相続された預貯金債権は遺産分割の対象財産に含まれることになり、共同相続人による単独での払戻しができないことになりました。しかし、生活費や葬祭費用の支払など資金需要がある場合に不都合です。

 新しい制度では、預貯金債権の一定割合については共同相続人の一人が単独で払戻しを受けられることになり、別途、家庭裁判所の判断で仮払いもできることになりました。

④自筆証書遺言の方式緩和

(2019年1月13日施行)

 自筆証書遺言のうち財産目録の部分はパソコンで作成できることになりました(但し、財産目録の各頁に署名押印は必要)。

⑤自筆証書遺言の法務局保管制度の創設

(2020年7月10日施行)

 自筆証書遺言を法務局に保管することができることになり、保管されている遺言書については、相続の際、家庭裁判所の検認が不要となります。

⑥遺留分制度の見直し

(2019年7月1日施行)

 従来の遺留分制度では不動産の共有状態が生じて事業承継の支障となっていたことから、新しい制度では遺留分減殺請求を金銭債権の請求権と構成し直しました。これにより共有状態になることを回避できます。

⑦特別の寄与の制度の創設

(2019年7月1日施行)

 例えば長男の妻のように相続人でない人が、亡くなったお父様の介護に尽力していた場合、「特別の寄与」をしていたものとして、相続人に対して金銭請求をすることができるようになります。

 これらの他に、「配偶者短期居住権」という権利も創設されます。より詳しいことをお知りになりたい場合は、当事務所にお問い合合わせ下さい。

「相続土地国庫帰属制度」の運用状況は?活用すべきケースとは?

2025-01-07

◆「相続土地国庫帰属制度」の運用状況

令和5年4月27日から「相続土地国庫帰属制度」がスタートしました。この新しい制度の運用状況について、令和5年10月3日に行われた小泉龍法務大臣の記者会見によれば、10月2日の時点で富山県内の土地2件が国庫に帰属した、とのことでした。また、法務省によると、8月末時点での申請件数は全国で885件、うち田畑が4割、宅地が3割、山林が2割、とのことでした。

このように、実際に制度がスタートして、国庫に帰属した実例も出てきたことから、今後、この制度の活用が期待されます。

◆「相続土地国庫帰属制度」活用への課題

ただ、この制度はスタートしたばかりであり、まだ活用しにくい点があります。主な課題点を3つ、ご説明します。

(1)要件・手続の複雑さ

使いにくさの第1点は、申請するための要件や手続が複雑だという点です。要件については、例えば、次の土地は対象外です。

①建物が建っている土地

②抵当権等が設定されている土地

③土壌汚染されている土地

④境界が不明確な土地

⑤崖などの傾斜している土地

(2)要する費用が高額

使いにくさの第2点は、高額な費用がかかるという点です。

要件や手続が複雑なので申請を専門家へ依頼する場合が多くなると思われますが、その専門家への報酬が必要になります。また土地上に建物が建っていれば解体しなければならず解体費用がかかります。境界が不明確であれば測量や境界確認の費用もかかります。さらに国に払う負担金も必要です。それらを合わせると費用が高額になる場合があります。

(3)時間がかかる

使いにくさの第3点は、国庫帰属するまでに時間がかかるという点です。

国は申請を受理した後に現地調査などを行って審査するため、どうしても時間がかかります。冒頭でお話しした富山県の2件の事例は、制度が開始した4月27日に申請したケースだと思われますが、国庫帰属が実現したのは10月2日ですので、申請受理から国庫帰属まで、約5か月間の期間を要しています。申請前段階での事前準備の期間も併せて考えると、トータルで数ヵ月から1年以上の期間を要する可能性もあります。

◆「相続土地国庫帰属制度」の活用を検討すべきケース

 上記のように、この制度の活用には課題がありますが、相続により望まぬ土地を取得してしまった場合の有力な選択肢の1つであるのは確かです。

 また、この制度の要件は、一見複雑かつ厳格ですが、実際の運用事例を詳細に分析すると、見かけほど要件は厳しくないようです。

 例えば、境界が不明確な土地は不可、との要件があります。これは一見すると、土地の売買などの際に行う精密な確定測量まで必要だと思ってしまいますが、実際にはそこまでの精度は必要なく、いわゆる簡易測量で足るとされています。また、隣地所有者に対する境界確認の方法も、実際には緩やかな方法で行われているようです。

 更に言えば、境界の関係で隣接土地の所有者と接触する機会を通じて、隣接土地の所有者に土地を無償で引き取ってもらう、といった解決が図られるケースも少なくないようです。

 ですから、一見すると要件的に適用が厳しいと思われるような土地の場合であっても、実際の運用事例を参考にすると、実は適用できる土地は多いと思われます。

 特に田畑や山林など、難しいと思われる場合も、検討する価値はあると思います。

◆「相続土地国庫帰属制度」について千瑞穂法律事務所に依頼した場合

千瑞穂法律事務所にご相談して頂いた場合、相続土地国庫帰属制度の実際の運用事例を参考にして、ご相談者の土地がこの制度の適用対象になるかどうかや、他に土地を手放す方法がないかと、専門的な見地からアドバイスさせて頂きます。

また、実際に手続きのご依頼を受けた場合には、申請手続に必要な現地の簡易測量も、提携している土地家屋調査士と一緒に、丸ごと対応させて頂けます。煩わしい手続きは全て千瑞穂法律事務所に任せることができますので、その点はご安心ください。

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