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広島の公務員が収益物件を相続したら?副業禁止(5棟10室)の基準と許可申請・遺産分割ガイド

2025-12-08

広島市内の実家がアパート経営をしているが、公務員の自分が相続しても大丈夫だろうか」親が広島県内で複数の駐車場を持っているが、相続すると副業禁止規定で懲戒処分を受けるのではないか

広島県職員、広島市職員、あるいは県内の警察官や公立学校の教職員といった公務員の方から、このようなご相談をいただくことが増えています。 親御様が資産家である場合、相続財産の中に「収益不動産(アパート、マンション、貸駐車場など)」が含まれることは珍しくありません。しかし、相続人であるお子様が公務員である場合、そこには民間企業の社員とは異なる「法律の壁」が存在します。

まずは結論から申し上げます。公務員であっても収益不動産を相続することは可能ですが、以下の基準を超える場合は「人事委員会等の許可(自営兼業承認)」が必要です。

【公務員の不動産相続・要注意チェックリスト】

 ▢ アパート・マンションの部屋数が10室以上ある

 ▢ 賃貸物件の棟数が5棟以上ある

 ▢ 駐車場の台数が10台以上ある

 ▢ 不動産賃貸収入が年額500万円以上ある

 ▢ 管理業務を自分(または家族)で行っている

この記事では、広島の相続・不動産問題に精通した弁護士が、公務員特有の副業制限のルール(いわゆる5棟10室基準)から、職を守るための許可申請、そしてトラブルを未然に防ぐための遺産分割戦略について、詳しく解説します。

第1 広島の公務員が収益物件を相続する際、「副業禁止規定」が最大の壁になる

公務員としての安定した地位にある一方で、予期せぬ相続によってそのキャリアが脅かされることは避けなければなりません。まずは、なぜ公務員が不動産経営を行うことに制限があるのか、その法的根拠とリスクを正しく理解しましょう。

1. なぜ公務員の不動産経営は制限されるのか(法的根拠)

公務員は「全体の奉仕者」として、職務に専念する義務を負っています。これは国家公務員だけでなく、広島県や広島市の地方公務員にも厳格に適用されます。

(1) 国家公務員法における「職務専念義務」の基本原則

国家公務員法第103条および第104条では、営利企業への従事や自営の兼業を原則として禁止しています。これは、公務員が副業(不動産賃貸業を含む)に精力を奪われて本業がおろそかになったり、職務上の秘密を利用したりすることを防ぐためです。

(2) 広島県・広島市の条例における「営利企業等の従事制限」

地方公務員の場合も同様です。地方公務員法第38条に基づき、各自治体は条例で営利企業への従事制限を定めています。 例えば、広島県職員や広島市職員の方であれば、それぞれの自治体が定める「職員の営利企業等の従事制限に関する規則」等が適用されます。基本的には国家公務員のルール(人事院規則)に準じて運用されていますが、所属する組織(県庁、市役所、県警本部、教育委員会など)によって申請の窓口や審査基準の細則が異なるため、正確な確認が必要です。

2. 違反した場合のペナルティ「懲戒処分」のリスク

もし、許可が必要な規模の不動産を無許可で相続・経営し続けた場合、どうなるのでしょうか。

(1) 過去の処分事例と広島県人事委員会等の指針

人事院や各自治体の人事委員会は、無許可での不動産賃貸業に対して厳格な姿勢を示しています。過去には、無届で家賃収入を得ていた公務員が「減給」や「戒告」といった懲戒処分を受けた事例が全国で数多く存在します。 特に悪質な場合(虚偽の報告をした場合など)や、警告を受けたにもかかわらず改善しなかった場合は、停職などより重い処分が下される可能性もあります。

(2) 「知らなかった」では済まされない事後発覚の恐ろしさ

よくあるのが、「親から相続しただけだから、自分から始めた事業ではないし届出はいらないと思った」という誤解です。しかし、相続であっても、自分名義で継続的に収益を得ていれば「自営」とみなされます。 また、近隣住民からの通報や、マイナンバー制度の普及に伴う税情報の紐づけなどにより、職場に発覚するリスクは年々高まっています。「バレないだろう」という安易な判断は、長年積み上げてきた公務員としての信用を一瞬で失うことになりかねません。

第2 どこからが副業?許可が必要になる「5棟10室」基準の具体的判断

では、どのような不動産を相続した場合に許可が必要になるのでしょうか。ここからは、一般的に適用される「人事院規則14-8」に準じた基準(いわゆる5棟10室基準)について解説します。

1. 形式的基準:不動産の規模による線引き(人事院規則等)

まずは物件の「数」や「広さ」による基準です。以下のいずれかに該当する場合、原則として「自営」とみなされ、許可申請(自営兼業承認請求)が必要となります。

(1) アパート・マンションの場合:「10室以上」または「5棟以上」

賃貸アパートやマンションなどの建物を相続する場合、独立した区画が「10室以上」あるか、または建物が「5棟以上」ある場合が対象です。 広島市中心部(中区や南区など)の分譲マンションを1室だけ貸すような場合はここには該当しませんが、親御様が安佐南区や佐伯区などの住宅街にアパートを一棟丸ごと所有している場合は、容易に10室を超えるため注意が必要です。

(2) 広島市内でよくある「駐車場経営」の場合:「10台以上」が目安

広島市内、特に郊外や住宅密集地では、土地を駐車場として貸しているケースが非常に多く見られます。駐車場経営の場合、駐車台数が「10台以上」であると許可が必要になります。 コインパーキングとして業者に土地を一括で貸している場合でも、契約形態によってはこの基準に含まれることがあるため、契約書の確認が必須です。

(3) 土地の賃貸の場合:「契約件数10件以上」

建物や駐車場以外の土地賃貸については、賃貸契約の件数が「10件以上」の場合などが基準となります。

2. 実質的基準:賃料収入額による線引き

物件の規模が小さくても、収入額が大きい場合は制限の対象となります。

(1) 年間賃料収入「500万円」の壁(広島の相場でどう判断するか)

不動産賃貸による賃料収入の合計が、年額「500万円」以上になる場合、許可が必要です。これは手取り額ではなく、固定資産税や修繕費などの経費を引く前の「総収入金額」で判断されます。 広島市内の物件であれば、人気のエリアのマンションやテナントビルを相続すると、数室であっても年間500万円を超えることは珍しくありません。

(2) 共有持分で相続した場合の収入計算の注意点

兄弟で不動産を共有名義(例えば2分の1ずつ)で相続した場合、「自分の持分に対応する収入」だけで判断するのか、「物件全体の収入」で判断するのか、迷うところです。 基本的には「自身の持分に応じた収入」で判断される傾向にありますが、共有者全員で実質的に事業を行っているとみなされる場合もあります。このあたりの解釈は非常にデリケートですので、自己判断せず専門家へ相談することをお勧めします。

3. 管理業務の関与度合いによる基準

規模や収入にかかわらず、公務員自身が管理業務を行っている場合は許可されません。

(1) 自主管理はNG?管理会社への委託が必須条件となる理由

公務員が勤務時間中に「入居者からのクレーム対応」や「家賃の集金」を行うことは、職務専念義務違反に直結します。 そのため、許可を得るためには、管理業務の一切を不動産管理会社等へ委託していることが大前提となります。「親が自主管理でやっていたから、自分も休日にやればいい」という考えは通用しません。

第3 基準を超えても諦めない!広島で適法に持ち続けるための「許可申請」

基準を超えてしまったからといって、すぐに売却しなければならないわけではありません。適切な手続きを踏めば、公務員の身分のまま不動産経営を継続(兼業)することが可能です。

1. 「自営兼業承認申請書」の提出と審査の流れ

相続によって不動産を取得した場合は、自発的に事業を始めたわけではないため、許可が下りやすい傾向にあります。

(1) 広島県教委や県警、市役所など所属庁ごとの申請フロー

許可申請は、ご自身が所属する組織の人事担当部署へ「自営兼業承認申請書」を提出して行います。 広島県職員であれば任命権者(知事など)、広島市職員であれば市長、教職員であれば教育委員会が承認権者となります。申請書類の書式や添付書類(登記事項証明書、賃貸借契約書、確定申告書の写しなど)は所属庁によって異なるため、事前に確認が必要です。

(2) 相続は「やむを得ない事由」として許可が下りやすい傾向

公務員の副業は原則禁止ですが、相続は自分の意思に関わらず発生するものであるため、「やむを得ない事由」として考慮されます。 重要なのは「相続発生後、遅滞なく」手続きを行うことです。放置期間が長くなればなるほど、事後的な承認を得ることが難しくなり、処分のリスクが高まります。

2. 許可を得るための必須条件(管理委託契約)

申請を通すための最大のポイントは、「公務員としての職務に全く支障がない」ことを証明することです。

(1) 広島市内の管理会社等へ業務をフルアウトソースする契約

先述の通り、管理業務の委託は必須です。入居者募集、契約更新、集金、清掃、修繕手配など、すべての業務を管理会社に委託する契約を結ぶ必要があります。 当事務所には、広島市近郊の不動産実務に精通した連携先がありますので、信頼できる管理会社の選定や契約内容のチェックについてもサポートが可能です。

(2) 職務と利害関係(許認可権限など)がないことの証明

また、ご自身の現在の職務が、その不動産事業と利害関係がないことも条件となります。例えば、都市計画課や建築指導課に所属している職員が、管轄内の不動産経営を行う場合などは、配置転換が必要になるケースもあります。

第4 許可申請だけではない!キャリアを守り資産を活かす「遺産分割・対策」

許可申請は一つの手段に過ぎません。不動産の種類やご家族の状況によっては、「そもそも不動産を相続しない」あるいは「形を変えて相続する」方が、結果として資産を守れる場合があります。 ここでは、弁護士ならではの法的スキームを用いた解決策をご提案します。

1. あえて「相続しない」選択肢と代償分割の活用

公務員であるあなたが不動産を持つこと自体がリスクや負担になる場合、「代償分割」という方法が有効です。

(1) 公務員以外の兄弟姉妹に不動産を集中させ、代償金を受け取る

例えば、民間企業に勤めている兄弟姉妹や、すでにリタイアしている親族が不動産を相続し、その代わりにあなたが「代償金(不動産の価値に見合う現金)」を受け取る方法です。これなら副業規定を気にする必要は一切ありません。

(2) 広島市内の不動産評価額上昇に伴う「代償金不足」への対策

近年、広島市中心部や再開発エリア(広島駅周辺など)では不動産価格が上昇傾向にあります。そのため、不動産を相続する側に多額の現金(代償金)を用意する資力がないケースも増えています。 このような場合でも、分割払いの合意書を作成したり、銀行融資と組み合わせたりすることで解決できる場合があります。弁護士が間に入ることで、親族間で感情的なしこりを残さない、現実的な分割案を調整できます。

2. 相続してから売却・組み替えを行う(換価分割)

不動産を保有し続けることにこだわらないのであれば、「換価分割」も検討に値します。

(1) 一度共有で相続し、すぐに売却して現金を分ける方法

不動産を一旦相続登記した上で、すぐに第三者に売却し、諸経費を引いた売却益を相続人間で分配する方法です。これなら将来の管理リスクもゼロになります。 ただし、共有名義のまま売却活動を行うには全員の同意が必要です。

(2) 広島の不動産市場動向を踏まえた売却タイミングの検討

「すぐに売りたいが、安く買い叩かれるのは嫌だ」という場合もご安心ください。 当事務所は、大手司法書士法人「みつ葉グループ」の広島拠点と連携しており、さらに地元の不動産関連企業とも密接なネットワークを持っています。相続登記から売却査定、実際の売却活動まで、不動産実務に強いチーム体制で、スピーディーかつ有利な条件での現金化をサポートします。

3. (生前対策)家族信託を活用した管理権限の分離

もし、親御様がまだお元気であれば、「家族信託(民事信託)」が最も柔軟で効果的な対策となります。

(1) 所有権(利益)は公務員の子へ、管理権限は信託会社や他親族へ

家族信託を使えば、不動産から生じる「利益(家賃収入)」を受け取る権利と、不動産を「管理・処分」する権限を切り分けることができます。 例えば、管理権限は信頼できる親族や専門家に託し、公務員であるあなたは収益だけを受け取る(受益者となる)形にすれば、名義上の所有者ではなくなるため、管理業務の負担から解放されます(※副業規定との関係は個別に確認が必要です)。

(2) 遺言書だけでは解決できない「管理の手間」を消す方法

当事務所には、裁判官を35年、公証人を8年勤め、広島における信託契約実務の第一人者とも言えるベテラン弁護士が在籍しています。公証人時代に数多くの公正証書遺言や信託契約書を作成してきた経験から、形式的な不備のない、確実な信託スキームを構築できる点が大きな強みです。

第5 広島での収益物件トラブル事例と弁護士に依頼するメリット

最後に、公務員の方が自己判断で相続を進めた結果、陥ってしまったトラブル事例と、弁護士にご依頼いただくメリットをご紹介します。

1. 公務員相続人が陥りやすいトラブル事例(広島編)

(1) 事例1:広島市内のマンションを共有し、修繕方針で親族と揉めるケース

「とりあえず法定相続分通りに」と、公務員の長男と会社員の次男でマンションを共有相続した事例。 数年後、大規模修繕が必要になりましたが、費用を出したくない次男と、管理責任を感じる長男との間で意見が対立。結果、修繕ができずに空室が増え、長男は職場への兼業届の更新手続きのたびに精神的な負担を感じるようになってしまいました。

(2) 事例2:無許可で家賃を受け取り続け、職場への発覚を恐れるケース

親の死後、許可申請をしないまま数年間、駐車場収入を得ていた公務員の方。「今さら申請したら過去の分まで処分されるのでは」と恐怖で夜も眠れず、当事務所へ相談に来られました。 このケースでは、弁護士が代理人として法的に整理し、遅ればせながらも誠実に事情を説明するサポートを行いました。

2. 税理士と弁護士の役割の違い

相続というと「まずは税理士」と考える方が多いかもしれません。

(1) 税理士は「相続税」、弁護士は「遺産分割」と「公務員の身分保障」

確かに、相続税の申告は税理士の専門分野です。しかし、税理士は「どうすれば公務員の懲戒処分を防げるか」「兄弟間でどう不動産を分ければ揉めないか」という交渉や法的判断までは行えません。 当事務所は相続税に強い税理士事務所とも連携しているため、税金面のアドバイスも含めたワンストップ対応が可能です。

(2) 広島家庭裁判所の調停・審判を見据えた交渉は弁護士のみ

万が一、遺産分割で親族間の話し合いがこじれた場合、最終的には家庭裁判所での調停や審判になります。 当事務所には、広島家庭裁判所の現役の家事調停官(非常勤裁判官)も在籍しており、広島の裁判所がどのような基準で遺産分割の判断を下すのか、その実務感覚を熟知しています。この「現場の感覚」に基づいたアドバイスができることは、紛争を早期に、かつ有利に解決するための大きな武器となります。

まとめ(まずは広島の当事務所へご相談ください)

公務員の方が収益物件を相続する場合、「職場からの許可(副業問題)」と「親族間の公平(遺産分割問題)」という2つのハードルを同時にクリアしなければなりません。これは一般的な相続よりも複雑で、高度な判断が求められます。

ご自身のキャリアを守り、そして親御様が残してくれた大切な資産を次世代へ有効に引き継ぐために、一人で悩まず専門家を頼ってください。

当事務所は広島市に所在し、元裁判官・元公証人のベテラン弁護士や現役の家事調停官をはじめ、不動産・相続実務に精通したプロフェッショナルがチームで対応いたします。広島市内はもちろん、呉、東広島など県内全域からのご相談を承っております。

公務員の皆様からのご相談実績も豊富ですので、安心してお問い合わせください。

【広島の弁護士解説】収益不動産・賃貸経営の相続対策|アパートの遺産分割と家族信託

2025-12-08

はじめに

広島市およびその周辺の広域都市圏において、アパートやマンション、駐車場などの収益不動産を所有・経営されているオーナー様へ。 長年にわたり事業として不動産を守り、育ててこられたその大切な資産を、次の世代へどのように引き継ぐか、具体的な道筋はお決まりでしょうか。

広島市中心部の再開発に伴う地価の変動や、郊外エリアにおける空室リスクの増大など、広島の不動産事情は刻々と変化しています。そうした中で、収益不動産の相続は、単なる「家や土地の遺産分け」とは全く異なる難しさを含んでいます。それは、不動産という資産だけでなく、「賃貸経営」という事業そのものを承継させなければならないからです。

「うちは子供たちが仲が良いから大丈夫」 「資産といってもアパートが1棟あるだけだから」

そう油断されているケースほど、いざ相続が発生した瞬間に、銀行口座の凍結遺産分割協議の難航により、黒字経営だったアパートが一瞬にして「負動産」へと変わり、ご家族の間で修復不可能な亀裂が入ってしまうことが少なくありません。

本記事では、広島で数多くの相続・不動産案件に携わってきた弁護士の視点から、賃貸経営者が直面するリスクと、その具体的な対策について徹底解説します。

第1 賃貸経営で起こる「相続開始直後」のトラブル

オーナー様が亡くなられた、あるいは判断能力を喪失されたその瞬間から、賃貸経営の現場は「有事」に突入します。遺産分割の話し合いがまとまるまでの間も、入居者への対応や資金繰りは待ってくれません。ここでは、現場レベルで発生する深刻なトラブルについて解説します。

1.オーナーの認知症・判断能力低下による経営リスク

相続そのものの前に、オーナー様の高齢化に伴うリスクとして認識しておかなければならないのが「認知症」の問題です。

(1)大規模修繕や新規入居契約ができなくなる(資産凍結)

賃貸経営において、入居者との賃貸借契約の締結・更新・解除、あるいは建物の修繕発注などは、すべて所有者であるオーナーの法律行為です。 もし、オーナー様が認知症などで判断能力を喪失してしまうと、これらの契約行為が一切できなくなります。

例えば、広島市内のアパートで屋上の雨漏りが発生し、数百万円規模の修繕工事が必要になったとしても、本人の意思確認ができないため契約が結べず、工事が着工できないという事態に陥ります。 結果として、入居者の退去を招き、資産価値を著しく毀損することになります。成年後見制度を利用することも考えられますが、後見人はあくまで「財産の保全」が任務であるため、積極的な投資や建て替え、大規模な修繕には裁判所の許可が下りないケースが多く、経営の手足が縛られてしまうのが実情です。

(2)広島県内の金融機関口座の凍結による支払い停止リスク

認知症の診断や、あるいは相続が発生(死亡)したことを金融機関が知った時点で、オーナー名義の預金口座は凍結されます。 広島銀行やもみじ銀行、広島信用金庫など、地元の金融機関にアパートローンの返済口座や家賃の振込口座を持っている場合、これらがすべてストップします。

口座が凍結されると、毎月のローン返済、管理会社への委託料、共用部の水道光熱費などの引き落としができなくなります。相続人の誰かが一時的に立て替えるにしても、遺産分割協議が長引けば数百万円単位の負担となり、資金ショートによる経営破綻のリスクさえあります。

2.相続発生から遺産分割までの「お金」と「管理」のトラブル

無事に相続手続きが終わるまでの間、「宙に浮いた状態」の収益不動産をどう扱うかについても、法的な知識がないとトラブルに発展します。

(1)相続中の「家賃収入」は誰のものか?(賃料債権の帰属)

遺産分割協議がまとまるまでの間、毎月入ってくる家賃は誰のものでしょうか。 「長男がアパートを継ぐ予定だから、長男が全額受け取る」と安易に考えていると、後で他の相続人から訴えられる可能性があります。

判例上、遺産分割が確定するまでに発生した家賃(法定果実)は、各相続人がその「法定相続分」に応じて取得するとされています。 つまり、遺言書などがない限り、たとえ長男が物件を管理していたとしても、家賃については他の兄弟姉妹にも法定相続分通りの権利が発生するのです。これを無視して使い込んでしまうと、横領や不当利得の問題に発展します。

(2)アパートローンの返済義務と固定資産税の負担者

一方で、アパートローンなどの借金(金銭債務)も、原則として法定相続分に応じて各相続人に分割承継されます。しかし、銀行側との契約上は、相続人全員が連帯して債務を負う形になることが一般的です。

また、固定資産税についても、登記名義が変わるまでは相続人全員の連帯納付義務が生じます。「家賃は法定相続分で分けるのに、管理の手間や固定資産税の通知書への対応は誰がやるのか」という押し付け合いが、感情的な対立の入り口となるのです。

(3)広島市内の物件管理・修繕対応の責任の所在

広島市内に物件がある場合、台風や豪雨による被害、給排水設備の故障など、緊急対応を要する場面も多々あります。 遺産分割が決まっていない共有状態では、保存行為(現状維持のための修繕など)は各相続人が単独で行えますが、改良行為(バリューアップ工事など)や処分行為には全員の同意が必要です。

誰がリーダーシップをとって管理会社や業者と折衝するのか。この役割分担が決まっていないと、管理不全に陥り、入居者の不満が爆発します。当事務所では、こうした事態に備え、不動産管理の実務に精通したスタッフや連携する不動産関連企業と共に、経営を止まらせないための法的サポートを行っています。

第2 収益不動産が原因で泥沼化!「遺産分割協議」の典型トラブル

アパートやマンションなどの収益不動産は、現金のように「1円単位で分ける」ことができません。これが相続トラブルの最大の元凶です。ここでは、遺産分割協議でよくある対立構造と、その背景にある法的・経済的理由を解説します。

1.「不動産は分けられない」物理的制約と分割方法

(1)現物分割の難しさ(建物は切り分けられない)

土地であれば分筆して分けることも可能ですが、一棟のアパートやマンションを物理的に切り分けることは不可能です。 「1階は長男、2階は次男」と区分所有化して分ける方法もありますが、玄関や配管の構造上、大規模な工事が必要になったり、将来の売却時に買い手がつきにくくなったりするため、現実的ではないケースが大半です。

(2)換価分割のデメリット(収益源の喪失と譲渡所得税)

「分けられないなら売って現金化しよう」というのが換価分割です。公平に分けるには最も手っ取り早い方法ですが、先祖代々の土地を手放すことになる上、毎月の家賃収入という「金の卵を産む鶏」を失うことになります。 また、売却によって多額の譲渡所得税がかかり、手残りの現金が目減りしてしまうデメリットもあります。事業承継を望む相続人が一人でもいる場合、この方法は激しい抵抗にあい、対立が激化します。

2.相続人同士で意見が食い違う「不動産の評価額」

富裕層・資産家の相続において、最も揉めるのが「この不動産はいったいいくらの価値があるのか」という評価額の問題です。

(1)広島の不動産市況における「時価」と「相続税評価額」の乖離

不動産には「一物四価(実勢価格・公示地価・路線価・固定資産税評価額)」と呼ばれる複数の価格が存在します。 相続税の計算には「路線価」が使われますが、遺産分割協議においては、実際に売買される価格である「時価(実勢価格)」を基準にするのが原則です。 特に広島市中心部(紙屋町・八丁堀エリア)や、再開発が進む広島駅周辺などは、路線価よりも実勢価格が大幅に高くなる傾向にあります。

  • 物件をもらう側(長男など): 「評価額は低く見積もりたい(代償金を安く済ませるため、固定資産税評価額などを主張)」
  • 物件をもらわない側(次男など): 「評価額を高く見積もりたい(自分の取り分を増やすため、実勢価格を主張)」

このように利益相反が起こるため、当事者同士の話し合いでは平行線をたどります。当事務所には、広島家庭裁判所の現役の家事調停官(非常勤裁判官)を務める弁護士が在籍しています。調停の現場で裁判所がどのような基準で評価額を採用するか、その実務傾向を熟知しているため、不毛な争いを避け、説得力のある適正な評価額を提示することが可能です。

(2)遺留分侵害額請求における評価額の争点

特定の相続人に不動産をすべて相続させる遺言があった場合でも、他の相続人の「遺留分(最低限の取り分)」を侵害していれば、遺留分侵害額請求がなされます。ここでも不動産の評価額が争点となります。評価額が1,000万円変われば、支払うべき遺留分も数百万円単位で変わるため、互いに不動産鑑定書を出し合うような激しい争訟に発展することも珍しくありません。

3.収益物件を相続するなら必須の「代償金」問題

(1)代償分割とは?(物件を継ぐ人が他の相続人に現金を支払う)

収益物件を分散させず、一人の後継者に相続させるための最も現実的な方法が「代償分割」です。例えば、長男が5,000万円のアパートを相続する代わりに、次男に代償金として2,500万円の現金を支払う、という形です。

(2)代償金が用意できない場合に起こる経営破綻

問題は、後継者に十分な現金がない場合です。アパート自体に価値はあっても、それをすぐに現金化することはできません。 代償金を用意するために新たな借入をしようにも、相続紛争中の物件を担保にした融資には銀行も消極的です。結果として、代償金が払えず、泣く泣く物件を売却(換価分割)せざるを得なくなるケースが後を絶ちません。

4.とりあえずの「共有」が招く最悪のシナリオ

(1)共有状態では売却も大規模修繕も全員の同意が必要

話し合いがつかないからといって、「とりあえず法定相続分(長男1/2、次男1/2など)で共有名義にしておこう」というのは、問題の先送りに過ぎず、最も危険な選択です。 共有状態になると、物件の売却はもちろん、大規模修繕や抵当権の設定など、重要な決定には「共有者全員の同意」が必要になります。将来、次男が「お金が必要だから売りたい」と言い出し、長男が「経営を続けたい」と言えば、経営はデッドロック(膠着状態)に陥ります。

(2)広島市内の「空き家」リスクと二次相続による権利関係の複雑化

さらに恐ろしいのは、共有者のひとりが亡くなる「二次相続」です。共有持分がさらにその子供たちへ細分化され、全く面識のない親戚同士が共同オーナーになる事態が発生します。 広島市内でも、このように権利関係が複雑化した結果、修繕も解体もできずに放置されている「塩漬け物件」「空き家」が散見されます。共有は、資産価値を自ら毀損する行為であると認識すべきです。

第3 広島の不動産オーナーがとるべき相続対策と事業承継

ここまで述べたトラブルを回避し、円満に資産を引き継ぐためには、生前の対策が不可欠です。それも、単なる節税対策ではなく、法務面からの「争族対策」が重要になります。

1.遺言書の作成による「承継者の指定」

(1)「特定の物件」を「特定の後継者」に渡す意思表示

遺産分割協議という「争いの場」を作らせないための最も有効な手段は、遺言書の作成です。「〇〇町のアパートは長男に相続させる」と明確に指定することで、原則として遺産分割協議を経ずに権利を移転させることができます。

(2)付言事項を活用した「家族への想い」の伝達

法的な効力はありませんが、遺言書の最後に記す「付言事項」も重要です。「なぜ長男にアパートを継がせるのか」「兄弟仲良くやってほしい」という親としての想いを記すことで、他の相続人の納得感を高め、遺留分減殺請求などの争いを防ぐ精神的な防波堤となります。

(3)遺留分を考慮した設計(代償金の準備も含めて)

ただし、一方的な遺言はかえって争いを招きます。当事務所には、元公証人として長年実務に携わった弁護士が在籍しており、公正証書遺言の作成において「無効にならない」「揉めない」ための厳格な要件を熟知しています。遺留分への配慮や、万が一の際の予備的遺言など、プロフェッショナルな視点で「執行可能な遺言」を作成します。

2.認知症対策としての「家族信託(民事信託)」の活用

近年、アパートオーナー様の認知症対策として広島でも注目されているのが「家族信託」です。

(1)後見制度では難しい「積極的な資産活用・組み換え」を可能にする

前述の通り、成年後見制度は「財産を守ること」が主眼であり、アパートの建て替えや新規投資などの積極的な資産活用には不向きです。 一方、家族信託であれば、元気なうちに信頼できる家族(受託者)に資産の管理・処分権限を託すことで、本人が認知症になった後でも、受託者の判断で柔軟な修繕や建て替え、売却が可能になります。

(2)受託者を決めておくことで経営の空白期間を防ぐ

当事務所の元公証人である弁護士は、公証人在職中に数多くの信託契約公正証書を作成しており、広島における信託契約実務の第一人者とも言える存在です。 信託契約は非常に設計が複雑であり、経験の浅い専門家が作成すると、かえって税務上の不利益や法的な不備を招く恐れがあります。確かな実績を持つ専門家による設計が、資産防衛の要となります。

3.納税資金・代償分割資金の確保

(1)生命保険の活用(受取人固有の財産としての確保)

遺産分割の対象とならない「死亡保険金」を活用し、後継者に現金を受け取らせることで、代償金や相続税の納税資金を確保します。これは他の相続人の遺留分計算の対象外(原則)となるため、特定の相続人に資金を集中させる手段として有効です。

(2)不動産の組み換え・売却による流動性の確保

収益性の低い物件や、将来的に管理が難しくなる遠隔地の土地などは、生前に売却して現金化しておく、あるいは都心部の管理しやすい区分マンションに買い換えるなどの「資産の組み換え」も検討すべきです。

4.相続税対策と法務のバランス

(1)アパート建築などの節税対策と「争族」リスクの比較

「相続税対策でアパートを建てましょう」という提案を受けることも多いかと思いますが、借金をしてアパートを建てることは、遺産分割を難しくする側面もあります。 当事務所は、相続税に特化した経験豊富な税理士事務所と連携しており、節税メリットだけでなく、「分けやすさ」「納税資金」「経営リスク」を総合的に判断したアドバイスが可能です。

(2)広島市等の地価上昇エリアにおける小規模宅地等の特例活用

アパートの敷地については、「小規模宅地等の特例」を適用することで、相続税評価額を最大50%(貸付事業用宅地等)減額できる可能性があります。ただし、適用には厳格な要件(事業的規模であるか、保有期間など)があります。こうした税務上の特例を確実に受けるための法的な権利調整も、弁護士と税理士が連携してサポートします。

第4 広島で不動産の相続問題を弁護士に相談するメリット

不動産の相続は、法律、税金、登記、そして不動産経営の実務が複雑に絡み合います。広島市にある千瑞穂法律事務所にご相談いただくメリットは、これらをワンストップで、かつ高度な専門性を持って解決できる点にあります。

1.不動産法務と相続法務の双方に精通したサポート

(1)広島家庭裁判所の調停・審判の傾向を踏まえた主張

当事務所には、裁判官として35年のキャリアを持ち、現在は弁護士として活動するベテランや、現役の家事調停官として広島家庭裁判所で執務する弁護士が在籍しています。 「裁判官はどのような証拠を重視するか」「調停委員をどう説得すればよいか」という、裁判所の内側からの視点を持っていることは、交渉や調停を有利に進める上で極めて大きなアドバンテージとなります。

(2)広島エリアに強い他士業(税理士・司法書士等)との連携

当事務所は、全国規模の大手司法書士法人「みつ葉グループ」の広島拠点と同一のオフィスで連携して運営されており、遺産分割協議成立後の不動産登記までをスピーディーに完結できます。 また、相続税に強い税理士、地元の不動産関連企業とも緊密なネットワークを持っているため、「法律論」だけでなく、「登記」「税金」「不動産の現金化」まで、トータルでの解決策を提案できます。

2.経営的視点を持った「円満な事業承継」の実現

(1)単なる遺産分けではなく、賃貸経営の存続を守る

私たちが目指すのは、単に法律に従って財産を分けることだけではありません。 親族経営の会社の顧問弁護士として、多くの事業承継や株式評価の問題を解決してきた実績を活かし、オーナー様が大切にしてきた「賃貸経営」という事業が、次世代においても安定して存続できるよう、経営的な視点も含めた「円満な承継」をサポートします。


広島市・千瑞穂法律事務所へご相談ください

不動産オーナー様の相続対策は、早めの着手が何より重要です。 認知症になってから、あるいは相続が発生して揉めてからでは、取れる選択肢が極端に少なくなってしまいます。

千瑞穂法律事務所は、広島市中心部に事務所を構え、広島市内はもちろん、周辺の広域都市圏にお住まいの皆様からのご相談に幅広く対応しております。 元裁判官、元公証人、現役調停官、そして若手弁護士まで、多様なバックグラウンドを持つ弁護士チームが、あなたの資産とご家族の絆を守るために全力を尽くします。

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広島市で身寄りのない資産家が亡くなると遺産はどうなる?国庫帰属を避け、故郷や特定の人に想いを遺す生前対策

2025-12-08

広島市においても、生涯未婚率の上昇やお子様のいないご夫婦のみの世帯の増加に伴い、「身寄りのない」資産家の方が増えています。

ご自身でビジネスを成功させたり、代々の資産を守ってこられた方ほど、ふとした瞬間にこのような不安を抱かれるのではないでしょうか。 「もし私が明日亡くなったら、この家や預金はどうなるのだろう?」 「誰が私の葬儀をあげ、誰がこの財産を管理するのか?」

対策を何もしないまま亡くなられた場合、最悪のケースでは、長年かけて築かれた財産が国のもの(国庫帰属)となり、広島の地で生かされることなく吸収されてしまいます。あるいは、顔も名前もよく知らない遠縁の方に渡ってしまうこともあります。

本記事では、広島市に拠点を置き、元裁判官・公証人が在籍する法律事務所の視点から、身寄りのない方が直面する相続の厳格な法的ルールと、ご自身の意思で財産を託すための具体的な法務対策について解説します。

第1 身寄りのない人が亡くなった後の「法定相続」と「財産の行方」

まずは、法律の原則を確認しましょう。ご自身が「身寄りがない」と思っていても、法律上は相続人が存在しているケースもあれば、本当に誰もいないケースもあります。

1.法律上の「身寄りがない」とはどのような状態か

民法では、誰が相続人になるか(法定相続人)とその順位が明確に決められています。

(1) 配偶者・子がいない場合の相続順位(直系尊属・兄弟姉妹)

配偶者とお子様(直系卑属)がいらっしゃらない場合、次に相続権を持つのはご両親や祖父母(直系尊属)です。しかし、ある程度の年齢の資産家の方であれば、ご両親はすでに他界されていることが多いでしょう。 その場合、相続権はご自身の「兄弟姉妹」に移ります。疎遠になっていたとしても、戸籍上の兄弟姉妹がいる限り、その方が法定相続人となります。

(2) 兄弟姉妹もすでに他界している場合(代襲相続人の範囲)

もし兄弟姉妹が先に亡くなっていたとしても、その兄弟姉妹にお子様(ご自身から見た甥・姪)がいれば、その甥・姪が相続権を引き継ぎます。これを「代襲相続」といいます。 「身寄りがない」と考えている方の中には、この「甥・姪」の存在を失念されているケースが多々あります。長年会っていない甥や姪が、あなたの全財産を受け継ぐ権利を持つことになるのです。

(3) 法律上の相続人が一人もいない「相続人不存在」のケース

配偶者、子(孫)、直系尊属、兄弟姉妹(甥姪)のすべてがいない場合、初めて法律上の「相続人不存在」となります。いとこ等の傍系親族には相続権はありません。

2.広島家庭裁判所での手続きを中心とした財産処理の流れ

では、相続人が誰もいない場合、遺された財産は自動的に国のものになるのでしょうか? 実はそうではありません。非常に複雑で長い法的手続きが必要となります。

(1) 利害関係人による「相続財産清算人」選任の申立て

亡くなった方に借金があった場合の債権者や、遺贈を受けた人などの利害関係人が、家庭裁判所に対して「相続財産清算人(旧:相続財産管理人)」の選任を申し立てます。 広島市にお住まいの方であれば、管轄は広島家庭裁判所となります。当事務所には広島家庭裁判所の現役の家事調停官(非常勤裁判官)も在籍しておりますが、裁判所での手続きは非常に厳格であり、選任される清算人は通常、地元の弁護士などが選ばれます。

(2) 官報公告と債権者・受遺者への支払・清算手続き

選任された清算人は、亡くなった方の財産を調査・管理し、官報で「相続人を探す公告」などを出します。そのうえで、借金があれば支払い、遺言があればそれに従って財産を渡すなどの清算業務を行います。

(3) 最終的な行き着く先は「国庫への帰属」

一定期間を経ても相続人が現れず、特別縁故者(後述)への分与もなければ、残った財産は最終的に国庫に帰属します。 つまり、生前に対策をしておかなければ、あなたが広島で築いた財産は換金され、国の一般財源として吸収されてしまうのです。

3.「特別縁故者」という制度の限界とリスク

「内縁の妻がいるから大丈夫」「長年世話になった友人がいるから彼にあげたい」と考える方もいらっしゃいますが、遺言書がない場合、それは「特別縁故者」の制度に頼ることになります。

(1) 内縁の妻や療養看護に努めた人が認められる厳格な条件

特別縁故者として認められるには、「被相続人と生計を同じくしていた」「療養看護に努めた」など、特別に親密な関係があったことを証明しなければなりません。単なる友人や、たまに世話をした程度では認められないことが多く、ハードルは非常に高いのが現実です。

(2) 広島家庭裁判所への申立て手続きと、認められるまでの期間

この制度を利用するには、相続人捜索の期間が終了した後に、改めて家庭裁判所に申し立てる必要があります。 申立てから認められるまでには、死後1年以上かかることも珍しくありません。その間、内縁の配偶者などは、住居や生活費の不安にさらされ続けることになります。

(3) 生前対策なしに死後の特別縁故者制度に期待するのは危険

裁判官を35年勤めた当事務所の弁護士の経験から申し上げても、裁判所の判断に委ねるというのは不確実性が高いものです。「おそらく認められるだろう」という希望的観測で対策を怠るのは、資産家としてあまりにリスクが大きいと言わざるを得ません。

第2 広島の資産家こそ対策必須!無対策の場合に生じる3つのリスク

資産をお持ちであればあるほど、放置した場合のリスクは深刻化します。ここでは大きく3つのリスクをご紹介します。

1.リスク1:疎遠な親族への「棚ぼた相続」

(1) 長年交流のない遠方の甥・姪が相続人になるケース

何十年も会っておらず、あなたの介護や看護に一切関与しなかった甥や姪が、法律上の権利として遺産を相続するケースです。

(2) 故人の意思とは無関係に資産が流出する「笑う相続人」問題

ご自身の葬儀にも来ないような親族が、あなたの死を知った途端に現れ、預金や不動産を持っていってしまう。これを「笑う相続人」と呼びます。ご自身の築いた財産が、感謝も想いもない相手に渡ることは、心情的にも耐え難いものではないでしょうか。

(3) 自身の財産を意図しない相手に渡さないための意思表示

この事態を防ぐには、遺言書で「誰に渡すか」を指定するしかありません。兄弟姉妹には「遺留分(最低限の取り分)」がないため、遺言さえあれば、疎遠な親族への流出を完全に防ぐことが可能です。

2.リスク2:広島市内の不動産管理不全と資産の死蔵

(1) 愛着のある広島の自宅や収益物件が競売・換価処分される

相続人がいない、あるいは手続きが放置されると、不動産は管理不全に陥ります。最終的に国庫へ帰属する場合でも、不動産は原則として競売等で換金されます。代々守ってきた土地や、こだわって建てた自宅が、二束三文で売却される可能性があります。

(2) 管理者が不在となることで生じる「空き家」問題と近隣トラブル

特に広島市は、平地だけでなく坂道の多い住宅地も多数存在します。管理者がいなくなった空き家は急速に傷み、庭木の越境や土砂災害のリスクなど、近隣住民に多大な迷惑をかけることになります。

(3) 自身が築いた富が、地域の役に立たずに国へ吸収される無念さ

特に、アパートなどの収益不動産をお持ちの場合、入居者への対応や修繕などの管理業務がストップしてしまいます。当事務所は不動産関連企業とも連携しており、こうした「動かない不動産」のトラブルを数多く見てきましたが、資産価値が毀損される前に手を打つことが重要です。

3.リスク3:死後の手続きの停滞と周囲への負担

(1) 葬儀や納骨を取り仕切る人がおらず、無縁仏となる恐れ

どれだけ資産があっても、死後の手続きを行う権限を持つ人がいなければ、葬儀社も契約できません。最悪の場合、自治体によって火葬され、無縁仏として合祀されることになります。

(2) 賃貸物件や各種契約の解約手続きが滞る

自宅が賃貸の場合の解約や、水道光熱費、入院費の精算など、誰かが事務を行わなければ債務だけが膨らんでいきます。

(3) 生前の交友関係者や賃貸人などに迷惑をかけるリスク

「誰かがやってくれるだろう」という甘えは、結果として、あなたを大切に思ってくれていた友人や知人に、法的権限のない中での対応を強いることになり、多大な迷惑をかけてしまいます。

第3 自分の意思で財産を託すための生前対策【遺言・遺贈】

こうしたリスクをすべて回避し、ご自身の想いを実現する唯一の方法が、生前対策です。

1.遺言書の作成が「最強の解決策」である理由

(1) 法定相続人以外(恩人・友人・団体)に財産を渡す方法

遺言書があれば、血縁関係に関係なく、お世話になった友人や、長年連れ添ったパートナーに財産を遺すことができます。「全財産を〇〇に遺贈する」という一行があるだけで、法的効力が生じます。

(2) 遺留分がない兄弟姉妹(甥姪)への対策としての有効性

前述の通り、兄弟姉妹には遺留分がありません。つまり、遺言書を作成することで、疎遠な親族からの介入を100%防ぐことができます。これは、身寄りのない資産家にとって最大の武器となります。

(3) 広島県内の公証役場で作る「公正証書遺言」の確実性

遺言書には自筆のものもありますが、紛失や無効のリスクを避けるため、公証役場で作成する「公正証書遺言」を強く推奨します。当事務所には、公証人を8年間務めた弁護士が在籍しております。広島の公証実務を知り尽くした視点から、将来的な紛争の余地を残さない、鉄壁の遺言書作成をサポートします。

2.広島の未来へつなぐ「遺贈寄付」という選択肢

(1) 広島市内の大学、NPO、平和関連団体等への寄付でレガシーを遺す

「特定の個人にあげる人がいない」という場合、ご自身の財産を社会貢献に役立てる「遺贈寄付」に関心を持つ方が増えています。広島大学などの教育機関や、平和記念公園に関連する団体、地元の文化振興財団など、ご自身が愛する広島のために資産を託すことができます。

(2) 包括遺贈と特定遺贈の違いと、不動産寄付の注意点

ただし、不動産のまま寄付を受け付けてくれる団体は多くありません。不動産を売却して現金化してから寄付する(清算型遺贈)などの工夫が必要です。当事務所は不動産実務に強い「みつ葉グループ」と連携しているため、こうした不動産の現金化を含む遺贈の設計もスムーズに行えます。

(3) 寄付の意思を確実に実現するための準備

寄付先の選定から、遺留分への配慮、税務上の処理まで、遺贈寄付は専門的な知識が必要です。善意が無駄にならないよう、事前の入念な調整が不可欠です。

3.「遺言執行者」を弁護士に指定すべき重要性

(1) 身寄りのない方の遺言は「誰が実行するか」が最大の鍵

遺言書を書いただけでは不十分です。あなたが亡くなった後、その遺言書の内容を実現する「遺言執行者」を指定しておく必要があります。身寄りがいない場合、信頼できる親族がいないため、専門家を指定するのが一般的です。

(2) 金融機関の解約や不動産登記をスムーズに進めるプロの役割

遺言執行者は、預金の解約、不動産登記(名義変更)、株式の売却など、あらゆる手続きを単独で行う権限を持ちます。特に、親族経営の会社の株式などをお持ちの場合、その取り扱いは非常にデリケートです。企業法務や事業承継に実績のある弁護士を執行者に指定することで、会社への影響を最小限に抑えることができます。

(3) 広島の地域事情に精通した弁護士に依頼するメリット

遺言執行は、地元の金融機関や行政とのやり取りが頻繁に発生します。広島の地域事情や手続きの慣行に精通した地元の弁護士に依頼することで、迅速かつ確実な執行が可能になります。

第4 「財産」以外の不安を解消する【死後事務・財産管理】

遺言は「財産」のことしか決められません。「身体の始末」や「生前の管理」については、別の契約が必要です。

1.お金だけでなく「身体の始末」をつける契約

(1) 広島市周辺の寺院・霊園への納骨・永代供養の生前予約

「先祖代々のお墓に入るのか、永代供養にするのか」「葬儀はどのレベルで行うのか」。これらを決定し、実行してもらうためには「死後事務委任契約」を結びます。広島市内や近郊の霊園事情に詳しい専門家とともに、生前に予約をしておくことが安心につながります。

(2) 家財道具の処分と遺品整理(デジタル遺品含む)の実務

住居の片付けや、パソコン・スマホ内のデータ消去(デジタル遺品)も、死後事務委任の範囲です。これらを誰に託すか決めておくことで、立つ鳥跡を濁さず、きれいな最期を迎えることができます。

(3) これらを第三者に託す「死後事務委任契約」とは

当事務所では、遺言の作成とセットで、この死後事務委任契約のご依頼を多く承っております。契約内容を公正証書にしておくことで、病院や葬儀社、役所に対しても権限を明確に示すことができます。

2.判断能力低下に備える生前の財産管理

(1) 任意後見契約による認知症リスクへの備え

亡くなる前、認知症などで判断能力が低下した場合の備えも重要です。「任意後見契約」を結んでおけば、信頼できる弁護士等が財産管理を行います。

(2) 広島市内の医療機関・施設入居時の身元保証問題への対応

高齢者施設への入居や入院の際、「身元保証人」を求められて困る方がいらっしゃいます。弁護士による見守り契約や財産管理契約があれば、こうした場面でもスムーズに対応できるケースが増えています。

(3) 定期的な見守り契約とホームロイヤー(顧問弁護士)の活用

お元気なうちから「ホームロイヤー(顧問弁護士)」として契約し、定期的に面談を行うことで、体調や考えの変化にいち早く対応できます。当事務所では、信託契約の第一人者でもある元公証人弁護士が、お客様の状況に合わせたオーダーメイドの財産管理スキーム(家族信託など)をご提案可能です。

第5 まとめ:広島で身寄りのない方こそ、オーダーメイドの終活設計を

身寄りのない資産家の方にとって、相続対策は「誰かのため」ではなく「ご自身のため」、そして「ご自身の尊厳を守るため」のものです。

1.法律の専門家を入れることで実現できる「安心」

(1) 遺言+遺言執行+死後事務委任のトータルサポート

遺言書の作成から、予期せぬ認知症への備え、そして死後の葬儀・供養の手配まで。これらをバラバラに依頼するのではなく、法律のプロにトータルで任せることで、盤石な安心が得られます。

(2) 地元の事情に通じた弁護士だからこそできるきめ細やかな対応

広島の不動産事情、裁判所の運用、地元の税理士・司法書士との強固なネットワーク。これらをすべて活用できるのが、当事務所の強みです。大手司法書士法人「みつ葉グループ」広島拠点や、相続税に強い税理士事務所と連携し、登記から相続税申告までワンストップで対応いたします。

(3) 元気なうちに当事務所へ相談するメリット

判断能力が低下してからでは、できる対策が限られてしまいます。「まだ早いかな」と思う今こそが、相談のベストタイミングです。

【お問い合わせ】

当事務所は広島市を中心に、資産を持つおひとり様、ご夫婦のみの世帯の相続対策を数多くサポートしています。 元裁判官・元公証人の知見を活かした確実な遺言作成から、複雑な不動産・株式を含む資産の承継まで、あなたの状況に合わせた最適なプランをご提案します。

あなたの築いた大切な財産を、あなたの意思通りに遺すために。 まずは初回相談にて、あなたの「想い」をお聞かせください。

【資産凍結のリスク】なぜ、広島の富裕層は「成年後見制度」を避けるのか?収益不動産と自社株を守るための法務戦略

2025-11-27

はじめに

 人生100年時代と言われて久しい昨今、広島県内においても高齢化の波は例外なく押し寄せています。当事務所には、広島市中区・東区・南区などの中心部や、その周辺の広域都市圏に不動産や自社株などの多額の資産をお持ちの方から、将来の財産管理に関するご相談が急増しています。

 特に、資産家の方々が最も懸念されているのが、認知症による「資産の凍結(塩漬け)」です。

「親が認知症になったら、成年後見人を付ければ何とかなる」

 かつては、そう安易に考えられていた時代もありました。しかし、法的な実務の現場を知る専門家の視点から申し上げれば、一定以上の資産をお持ちの方にとって、安易な成年後見制度の利用は、資産を目減りさせ、家や事業の存続を危うくする「最大のリスク」になりかねません。

 本記事では、広島で長年、法律実務に携わってきた弁護士の視点から、なぜ富裕層・資産家が成年後見制度を避けるのか、その構造的な理由と、それに代わる「 家族信託 × 遺言 」という解決策について、実務の裏側を交えて解説します。

1 広島の資産家が陥りやすい「成年後見制度」の落とし穴

 ご家族が認知症になり、判断能力が低下した場合、銀行口座の凍結解除や不動産売却のために「法定後見制度(成年後見)」の利用が検討されます。しかし、この制度の本質はあくまで「本人の財産保護」にあります。

 「保護」といえば聞こえは良いですが、資産運用や経営の視点から見れば、それは「現状維持という名の手足の拘束」に他なりません。ここでは、資産家の方が成年後見制度を利用した際に直面する、予期せぬトラブルについて解説します。

(1)成年後見制度は「資産を守る」だけで「運用」はできない

 成年後見人が選任されると、被後見人(ご本人)の財産は家庭裁判所の厳格な監督下に置かれます。後見人の役割は、財産を減らさないように守ることであり、増やすことや、家族のために有効活用することではありません。この「運用の壁」が、資産家にとって致命的な問題を引き起こします。

① 広島市内の収益物件における「大規模修繕」や「建替え」のハードル

 例えば、広島市内に築30年以上の賃貸アパートを一棟所有しているケースを考えてみましょう。

 オーナーであるお父様が認知症になり、成年後見人が付いたとします。その後、アパートの老朽化が進み、雨漏り対策の大規模修繕や、あるいは資産価値向上のための建て替えが必要になったとします。

 通常であれば、銀行からアパートローン等の融資を受けて工事を行い、将来の家賃収入で返済するという経営判断を行うでしょう。しかし、成年後見制度下では、このような判断が極めて困難になります。

 なぜなら、家庭裁判所や後見人は「借金を背負ってまで投資(工事)をして、もし失敗したら本人の財産が減ってしまうではないか」という保守的な判断を最優先するからです。

「将来のための投資」という経営的視点は、成年後見制度の「本人の財産保護」という理念とは相容れません。

  • 大規模修繕ができない(入居者からのクレーム対応が困難)
  • 空室対策のリフォームができない(家賃収入の減少)
  • 建て替えができない(土地の有効活用がストップ)

 結果として、修繕も建て替えもできず、資産価値が下がり続けるのを指をくわえて見ているしかない――いわゆる「資産の塩漬け」状態に陥る事例が、ここ広島でも後を絶たないのです。

② 柔軟な資産組み換えができず、相続税対策がストップするリスク

 また、資産家にとって重要な「相続税対策」も、成年後見制度の利用によって完全にストップします。

  • 「相続税を減らすために、手元の現預金を使って収益不動産を購入したい」
  • 「孫の教育資金として生前贈与(暦年贈与)を行いたい」
  • 「生命保険を活用して非課税枠を使いたい」

 これらは、元気なうちであれば当然の権利として行える対策です。しかし、一度後見制度が開始されると、これらの行為は原則として認められなくなります。

 「本人が使うわけではないお金を、なぜ他人に贈与するのか(本人の財産を減らすのか)」という理屈により、裁判所や後見人が許可を出さないためです。

 当事務所には、税務署で資産税分野を長年担当していた税理士が所属する税理士事務所と連携体制がありますが、税務のプロの視点から見ても、「認知症発症後に対策が打てなくなり、結果として数千万円単位の相続税が発生してしまった」というケースは、ご家族にとってあまりに酷な結果と言わざるを得ません。広島市中心部や駅周辺など、地価が上昇傾向にあるエリアに土地をお持ちの方は、特に注意が必要です。

(2)親族後見人が選ばれない可能性と専門家報酬の負担

 「後見人には家族(長男など)がなればいい」とお考えの方も多いですが、実務の実情はそう単純ではありません。

① 流動資産が多い場合に選任される「専門職・後見人」とは

 現在の家庭裁判所の運用では、親族が後見人候補者として名乗りを上げても、そのまま選任されるとは限りません。特に、以下のようなケースでは、弁護士や司法書士などの「専門職・後見人」が選任される可能性が高くなります。

  • 預貯金や株式などの流動資産が多額にある場合(概ね1000万円〜数千万円以上が目安とされることもあります)
  • 賃料収入などで財産管理が複雑な場合
  • 親族間で意見の対立がある場合

 これは広島家庭裁判所の管内においても同様の傾向が見られます。

② 「専門職・後見人」への報酬支払の負担

 見ず知らずの専門家が通帳や権利証を管理することへの心理的抵抗感もさることながら、経済的な負担も見過ごせません。

 「専門職・後見人」の報酬は、管理する財産額に応じて家庭裁判所が決定します(月額2万円〜6万円程度、資産額によってはそれ以上)。ご本人が亡くなるまで毎月支払い続けなければなりません。

 「資産を守るための制度を利用したはずが、長期間にわたる高額な報酬支払いで、かえって資産が目減りしてしまう」

 このパラドックス(逆説)こそが、富裕層が成年後見制度を避ける最大の理由なのです。

2 富裕層の資産管理・承継に「家族信託」が選ばれる理由

 前述のような成年後見制度の「硬直性」というリスクを回避し、資産家ならではの「運用」「承継」のニーズを満たす手法として、近年、広島の富裕層の間でも急速に普及しているのが「家族信託(民事信託)」です。

(1)認知症になっても「資産の凍結」を防ぐ仕組み

 家族信託とは、一言で言えば「元気なうちに、信頼できる家族に財産の管理権限だけを移しておく契約」です。

① 委託者(親)の意思に基づき、家族が柔軟に管理・処分できる

 仕組みはこうです。資産を持つ「委託者(親)」が、信頼できる「受託者(子など)」に対し、不動産や現金などの財産を信託します。そして、その財産から生じる利益(家賃収入など)を受け取る権利は、そのまま「受益者(親)」が持ち続けます。

 この仕組みの最大のメリットは、「親が認知症になった後でも、受託者である子の判断で、資産の売却や活用ができる」という点です。

 例えば、先ほどの「修繕が必要なマンション」の例で言えば、家族信託契約の中で「受託者は大規模修繕や建て替え、売却などの権限を持つ」と定めておけば、親が認知症になっても、子の判断で銀行融資を受け、工事を実行することができます。これに裁判所の許可は不要です。

 これは、単なる財産管理の枠を超え、「親が培ってきた資産の価値を、子が受け継ぎ、さらに高めていく」という、資産家にとって理想的な承継の形と言えるでしょう。

② 【比較表】成年後見制度 vs 家族信託

 ここで、成年後見制度と家族信託の違いを整理します。この違いを理解することが、資産防衛の第一歩です。

比較項目成年後見制度家族信託
開始のタイミング判断能力が低下した後判断能力があるうち(元気なうち)
財産管理の目的本人の財産保護・現状維持本人の希望・一族の繁栄・資産活用
不動産の売却・活用原則不可(売却も厳格な要件あり)契約内容に基づき、積極的な活用が可能
相続税対策原則不可可能(信託契約の中で設計可能)
ランニングコスト専門家後見人の場合、月額数万円〜基本的に無料(家族が管理するため)
監督機関家庭裁判所原則なし(信託監督人を置くことも可)

 この表からも分かる通り、資産規模が大きく、積極的な運用や承継対策が必要な方ほど、家族信託のメリットは大きくなります。

(2)複雑な資産(収益不動産・自社株)への対応力

 家族信託の真価は、金銭以外の「扱いの難しい資産」においてこそ発揮されます。

① 共有名義になりがちな不動産の分散リスクを防ぐ

 相続において最もトラブルになりやすいのが不動産です。特に、一つの不動産を兄弟で共有名義にしてしまうと、将来、売却や活用の際に全員の同意が必要となり、事実上「塩漬け」になってしまうリスクがあります。

 家族信託を活用すれば、不動産の管理処分権限は「受託者である長男」一人に集約しつつ、そこから得られる家賃収入などの経済的利益は「兄弟で分配する」といった設計が可能になります。

 これにより、「権利の分散(共有)」を避けつつ、「利益の公平な分配」を実現することができるのです。

② 広島の経営者が注目する「自社株信託」による事業承継

 また、広島で事業を営むオーナー経営者様からのご相談で多いのが、「自社株」の承継問題です。

 認知症により議決権が行使できなくなれば、会社の経営はストップしてしまいます。かといって、まだ若く経験の浅い後継者に、生前に全ての株を譲渡することに不安を感じる経営者様も少なくありません。

 このような場合、「自社株信託」が極めて有効です。

 例えば、自社株を後継者に信託しつつ、「指図権(議決権行使について指示を出す権限)」を経営者自身が持ち続けるよう設計します。こうすることで、株の名義(法的形式)は後継者に移しつつ、実質的な経営権(議決権)は現社長が維持することができます。

 そして、いざ社長が認知症になったり亡くなったりした際には、指図権が消滅し、完全に後継者に権限が移るようにしておけば、空白期間を作ることなくスムーズな事業承継が可能となります。

 当事務所には、親族経営の会社の顧問弁護士としての実績が多数あり、株式の評価や争奪戦といった、いわゆる「お家騒動」の現場も数多く見てきました。その経験から申し上げれば、経営権の承継こそ、曖昧さを残さず、法的拘束力のある信託契約で固めておくべき最優先事項です。

3 「家族信託」だけでは不十分?「遺言」を併用すべき理由

 ここまで家族信託の有用性をお伝えしましたが、実は「家族信託契約さえ結べば万全」というわけではありません。完璧な資産承継を目指すのであれば、伝統的な「遺言(公正証書遺言)」との併用が不可欠です。

(1)広島近郊の農地や山林など、信託に入れにくい財産も漏れなく承継する

 家族信託契約では、特定の財産(例えば、主要な不動産やまとまった資金)を信託財産として指定します。しかし、生活費用の口座や、広島近郊にある山林・農地、将来入ってくる年金など、信託財産に入れない(入れにくい)財産も必ず手元に残ります。

 これらの「信託に入らなかった財産」については、別途対策をしておかないと、通常の遺産分割協議が必要となり、そこで遺族間の話し合いがまとまらなければ、結局トラブルになってしまいます。

 そのため、「信託財産は信託契約で承継先を決め、それ以外の財産は遺言ですべて〇〇に相続させる」というように、信託と遺言をセットで作成し、財産の承継先を網羅的に指定しておくこと(信託と遺言の相互補完)が、実務上のセオリーとなります。

(2)遺留分対策と「争族」の防止(弁護士による遺留分設計)

 富裕層の相続において、避けて通れないのが「遺留分」の問題です。特定の相続人(例えば長男)に事業用資産や不動産を集中させようとすると、他の相続人(次男や長女など)から「遺留分侵害額請求」を起こされるリスクが高まります。

 家族信託は、財産管理には強力な効果を発揮しますが、遺留分を完全に消滅させる魔法の杖ではありません。

 だからこそ、「どの財産を信託し、どの財産を遺言で他の相続人に渡すか(代償金の原資とするか)」という、全体のバランスを考慮した緻密な設計が求められます。

 当事務所には、元裁判官(35年在職)や元公証人(8年在職)という経歴を持つベテラン弁護士が在籍しています。

 裁判官として多くの遺産分割調停や裁判の判決を下してきた視点、そして公証人として数多くの公正証書遺言や信託契約を作成してきた経験から、「どのような書き方をすれば揉めるのか」「裁判所はどう判断するのか」を熟知しています。

 単に契約書を作るだけでなく、将来の紛争リスクを極限まで下げるための「遺留分対策」や、家族への想いを伝える「付言事項」の活用など、紛争の現場を知る弁護士ならではの視点でアドバイスを行っています。

4 広島で富裕層の相続対策なら、当事務所の「設計力」にお任せください

 家族信託や遺言は、あくまで「道具」です。重要なのは、依頼者様ごとの資産状況や家族関係に合わせて、その道具をどう使いこなすかという「設計力」です。

(1)パッケージ商品ではない、オーダーメイドの法的スキーム

   広島の税理士・不動産会社と連携した「法務×税務」のトータルサポート

 近年、家族信託を定型的なフォーマットで安価に提供する業者も増えていますが、資産家の方々の事情は千差万別であり、テンプレートで対応できるケースは稀です。

 特に、信託契約の内容は、将来数十年にわたってご家族を拘束する「家の憲法」のようなものです。一箇所の条文の不備が、将来的に数億円の損失や、取り返しのつかない親族間対立を生むこともあります。

 当事務所では、法律の専門家としての知見はもちろん、他士業・他業種との強力な連携体制を構築しています。

 例えば、全国規模の大手司法書士法人「みつ葉グループ」の広島拠点と同一事務所内で連携しており、信託に伴う複雑な不動産登記実務にも迅速に対応可能です。

 また、元税務署の資産税担当であった税理士が所属する事務所とも密に連携しており、信託の設計段階から「相続税評価額への影響」や「損益通算の可否」など、高度な税務判断を取り入れたスキーム提案を行っています。

 さらに、地元の不動産会社とも提携し、収益不動産の収支シミュレーションや評価も踏まえた、実効性の高いご提案が可能です。「法律的には正しいが、税務や経営的には損をする」といった縦割りの弊害を防ぎ、トータルで資産を守る体制を整えています。

(2)万が一のトラブルにも対応できる「紛争解決力」

    契約書作成だけで終わらない、弁護士による安心のバックアップ

 そして、私たちが弁護士である最大の強みは、「万が一、トラブルが起きた時に守りになれる」ということです。

 司法書士やコンサルティング会社は、登記や契約書作成はできますが、もし相続人間で紛争が勃発した場合、代理人として交渉や調停を行うことはできません。

 当事務所には、広島家庭裁判所の現役の非常勤裁判官(家事調停官)を務める弁護士も在籍しており、現在の調停実務の運用や、紛争の着地点を肌感覚で理解しています。

 契約書の作成はゴールではなく、スタートです。長い運用期間の中で、もし予期せぬ意見の対立やトラブルが生じたとしても、紛争解決のプロフェッショナルである弁護士が、最後までご家族をお守りします。

5.よくあるご質問(FAQ)

 富裕層・資産家の皆様から、当事務所によく寄せられるご質問をまとめました。

Q1. 家族信託は、どこの専門家に相談しても同じですか?

 いいえ、大きく異なります。家族信託は「契約書の内容」がすべてであり、その設計には高度な法的知識と税務知識、そして紛争予測能力が求められます。経験の浅い専門家が作成した信託契約では、銀行口座が開設できなかったり、不動産の売却がスムーズにいかなかったりするトラブルが報告されています。当事務所では、元公証人や元裁判官の知見を活かし、金融機関の審査にも通る確実な契約書を作成します。

Q2. 広島市外に住んでいますが、相談は可能ですか?

 はい、可能です。当事務所は広島市中心部にございますが、東広島市、呉市、廿日市市など、広島都市圏全域および周辺エリアからのご相談を承っております。Zoom等のオンライン面談も対応可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。

Q3. まだ認知症ではありませんが、今から相談しても早すぎませんか?

 決して早すぎることはありません。むしろ、家族信託も遺言も、認知症の診断を受けて判断能力がないとみなされると、一切の手続きができなくなります。ご本人がお元気で、ご自身の意思をはっきりと伝えられる「今」こそが、唯一の対策可能なタイミングです。

6.まとめ・お問い合わせ

 資産家の方にとって、認知症対策と資産承継は、一刻の猶予も許されない課題です。

 なぜなら、家族信託も遺言も、「判断能力がある(元気な)」うちにしか契約することができないからです。一度認知症が進行してしまえば、選択肢は今回解説した「成年後見制度」に限られてしまい、資産の凍結リスクを甘受せざるを得なくなります。

 「うちはまだ大丈夫」と思われている今こそが、対策を講じるベストなタイミングです。

 当事務所は広島市中心部に位置し、市内全域および近隣都市からのアクセスも良好です。

 これまでの豊富な実務経験(裁判官・公証人経験、企業法務、不動産実務など)を結集し、あなたの資産とご家族の未来を守るための、最適な「法務戦略」をご提案いたします。

 まずは、現状の資産構成にどのようなリスクが潜んでいるのか、診断することから始めてみませんか?

 初回のご相談は無料で承っております。広島の地主様、経営者様からのご連絡を、心よりお待ちしております。

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2025-11-27

はじめに:築き上げた資産を、次世代の「幸福」として残すために

 広島市、そしてその周辺の広域都市圏で長年にわたり事業を営み、あるいは代々の土地を守り抜いてこられた皆様。皆様が築き上げた資産は、ご家族の未来を支える礎であると同時に、広島という地域の経済にとっても貴重な財産です。

 しかし、皮肉なことに、その資産の価値が高ければ高いほど、相続は単純な手続きでは終わりません。 「うちは税理士に任せているから相続税対策は万全だ」「子供たちは仲が良いから遺産分割で揉めることはない」。そうおっしゃる経営者や資産家の方ほど、いざ相続が発生した瞬間に、想定外の親族間トラブルに巻き込まれるケースを、私たちは数多く目の当たりにしてきました。

 相続税の申告は、あくまで国に対する納税の手続きです。一方、相続の本質は「家族の間で、誰が、何を、どう引き継ぐか」という、非常にデリケートな権利調整にあります。 

 本記事では、広島という地域の不動産事情や、地元企業の経営者特有の課題を踏まえ、なぜ富裕層の相続にこそ「弁護士」による法的な設計図(遺言・生前対策)が必要なのかを解説します。

1 なぜ、広島の富裕層・資産家の相続ほど「弁護士」が必要なのか

1-1 資産額とトラブルの深刻度は比例する

(1)広島市内中心部の不動産など、高額資産を巡る争いは親族間の深い亀裂を生む

 「争族(そうぞく)」という言葉が定着して久しいですが、資産規模が大きくなればなるほど、争いが生じた際の亀裂は深く、修復困難なものとなります。 例えば、預貯金が主な遺産であれば、1円単位で分割可能です。しかし、富裕層の方々の資産構成は、流動性の高い現金よりも、不動産や有価証券の比率が高いことが一般的です。

 特に、新駅ビル「ミナモア」が開業したことによる広島駅周辺地域の地価高騰の余波もあり、広島市中区(紙屋町・八丁堀周辺等)や南区などの地価が高いエリアに不動産を所有されている場合、その評価額は数千万、数億円に上ります。

 一つの不動産を複数の相続人で「共有」することは、将来の売却や活用の妨げになるため、法律家としては推奨できません。しかし、誰か一人が単独取得すれば、他の相続人との間で著しい不公平感が生まれます。 こうした高額な資産を巡る対立は、単なる金銭の問題を超え、過去の感情的なしこりまで呼び起こし、兄弟姉妹が絶縁状態になることも珍しくありません。このような事態を防ぐには、裁判所の判断基準(判例)を見据えた、法的に整合性の取れた分割案を提示する必要があります。

(2)税理士は「税金」のプロだが、「法的な揉め事の予防」は弁護士の領域

 多くの資産家の方は、顧問税理士や資産税に強い税理士とすでにお付き合いがあることでしょう。もちろん、相続税の節税対策は極めて重要です。当事務所でも、税務署にて長年資産税分野を担当していた経験を持つ税理士が所属する事務所と密に連携し、税務面での万全を期しています。

 しかし、税理士の主戦場は「対 税務署」です。「どうすれば税金が安くなるか」という視点と、「どうすれば家族が揉めないか」という視点は、似て非なるものです。 例えば、節税のために不動産を共有名義にすることが、法的には将来の共有物分割請求訴訟の火種になることもあります。また、遺産分割協議がまとまらなければ、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例といった優遇措置も使えなくなってしまいます。 「揉めないための法的な予防策」を講じることができるのは、紛争解決のプロフェッショナルである弁護士だけなのです。

1-2 広島の土地事情と「分けにくい資産」のリスク

(1)広島市(中区・南区等)の収益物件や土地は分割困難で火種になりやすい

 広島は平地が少なく、資産価値の高い土地が特定のエリアに集中しているという地理的特性があります。特に、先祖代々受け継いできた土地や、投資用の賃貸マンション、アパートなどの収益物件は、物理的に分けることができません。

 当事務所は、大手司法書士法人「みつ葉グループ」の広島拠点と同一事務所内で連携しており、不動産登記実務や不動産関連企業との独自のネットワークを持っています。その実務の中で痛感するのは、広島の収益不動産は「家賃収入を生むドル箱」であるがゆえに、相続人の誰もが欲しがり、誰も手放したがらないという現実です。 「長男がアパートを継ぐ代わりに、次男には現金を」と調整しようとしても、不動産の評価額が高すぎて、見合うだけの現預金(代償金)が手元にないケースが多々あります。

(2)代償分割(金銭での解決)を行う際の資金調達と評価額の争い

 不動産を取得する代わりに、他の相続人に代償金を支払う「代償分割」という方法があります。ここで最大の問題になるのが「不動産の評価額」です。 「固定資産税評価額で安く計算したい長男」と、「実勢価格(時価)で高く計算してほしい次男」。広島市内の人気エリアであればあるほど、この二つの価格には大きな乖離(かいり)が生じます。

 こうした評価を巡る争いは、当事者同士の話し合いで決着がつかず、最終的には家庭裁判所での調停や審判に持ち込まれることになります。 当事務所には、広島家庭裁判所の現役の非常勤裁判官(家事調停官)として活動している弁護士が在籍しています。実際の調停現場で、不動産評価においてどのような鑑定方法が採用され、どのような落としどころが模索されるのか。その「裁判所の相場観」と「実務感覚」に基づいた、紛争を未然に防ぐアドバイスが可能です。

2 広島の経営者・オーナー社長が直面する「事業承継」の落とし穴

2-1 自社株の分散は「地元企業」の経営リスクそのもの

(1)法定相続分通りに株式を分けることの危険性(意思決定の麻痺)

 広島には、地域経済を支える優良な同族企業、中小企業が数多く存在します。経営者にとって、自社の株式は単なる財産ではなく「経営権」そのものです。 もし、有効な遺言書を作らずに相続が発生すれば、自社株は法定相続分に従って、妻や子供たちに分散してしまいます。会社経営に関心のない子供や、経営方針に反対する親族が株式を持つことで、株主総会での特別決議(定款変更、組織再編、役員の選任・解任など)ができなくなる恐れがあります。これは会社経営にとって致命的なリスクです。

 当事務所は、多くの親族経営会社の顧問弁護士を務めており、株式の分散が招いた経営の停滞や、支配権争い(いわゆるお家騒動)の現場を数多く見てきました。だからこそ、経営者の皆様には「株式だけは後継者に集中させる」ための法的手当てを強く推奨しています。

(2)後継者に株式を集中させる際に立ちはだかる「遺留分」の壁

 しかし、後継者である長男に株式を集中させようとすると、他の兄弟から「遺留分(最低限の遺産取得分)」を請求されるリスクが高まります。 自社株の評価額が高い場合、長男は莫大な遺留分侵害額を、現金で兄弟に支払わなければならなくなります。その資金を会社から借り入れれば会社の財務が悪化し、個人で用意できなければ株式を手放さざるを得ない。まさに、相続トラブルが企業の倒産リスクに直結するのです。

2-2 会社と個人の資産が混在している場合のリスク

(1)会社への貸付金や連帯保証の処理を誤ると、遺族が負債を負う可能性

 オーナー社長の場合、会社に対して個人の資金を貸し付けていたり(役員借入金)、会社の金融機関からの借入金の連帯保証人になっていたりすることが一般的です。 「会社への貸付金」も相続財産となるため、相続税の課税対象になります。しかし、会社に返済能力がなければ、遺族にとっては「現金化できないのに税金だけかかる不良債権」となります。また、連帯保証人の地位も原則として相続されるため、事業を継がない妻や娘が、巨額の保証債務を負うリスクもあります。

(2)広島市内の事業所兼自宅など、公私混同しやすい資産の法的整理

 広島市内では、1階が店舗や事務所、2階以上が自宅という自社ビル形式の不動産も多く見られます。土地は個人名義、建物は会社名義、あるいはその逆など、権利関係が複雑なケースも少なくありません。 こうした「公私混同」しやすい資産については、生前のうちに権利関係を整理し、適切な賃貸借契約を結んでおくなどの対策が必要です。事業承継に強い弁護士が入ることで、会社法と相続法の両面から、会社を守りつつ家族の生活基盤を守る設計が可能になります。

3 良かれと思った「生前贈与」が争族の引き金になる

3-1 節税対策としての贈与が招く「特別受益」の争い

(1)「広島市内に家を建ててもらった兄」と「何も貰っていない弟」の不公平感

 相続税対策として、暦年贈与などの生前贈与を活用されている方も多いでしょう。しかし、特定の子供だけに援助を行うことは、他の子供から見れば「不公平」以外の何物でもありません。 例えば、「長男は広島市内にマイホームを建てる際に頭金を出してもらった」「次女は私立大学医学部の学費を出してもらった」といった事実は、相続の場面で「特別受益」として蒸し返されます。

(2)過去の贈与を相続財産に持ち戻して計算する場合の複雑さ

 法律上、特別な利益(特別受益)を受けた相続人がいる場合、その贈与額を相続財産に「持ち戻して」計算することになります。しかし、「いくら持ち戻すのか」「当時の1000万円を今の貨幣価値に換算するといくらか」という計算は非常に複雑です。 曖昧な記憶や記録しかない場合、「言った言わない」の水掛け論になります。富裕層の相続では、数百万円、数千万円単位の贈与が行われることが多いため、この「過去の精算」が遺産分割協議における最大の争点になることが多々あります。

3-2 管理不十分な贈与が生む「名義預金」と「使途不明金」疑惑

(1)実態が伴わない贈与(名義預金)は、遺産分割協議の対象になり揉める原因に

 子供や孫の名義で通帳を作り、そこにお金を入れておく。これは税務署から「名義預金(実質的には親の財産)」と認定され、追徴課税されるリスクがあるだけではありません。遺産分割協議においても「あれは実質的に父の遺産だから、分割対象に含めるべきだ」という争いを生みます。

(2)地元金融機関の預金履歴を巡り、親族間で「使い込み」の疑惑が生じるリスク

 親の晩年、預金管理をしていた同居の子供が、生活費や介護費用のために預金を引き出すことがあります。しかし、死後に他の兄弟が通帳の履歴(広島銀行やもみじ銀行など)を開示した際、「使途不明な多額の出金がある。使い込んだのではないか?」と疑念を抱くケースが後を絶ちません。

 こうしたトラブルは、現役の家事調停官として多くの複雑な紛争を見てきた弁護士が在籍する当事務所だからこそ、「どこで揉めるか」を熟知しており、それを防ぐための証拠保全や記録管理の徹底をアドバイス可能です。

4 富裕層の遺言書作成における重要ポイント【遺留分対策】

4-1 「全財産を長男に」という遺言が逆に争いを生む

(1)他の相続人の権利「遺留分」を無視した遺言の末路

 「うちは公正証書遺言を書くから大丈夫」と思われている方も、その中身には細心の注意が必要です。「家督を継ぐ長男に全財産を相続させる」といった極端な遺言書は、他の相続人の「遺留分」を侵害し、かえって法的紛争を誘発します。 遺留分侵害額請求権が行使されると、原則として金銭で支払わなければなりません。対策なしに遺言を作れば、長男に過大な金銭負担を強いることになります。

(2)生前贈与も含めた「遺留分侵害額」のシミュレーションの重要性

 遺留分の計算には、不動産の評価額や過去の生前贈与も含まれます。正確なシミュレーションを行うには、高度な法的知識と計算能力が不可欠です。 当事務所には、裁判官を35年間、公証人を8年間勤めたベテラン弁護士が在籍しています。裁判所が最終的にどのような判断を下すかという「司法の視点」と、公証人として数多くの「有効な遺言」を作成してきた「実務の視点」。この両輪に基づき、将来の紛争リスクを極限まで抑えた、強固な遺言書の作成をサポートします。

4-2 弁護士が入ることで可能になる「付言事項」と「遺留分放棄」の活用

(1)法的効力はないが、家族への想いを伝える「付言事項」で感情的対立を防ぐ

 遺言書には、財産の分け方だけでなく、家族へのメッセージである「付言事項(ふげんじこう)」を記すことができます。 「なぜ、長男に多く残すのか」「会社を存続させることが、結果として一族全員の利益になる」といった親の真意を、弁護士が法的な文章の中に、心に響く形で織り込みます。これが子供たちの納得感を引き出し、遺留分請求を思いとどまらせる「最後の防波堤」となるのです。

(2)経営承継円滑化法などを用いた「遺留分に関する民法の特例」の活用

 経営者の方には、経営承継円滑化法を活用した「遺留分の除外合意」や「固定合意」という手法も検討できます。これには家庭裁判所の許可など複雑な手続きが必要ですが、事業承継に強い当事務所であれば、スムーズなサポートが可能です。 また、当事務所の元公証人である弁護士は、公正証書による「家族信託(民事信託)」の組成実績も豊富であり、広島における信託契約の第一人者とも言える存在です。遺言だけではカバーしきれない、より柔軟で長期的な資産承継(二次相続対策など)の設計についても、最高レベルのアドバイスを提供できます。

5 広島の資産を守る。当事務所が提案する富裕層向け相続サポート

5-1 遺言書の作成から執行までをワンストップで任せる安心感

(1)当事務所の弁護士が「遺言執行者」となり、広島法務局や銀行での手続きを代行

 素晴らしい遺言書を作成しても、いざ相続が発生した際に手続きが滞っては意味がありません。当事務所では、遺言書の作成だけでなく、その内容を確実に実現する「遺言執行者」への就任も承っております。 不動産の名義変更(広島法務局管轄)や、預貯金の解約・分配といった煩雑な手続きを、弁護士が責任を持って代行します。

(2)親族が執行者になる精神的負担と、公平性への疑義を回避する

 親族の誰かが遺言執行者になると、「手続きが遅い」「勝手なことをしているのではないか」と他の親族から疑われるストレスに晒されます。 利害関係のない第三者である弁護士が執行者となることで、手続きの透明性と公平性が担保され、ご家族は精神的な負担から解放されます。

5-2 広島の他士業(税理士・司法書士)との強力な連携

(1)相続税申告や不動産評価も、信頼できる広島の専門家ネットワークで対応

 富裕層の相続は、法務と税務、そして不動産登記実務が複雑に絡み合います。 当事務所は、不動産登記に強い司法書士法人「みつ葉グループ」との同一オフィス連携、そして元税務署職員の税理士とのネットワークを活かし、窓口一つで全ての課題に対応するワンストップサービスを提供しています。 それぞれの専門家がバラバラに動くのではなく、一つのチームとして密に連携することで、法的な安全性と税務的なメリットの両立(最適化)を目指します。

(2)法務と税務の両面から「最適解」を導き出すオーダーメイドの相続設計

 資産の内容やご家族の状況は、百人百様です。特に、不動産や自社株を含む資産家の相続においては、テンプレート通りの解決策は通用しません。 私たちは、元裁判官、元公証人、現役家事調停官、そして各分野の専門家という厚みのある知見を結集し、あなたの一族にとっての「最適解」をオーダーメイドで設計します。

まとめ:弁護士への早期相談が「一族の繁栄」を守るカギ

 広島の地で築き上げられた大切な資産。それを守り、次世代へつなぐことは、単なる事務手続きではなく、一族の繁栄を守るための「経営戦略」そのものです。 相続対策は、ご本人の判断能力がしっかりしている「今」しかできません。認知症になってしまってからでは、遺言も、生前贈与も、家族信託も、打つ手がなくなってしまいます。

 「うちはまだ元気だから大丈夫」ではなく、「転ばぬ先の杖」として。 資産規模が大きい方、広島市内に不動産や会社をお持ちの方こそ、地元の事情に精通し、あらゆる紛争パターンを知り尽くした当事務所へご相談ください。 まずは初回法律相談にて、現状の資産構成におけるリスク診断から始めましょう。あなたとご家族の安心のために、私たちが全力を尽くします。

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2025-11-27

広島市およびその周辺都市圏において、長年にわたり事業を営んでこられた経営者の方や、代々の土地を守ってこられた資産家の方々にとって、「相続」は単なる財産の分配手続きではありません。それは、家や事業の歴史を次世代へと正しく承継し、一族の繁栄を盤石なものにするための、人生における最後の大事業といえます。

 しかし、資産規模が大きくなればなるほど、そして資産の内容が複雑になればなるほど、リスクは高まります。これまで仲の良かった親族間であっても、ひとたび相続が発生すれば、数千万円、数億円という金額が動く現実に直面し、感情と利害が複雑に絡み合う「争族」へと発展するケースは後を絶ちません。

 特にここ数年、広島市中心部での再開発に伴う地価の変動や、経営者の高齢化に伴う事業承継問題など、地域特有の事情も相まって、遺産分割の難易度は上がっています。

 本記事では、富裕層や資産家の方が直面しやすい相続リスクと、それを回避して円満かつ戦略的に資産を承継するためのポイントについて、法的な視点から詳しく解説します。

1 広島の資産家・経営者の相続で「争族」リスクが高まる背景

 なぜ、十分な資産がある家庭ほど揉めてしまうのでしょうか。「分けるものがこれだけあるのだから、喧嘩にはならないだろう」というのは、残念ながら誤解です。資産があるからこそ、分け方を巡る選択肢が増え、それぞれの主張が対立する余地が生まれてしまうのです。

1-1 広島市内中心部の地価上昇・再開発が招く「遺産評価」の激しい対立

 相続財産の中で最も揉める原因となりやすいのが「不動産」です。特に広島においては、近年の広島駅周辺の再開発や、紙屋町・八丁堀エリア、さらには近郊の住宅地における地価の変動が、遺産分割に大きな影を落としています。

(1)評価額の数%のズレが「数千万単位」の差を生む、広島の不動産事情

 預貯金であれば「1円」は誰が見ても「1円」ですが、不動産には「一物四価(実勢価格、公示地価、路線価、固定資産税評価額)」と呼ばれる複数の評価基準が存在します。 一般的な遺産分割協議では、相続税評価額(路線価等)を基準に話し合うことが多いですが、広島市中心部や人気のあるエリアの収益物件などでは、路線価と、実際に市場で売買される価格(実勢価格)との間に大きな乖離が生じることが珍しくありません。

 資産規模が大きい場合、この評価方法をどちらにするか、あるいは鑑定評価をどのタイミングで入れるかによって、評価額に数千万円、場合によっては億単位の差が生じます。財産を受け取る側は少しでも評価を低く見積もりたいと考え、代償金をもらう側は高く評価してほしいと考える。この利益相反が、深刻な対立を生むのです。

(2)「先祖代々の土地」への思い入れと、資産価値の乖離が招く親族間の亀裂

 また、広島市周辺の旧家や資産家の場合、「先祖代々の土地」に対する思い入れの強さも紛争の火種となります。 「長男が本家と土地を継ぐのは当然」と考える世代と、「法定相続分通りの権利を主張したい」と考える次世代との価値観の衝突です。特に、不動産以外の金融資産が少ない場合、不動産を取得しない相続人に対して支払う「代償金」が用意できず、結果として代々守ってきた土地を売却せざるを得なくなるという悲劇も起きています。

1-2 広島のオーナー企業特有の「事業承継」と遺産分割の板挟み

 広島は、ものづくり企業をはじめとする優良なオーナー企業が数多く存在する地域です。経営者の相続において避けて通れないのが、自社株(非上場株式)の扱いです。

(1)自社株や事業用資産が遺産の大半を占めるケースの難しさ

 会社経営者の場合、個人の資産と会社の資産が密接に関係しています。相続財産の大半が「自社株」であることも少なくありません。 後継者である長男に自社株をすべて相続させようとすれば、他の兄弟姉妹の遺留分を侵害してしまう可能性があります。かといって、株式を兄弟で分散して持たせてしまえば、会社の意思決定がスムーズにいかなくなり、将来的な経営権争い(お家騒動)に発展しかねません。

 当事務所には、親族経営の会社の顧問弁護士としての実績も多く、株式の争奪戦や評価を巡る紛争を数多く目にしてきました。事業承継を絡めた遺産分割は、単なる財産分けではなく「企業の存続」がかかった重大な局面であり、会社法と相続法の両面に精通した高度な判断が求められます。

(2)高額な相続税納税による「資金不足」が引き起こす資産売却トラブル

 富裕層の相続で必ず直面するのが「納税資金」の問題です。資産総額は大きくても、その多くが不動産や自社株などの「換金しにくい資産」である場合、相続税を支払うための現預金が手元にないという事態(キャッシュプア)に陥ります。 納税期限は相続開始から10ヶ月以内と決まっています。遺産分割協議がまとまらなければ、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例といった有利な制度を使えないまま納税することになりかねません。焦って不動産を安く売り急ぐような事態を避けるためにも、早期の対策が不可欠です。

2 円満解決の第一歩は、広島・周辺エリアの全資産の「可視化」と「適正評価」

 遺産分割協議を感情論にせず、建設的な話し合いにするための唯一の方法は、客観的な事実(数字)をテーブルに乗せることです。つまり、資産の「可視化」と「適正評価」です。

2-1 多岐にわたる財産を網羅した「財産目録」の精緻な作成

 富裕層の方の資産は、複数の銀行口座、証券口座、国内外の不動産、ゴルフ会員権、美術品など、多岐にわたります。一部の相続人が財産を隠しているのではないかという疑心暗鬼が生まれると、信頼関係は崩壊し、協議は停滞します。

(1)広島市・周辺都市圏に点在する不動産・有価証券等の徹底的な洗い出し

 まずは、正確な財産目録を作成することがスタートラインです。 特に不動産については、自宅だけでなく、投資用マンション、駐車場、山林、原野に至るまで、名寄帳などを活用して漏れなく調査する必要があります。当事務所では、同じフロア内で連携する全国規模の司法書士法人「みつ葉グループ」とともに、迅速かつ正確な不動産調査を行える体制を整えています。登記簿上の情報だけでなく、権利関係の複雑な不動産についてもスピーディに実態を把握できるのが強みです。

(2)経営者の場合に必要な「法人資産」と「個人資産」の峻別と整理

 経営者の場合、会社に対する貸付金や、会社名義の保険、個人名義で会社に使用させている不動産など、法人と個人の資産が入り組んでいるケースが多々あります。これらを法的に整理し、どの範囲が遺産分割の対象になるのかを明確に切り分ける作業は、専門的知見なしには困難です。

2-2 不動産・自社株の評価額をめぐる争いの回避

 財産のリストアップができたら、次は「いくらで評価するか」という最大の難関に挑みます。

(1)「相続税評価額」と広島の「実勢価格(時価)」の乖離への対応策

 前述の通り、広島市内の一部エリアでは路線価と実勢価格に大きな開きがあります。公平な遺産分割を目指すならば、安易に路線価だけで計算するのではなく、市場価格を意識した調整が必要です。 しかし、単に「相場が高いはずだ」と主張するだけでは水掛け論になります。近隣の取引事例や、収益還元法を用いた理論的な価格など、説得力のある根拠を示す必要があります。

(2)地元の不動産事情に精通した専門家の意見書を活用し、客観的基準を作る

 不動産評価で揉めそうな場合は、不動産鑑定士による鑑定評価や、信頼できる不動産業者の査定書を取得することが有効です。 当事務所は、地元の不動産鑑定士や不動産関連企業とも連携しており、特に評価の難しい賃貸アパートなどの収益不動産が含まれる案件を数多く手掛けてきました。実務に即した適正な評価額を算出することで、相続人全員が納得できる「着地点」を見出すサポートを行っています。

 また、自社株の評価についても、純資産価額方式や類似業種比準方式など、会社の規模や状況に応じた適切な評価方法を選定する必要があります。これには、税務署で資産税分野を長年担当していた経験を持つ税理士との連携により、税務リスクも考慮した精緻な評価を行っています。

3 富裕層が検討すべき「公平」かつ「戦略的」な遺産分割スキーム

 資産の全容と評価が固まれば、次は具体的な分け方(スキーム)の検討に入ります。富裕層の遺産分割では、単に法定相続分で割るだけでなく、資産を守り、活用するための戦略的な視点が求められます。

3-1 資産の散逸を防ぎ、広島での家・事業を守るための分割方法

 不動産や自社株を共有状態(複数の相続人で持ち合うこと)にすることは、将来の禍根を残す最悪の選択肢です。次の世代、そのまた次の世代へと権利関係が複雑化し、売るに売れず、貸すに貸せない「塩漬け資産」を生み出してしまうからです。

(1)特定の相続人に不動産等を集中させる「代償分割」の活用と資金調達

 事業承継者や、家を守る特定の相続人が主要な資産(不動産や自社株)を取得し、その代わりに他の相続人へ金銭を支払う「代償分割」が、資産散逸を防ぐための王道です。 この際、代償金をどう調達するかが課題となります。生命保険の活用や、金融機関からの融資、あるいは一部の遊休資産の売却など、資金調達のプランニングも含めた提案が必要です。

(2)納税資金を確保しつつ、資産価値を最大化する「換価分割」の選択

 どうしても代償金が用意できない場合や、誰も取得を希望しない不動産がある場合は、売却して現金を分ける「換価分割」を検討します。 ただし、単に売ればよいわけではありません。譲渡所得税の負担や、売却のタイミングを見極め、手取り額が最大になるような売却戦略を立てることが重要です。ここでも不動産実務に強い専門家との連携が活きてきます。

3-2 高額な生前贈与と特別受益の適切な処理

 富裕層の相続で頻繁に問題になるのが、生前贈与の扱いです。「長男は家の建築資金を出してもらった」「次女は留学費用を出してもらった」といった過去の援助は、法律上「特別受益」として遺産に持ち戻して計算するのが原則です。

(1)過去の資金援助や贈与を巡る不満を解消するための法的調整

 特別受益の主張は、感情的な対立の温床となりやすい部分です。どこまでを特別受益と認めるか、その証拠はあるのか。当事者間で結論が出なければ、最後は家庭裁判所の裁判官が判断を下す審判で決まります。

 当事務所には、広島家庭裁判所の現役の非常勤裁判官(家事調停官)が在籍しており、実際の調停現場でどのような判断が下されているかという「相場観」を熟知しています。 裁判所が認める可能性の低い主張に固執して時間を浪費するのではなく、見通しを踏まえた現実的なラインでの調整を行うことで、早期解決を図ることができます。

(2)遺産分割における「持戻し免除」の意思表示とその活用法

 被相続人(亡くなった方)が、「生前贈与した分は、遺産分割の計算に含めなくてよい」という意思を示していた場合(持戻し免除の意思表示)、贈与を受けた相続人はその分を多く受け取ることができます。 遺言書などでこの意思表示を明確にしておくことは、特定の相続人を手厚く保護するための有効な手段となります。

4 広島で確実な資産承継を実現するために弁護士を活用するメリット

 富裕層・資産家の相続においては、トラブルが起きてから対処する「事後対応」ではなく、トラブルを未然に防ぐ「予防法務」、そして万が一トラブルになった際も傷口を広げない「戦略的対応」が不可欠です。

4-1 「争族」を未然に防ぐ、法的効力の強い遺言書の作成

 最も効果的なトラブル防止策は、法的に不備のない遺言書を作成することです。しかし、ただ「公正証書遺言」を作れば安心というわけではありません。

(1)遺留分侵害額請求を想定した、隙のない「公正証書遺言」の設計

 資産規模が大きい場合、特定の相続人に財産を集中させようとすると、他の相続人の「遺留分(最低限の取り分)」を侵害する可能性が高くなります。遺留分を無視した遺言書を作ると、死後に「遺留分侵害額請求」という訴訟を誘発し、結局は家族が争うことになります。

  当事務所には、裁判官を35年、公証人を8年務めたベテラン弁護士が在籍しています。公証人として数多くの公正証書遺言を作成してきた経験から、将来の紛争リスクを徹底的にシミュレーションし、遺留分対策(付言事項の工夫や、生前贈与との組み合わせ、生命保険の活用など)を講じた、極めて堅牢な遺言書の作成をサポートします。

 また、近年注目されている「家族信託(民事信託)」についても、この元公証人の弁護士は広島における先駆者的な存在であり、遺言だけでは実現できない柔軟な資産承継(例えば、二次相続以降の承継先の指定など)の設計も可能です。

(2)遺言執行者を弁護士に指定し、複雑な資産承継手続きを確実に実行する

 遺言書の内容を確実に実現するためには、「遺言執行者」の指定が重要です。資産が多岐にわたる場合、親族が執行者になると手続きの負担が重く、また他の相続人から公平性を疑われるリスクもあります。 弁護士を遺言執行者に指定していただくことで、預貯金の解約、不動産の名義変更、株式の書き換えなどの複雑な手続きを、中立的な立場で厳格かつ迅速に遂行することができます。

4-2 広島の他士業と連携した「法務×税務」のワンストップサポート

 富裕層の相続は、法的な「分割」の問題と、税務的な「節税・納税」の問題が表裏一体です。どちらか一方だけを見ていては、最適な解決はできません。

(1)地元の税理士・不動産鑑定士と連携し、節税と紛争予防を両立

 「税金は安くなったが、家族の仲は最悪になった」「円満に分けたが、想定外の税金がかかった」ということになっては本末転倒です。 当事務所は、相続税に強い税理士事務所や、不動産鑑定士や不動産業者などの不動産の実務家と密に連携し、法務と税務の両面からベストな解決策を提案できる体制(ワンストップサービス)を構築しています。

(2)広島家庭裁判所の実務傾向を踏まえた、現実的で有利な解決策の提案

 最後に、万が一調停や審判になった場合、地元の裁判所がどのような判断傾向を持っているかを知っていることは大きなアドバンテージになります。 長年の裁判官経験を持つ弁護士や、現役の家事調停官として実務に携わる弁護士が在籍する当事務所は、裁判所の思考プロセスを熟知しています。「裁判官ならこの証拠をどう見るか」「この主張は通るか」という視点から戦略を立てることで、依頼者様にとって最大限有利かつ、納得感のある解決を目指します。

おわりに

 資産家・富裕層の方にとっての相続対策は、単なる「手続き」ではなく、ご自身が築き上げてきた財産と想いを、愛する家族へと託すための「経営判断」です。

 広島というこの地で、大切な資産を円満に、そして確実に次世代へつなぐために。 複雑な財産構成の整理から、遺言・信託の活用、そして万が一の紛争対応まで。相続・遺言の専門家集団である当事務所が、あなたの「家」と「資産」を守るためのパートナーとして全力でサポートいたします。

 まずは一度、当事務所の初回相談をご利用ください。現状の資産状況を分析し、将来起こりうるリスクと、今打つべき対策について、具体的にお話しさせていただきます

富裕層の相続を脅かす「デジタル遺産」の正体とは?税務調査で狙われる見えない資産と、弁護士が教える防衛策

2025-11-25

はじめに:広島の資産家・経営者の間で「デジタル遺産」の相談が増えている理由

(1) 「思い出の写真」だけではない、巨額資産のリスク

 近年、テレビや雑誌で「デジタル遺産」という言葉を耳にする機会が増えました。「スマートフォンのロックが開かない」「SNSの追悼アカウントをどうするか」といった話題が一般的ですが、資産をお持ちの方や経営者の方にとって、デジタル遺産は「思い出」だけの問題ではありません。 それは、数千万円、時には億単位の金融資産が、誰にも知られずにデジタル空間に埋没してしまうという、極めて深刻な経済的リスクを含んでいます。

(2) 広島でも急増する「見えない資産」のトラブル

 実際に、広島市にお住まいの資産家の方や、代々事業を営む経営者の方々から、当事務所へ寄せられる相談の質が変わってきています。

  • 「亡くなった父が、ネット証券で株取引をしていたようだが、どこの証券会社かわからない
  • 海外の口座に資産があるらしいが、ログインIDが不明で、現地の言葉もわからず手出しができない
  • 仮想通貨(暗号資産)を持っていると聞いていたが、ウォレットのパスワードが見つからない

 これらは決して、東京のような大都市圏だけの話ではありません。ここ広島においても、インターネットバンキングの普及や資産運用の多様化により、「通帳のない資産」は急増しています。

(3) 発見の遅れが招く「税務調査」と「争族」

 デジタル資産の恐ろしい点は、「見えない」ことです。見えないからこそ、発見が遅れ、遺産分割協議が終わった後に多額の財産が出てきて揉め事になったり、最悪の場合、広島国税局の税務調査で指摘を受け、多額のペナルティ(重加算税など)を課されたりするケースも現実に起こり得ます。

 本記事では、広島を中心に多くの相続案件、とりわけ複雑な資産背景を持つ富裕層の相続をサポートしてきた弁護士の視点から、デジタル遺産に潜むリスクと、今すぐ取るべき具体的な防衛策について、徹底的に解説します。

1 広島の富裕層が見落としがちな「高額デジタル遺産」の範囲

 「自分はデジタルに疎いから関係ない」と考えているシニア世代の方ほど、注意が必要です。なぜなら、ご自身の意図しないところで、資産がデジタル化されているケースが多いからです。ここでは、広島の富裕層が特に注意すべき「見えない資産」の正体を明らかにします。

1-1 地方銀行のインターネットバンキングも「デジタル遺産」

(1)通帳が存在しない「ネット支店・Web通帳」の盲点

 「デジタル遺産」と聞くと、ビットコインなどの新しい技術を想像しがちですが、最も身近で、かつ高額な遺産となりやすいのが「インターネットバンキング」です。 広島にお住まいの皆様にとってなじみの深い広島銀行やもみじ銀行などの地方銀行でも、近年は「Web通帳(通帳レス口座)」への切り替えが進んでいます。紙の通帳を発行せず、スマホやパソコンで明細を確認するスタイルです。

(2)家族が「通帳がない=口座がない」と誤認するリスク

 これは非常に便利ですが、相続の場面では大きな落とし穴となります。遺された家族は、まず自宅の金庫やタンスから「紙の通帳」を探します。しかし、Web通帳口座には紙の通帳が存在しません。 そのため、「通帳がない=その銀行には口座がない」と誤認してしまうのです。その結果、数百万、数千万の預金が手つかずのまま放置され、長期間誰にも気づかれないまま「休眠預金」となってしまうリスクがあります。

1-2 資産運用・経営資産としてのデジタル財産

 富裕層の方々は、資産保全のために多様なポートフォリオを組まれていることが一般的です。その多くが、現在はデジタル上で管理されています。

(1)ネット証券・暗号資産(仮想通貨)・FXアカウント

 店舗型の証券会社と異なり、担当者が付かないネット証券(楽天証券、SBI証券など)では、口座名義人が亡くなっても証券会社側から連絡が来ることはありません。パソコンの中にしか存在しない株式や投資信託は、非常に発見困難な財産です。 また、数年前に「試しに買ってみた」ビットコインなどの暗号資産やNFTが、現在では大きな価値を持っていることも珍しくありません。しかし、これらにアクセスするための「秘密鍵(パスワード)」がわからなければ、その資産は事実上、電子の海に消えてしまいます。

(2)海外の金融機関・オフショア口座のオンライン管理画面

 資産分散のために海外の金融機関を利用している場合、郵送物が届かず、全てオンラインで完結しているケースも多々あります。現地の言語での対応が必要になることも多く、家族にとっては大きな障壁となります。

(3)経営者・法人名義の重要アカウント

 事業を営まれている経営者・オーナー社長の場合、問題はさらに複雑です。法人名義のネットバンキング口座や、会社のWEBサイト・ドメイン管理権限、クラウド会計データのアクセス権なども、広義のデジタル遺産に含まれます。 これらは個人の財産であると同時に「会社の命運を握る鍵」でもあります。社長にもしものことがあった際、経理担当者もログインできず、従業員への給与支払いや取引先への送金がストップしてしまう事態は、何としても避けなければなりません。 当事務所では、広島市内で事業を行う親族経営の会社の顧問弁護士も数多く務めており、こうした「事業承継に絡むデジタル資産の引き継ぎ」についても、経営上のリスク管理としてアドバイスを行っています。

2 「パスワードが分からない」では済まない! 3つの重大リスク

 デジタル資産のIDやパスワードが不明であることの弊害は、「ログインできない」という単純な話では終わりません。そこには、法的なトラブル、税務的なペナルティ、そして親族間の不和という、3つの重大なリスクが潜んでいます。

2-1 【税務リスク】広島国税局管内でも強化される「情報収集」

(1)税務署はデジタル上の入出金履歴(足跡)を徹底的に調査する

 「デジタル資産だから、税務署にもバレないだろう」と考えるのは、極めて危険な誤解です。むしろ、デジタルデータは「痕跡(ログ)」が必ず残るため、税務署にとっては調査しやすい対象とも言えます。 相続税の申告において、広島国税局をはじめとする税務当局は、近年デジタル資産の調査能力を飛躍的に向上させています。

 例えば、亡くなった方のメインバンクの入出金履歴(これもデジタルで照会可能です)を数年分遡り、ネット証券や暗号資産取引所への送金履歴があれば、そこから「申告されていない資産があるはずだ」と特定します。

(2)「知らなかった」は通用しない重加算税のペナルティ

 もし、相続人の方々がそのデジタル資産の存在を知らず、悪意なく相続税申告から漏れてしまっていたとしても、税務署から見れば「申告漏れ」です。場合によっては「仮装・隠蔽」とみなされ、本来の税金に加え、35%〜40%もの重い重加算税が課される可能性があります。

  当事務所は、国税OBである税理士(資産税分野を長年担当)が所属する税理士事務所と緊密に連携しています。そのため、「税務署がどこを見ているか」「どのようなお金の動きが指摘されやすいか」という視点を持った上で、法的な調査・対策を行うことが可能です。

2-2 【資産消失】数千万円単位の資産が永遠に引き出せなくなる

(1)ログインID不明による口座凍結と海外業者の対応困難性

 デジタル資産、特に暗号資産や海外のネット口座においては、セキュリティが極めて堅牢に作られています。これは通常時には「安全」を意味しますが、相続時には「壁」となります。 正規のIDとパスワード、あるいは二段階認証のためのスマートフォン(SIMカード)がなければ、相続人であってもアクセスが拒絶されることが多々あります。特に海外の業者の場合、日本の戸籍謄本や遺産分割協議書を提出しても、「現地の法律に基づく手続きが必要」と跳ね返されたり、そもそも日本語でのサポートが皆無であったりと、手続きが暗礁に乗り上げるケースが後を絶ちません。

(2)公的な証明書が存在しない怖さ

 結果として、そこに数千万円の価値があると分かっていても、永久に引き出せない「凍結資産」となってしまうのです。広島市内にある不動産であれば、登記簿などの公的な証明書が存在し、時間はかかっても必ず相続手続きができますが、デジタル資産にはそのような公的な後ろ盾がないものが多く、一度失うと取り返しがつかないという怖さがあります。

2-3 【争族トラブル】「県外に住む相続人」との情報格差

(1)広島の実家と県外の子供との間で生じる情報格差

 デジタル遺産特有の問題として、「家族間の情報格差」が挙げられます。例えば、広島のご実家で同居していた長男は、親のパソコンを見る機会があり、ネット証券の存在を知っていたとします。一方で、進学や就職で東京や大阪に住んでいる次男・長女は、親のデジタル資産のことなど全く知りません。

(2)隠匿の疑いが招く遺産分割協議の紛糾

 いざ相続となった際、もし長男がその情報を開示せず、こっそりと自分のものにしていたり、あるいはパスワードがわからず「無かったこと」にしようとしたりしたらどうなるでしょうか。 後になって「お父さんは株をやっていたはずだ」「もっと預金があったはずだ」と他の相続人が疑い始めると、一気に親族間の不信感が高まります。「兄さんが隠しているんじゃないか?」という疑念は、遺産分割協議を泥沼化させます。 

 当事務所には、広島家庭裁判所の現役の非常勤裁判官(家事調停官)を務める弁護士が在籍しております。調停の現場で、こうした「使途不明金」や「隠し財産」の疑いが、いかに家族の絆を壊し、解決を困難にするかを日々目の当たりにしています。

3 弁護士が推奨する「広島の資産家のための」生前対策

 デジタル資産のリスクを回避する唯一かつ最善の方法は、「生前の準備」に尽きます。ご本人が元気なうちにしかできない対策があります。ここでは、法的な効力を持たせた確実な対策をご紹介します。

3-1 資産目録の作成と「デジタル遺品」の整理

(1)ID・パスワードを安全かつ見つかる場所に保管する

 まずは、ご自身のデジタル資産の「棚卸し」から始めましょう。利用している銀行名(ネット支店含む)、証券会社名、暗号資産取引所、サブスクリプション等をリストアップし、紙の「財産目録」として残すことが第一歩です。 ただし、パスワードをそのまま紙に書いて机の上に置いておくのはセキュリティ上危険です。広島の銀行の貸金庫を利用したり、信頼できる専門家に預けたりするなど、「家族が見つけられる場所」かつ「安全な場所」に保管する方法が重要です。

(2)不要なネット資産の「断捨離」

 また、この機会に「終活」の一環として、使っていないクレジットカードや、少額しか入っていない休眠口座、不要なサブスクリプションを解約する「デジタル断捨離」をお勧めします。遺される家族の手続き負担を減らすことは、立派な相続対策です。

3-2 法的効力を持たせる「遺言書」への記載

(1)デジタル資産の承継者と権限を明確にする

 財産目録を作っただけでは、法的な強制力はありません。「誰にどのデジタル資産を継がせるか」を明確にするためには、遺言書の作成が必須です。 特にデジタル資産は、通常の預貯金以上に手続きが複雑です。遺言書の中で、「〇〇銀行のネット口座にある預金は長男に相続させる」と指定するだけでなく、その手続きをスムーズに行うための権限(アカウントの解約権限等)についても触れておく必要があります。

(2)裁判官・公証人経験に基づく強固な遺言作成

 当事務所には、裁判官を35年間、公証人を8年間勤めたベテラン弁護士が在籍しています。公証人とは、まさに公正証書遺言を作成するプロフェッショナルです。 「どのような文言で遺言を残せば、金融機関やデジタル業者がスムーズに手続きに応じてくれるか」「法的に不備のない遺言はどうあるべきか」という実務の勘所を熟知しています。デジタル資産のような新しい形態の財産を扱う場合でも、長年の経験に基づく法的思考により、紛争を未然に防ぐ強固な遺言書の作成をサポートいたします。

3-3 「民事信託(家族信託)」で認知症リスクに備える

(1)デジタル資産管理を家族に託す契約

 さらに進んだ対策として、「民事信託(家族信託)」の活用も視野に入ります。例えば、暗号資産やネット証券の運用をご自身が認知症等で判断能力を喪失した後も継続したい、あるいは凍結させずに管理したい場合、信頼できる家族に管理権限を託す契約を結んでおく方法です。

(2)広島における信託実務の第一人者によるサポート

 前述の元公証人の弁護士は、公証人在職中に数多くの信託契約公正証書を作成しており、広島における信託実務の第一人者とも言える存在です。デジタル資産と信託を組み合わせた高度な資産承継スキームについても、安心してご相談いただけます。

4 すでに相続が発生している場合の対処法(広島の相続人の皆様へ)

 もし、対策をする前に相続が発生してしまった場合でも、諦めるのは早計です。残された手掛かりからデジタル資産を発見し、保全するための調査手法があります。

4-1 デジタル遺産を発見するための調査手法

(1)デバイスと通知からの推認

 まずは、故人のスマートフォンやパソコン、郵便物を徹底的に確認してください。「【重要】〇〇銀行」「取引報告書」などの件名でメール検索をかけたり、ブラウザのお気に入りに金融機関がないか確認したりします。

(2)入出金履歴から「見えない口座」を特定する

 通帳やキャッシュカードがあるメイン口座の動きを見て、不明な振替(〇〇ショウケン、〇〇コイン等)がないかチェックすることも重要です。また、ネット専業銀行でも、年に一度程度は「重要なお知らせ」が郵便で届くことがあります。

4-2 手続きが困難な場合の専門家連携

(1) 弁護士照会による資産の洗い出し

 自力での調査に限界を感じた場合は、弁護士の介入が効果的です。弁護士は「弁護士会照会(23条照会)」という法的な調査権限を持っており、金融機関に対して故人の取引履歴や残高の開示を求めることで、隠れた口座を洗い出せる可能性があります。

(2)不動産手続きとのワンストップ対応

 また、デジタル資産だけでなく、広島市内の不動産や、県外の投資用不動産が遺産に含まれている場合も多々あります。 当事務所は、全国規模の大手司法書士法人「みつ葉グループ」の広島拠点と同一事務所内で連携運営しており、不動産登記の実務にも即座に対応可能です。デジタル資産の解約と、不動産の名義変更をワンストップで並行して進められるため、手続きのスピードが格段に上がります。

5 広島でデジタル遺産・富裕層の相続を当事務所に依頼するメリット

 デジタル遺産の相続は、ITの知識だけでなく、法律、税務、そして不動産など、多角的な専門知識が求められる総力戦です。当事務所が、広島の資産家・経営者の皆様に選ばれている理由をご説明します。

5-1 「裁判官・公証人の視点」と「現場の交渉力」の融合

(1)法の番人としての重厚な知識

 相続は、ただ手続きをすれば良いものではありません。「親族間で揉めないか」「税務署に指摘されないか」という深い洞察が必要です。当事務所では、元裁判官・元公証人という「法の番人」としての重厚な知識と経験を活かし、法的安定性の高い解決策を提案します。

(2)紛争現場で培った交渉力

 それに加え、遺産分割や株式争奪などの紛争現場で戦ってきた弁護士の「交渉力」を融合させ、依頼者様の利益を最大化します。

5-3 広島の専門家ネットワークによる包括的サポート

(1) 税理士連携による税務調査対策

 相続税の問題であれば連携する資産税専門の税理士とタッグを組み、税務調査リスクまで見据えたサポートを行います。

(2)複雑な資産(収益不動産・自社株)への対応力

 特に、賃貸アパートなどの収益不動産や、同族会社の株式(自社株)が絡む相続においては、評価額の算定や分割方法が極めて難解になりますが、当事務所には親族経営企業の事業承継や、収益不動産に関する紛争解決の実績が豊富にあります。 デジタル資産という「新しい課題」と、不動産・自社株という「伝統的な課題」。この両方を、広島という地域に根差したネットワークで解決できるのが、当事務所の最大の強みです。

6 よくあるご質問(FAQ):デジタル遺産相続の疑問

 広島の皆様からよくいただく、デジタル遺産に関する具体的なご質問にお答えします。

Q1. スマホのロックが解除できません。中身を見ないと相続手続きはできませんか?

 スマートフォンのロック解除がどうしてもできない場合でも、相続手続き自体は可能です。重要なのは「スマホの中身(写真等)」ではなく、「金融機関との取引事実」です。郵便物やメインバンクの通帳の履歴から取引先金融機関を特定できれば、スマホを開かずに直接金融機関へ照会をかけることができます。ただし、暗号資産のウォレット等、スマホ内にしか鍵がない場合は専門的な技術調査が必要になることもありますので、弁護士へご相談ください。

Q2. ネット証券のIDとパスワードが分かりません。どうすれば良いですか?

 IDやパスワードが不明でも、相続人であることを証明する書類(戸籍謄本など)を証券会社に提出すれば、口座の有無の照会や、残高証明書の発行依頼が可能です。ネット証券であっても、相続手続きのための書式は郵送等で対応してくれます。まずは「どこの証券会社を使っていたか」を特定することが先決です。

Q3. 仮想通貨(暗号資産)にも相続税はかかりますか?

 はい、かかります。亡くなった日の時価(評価額)で日本円に換算し、相続税の課税対象となります。暗号資産は価格変動が激しいため、評価額の算定や納税資金の確保(現金化のタイミング)が非常に重要です。申告漏れが多い分野ですので、税理士・弁護士と連携して慎重に進める必要があります。

Q4. 広島市外や海外に住んでいる相続人がいて、話し合いが進みません。

 デジタル遺産に限らず、遠方の相続人との遺産分割協議は難航しがちです。当事務所では、Web会議システム等も活用しつつ、弁護士が代理人として間に入り、感情的な対立を避けながら法的に公平な分割案を提示・交渉することが可能です。

まとめ:広島でデジタル資産の相続・遺言にお悩みの方はご相談ください

 デジタル化が進む現代において、資産家の方々にとって「デジタル遺産対策」は、避けては通れないリスクマネジメントです。 「見えない資産」は見えないからこそ、放置すればするほど、ご家族に大きな負担とリスクを背負わせることになります。

 しかし、ご安心ください。生前に適切な準備をしておけば、デジタル資産は次世代への有益な贈り物となります。また、相続発生後であっても、専門家の力を借りれば、資産を取り戻せる可能性は十分にあります。

 「自分の場合はどのような対策が必要か」 「亡くなった父のパソコンに資産が入っているかもしれない」

 そのようにお感じの方は、ぜひ一度、当事務所の無料相談をご利用ください。広島市および近郊エリアの皆様からのご相談を、経験豊富な弁護士チームがお待ちしております。

遺産分割協議において相続不動産の評価額はいくらにすればよいのか?

2025-10-21

「親から相続した実家、遺産分割での評価額はいくらにすればいいの?」「兄弟間で評価額の意見が合わなくて困っている…」

大切なご家族が亡くなられた悲しみの中、不動産の相続問題で頭を悩ませていらっしゃる方は少なくありません。特に不動産の評価額は、相続人それぞれの利害が絡むため、深刻な対立(いわゆる「争族」)に発展しやすい問題です

この記事では、相続問題に精通した弁護士が、遺産分割における不動産評価の基本的な考え方から、ご自身の状況に応じた適切な主張、そしてお困りの際の対処法まで分かりやすく解説します。

1 なぜ相続不動産の評価額でもめてしまうのか?

遺産分割協議において相続不動産の分け方は大きく分けて、

現物分割(相続人Aさんは相続不動産のうち不動産Aを取得し、相続人Bには不動産Bを取得するといった遺産分割を現物で分割する方法)、

代償分割(特定の相続人が相続不動産を取得し、他の相続人には代償金を支払う方法)、

換価分割(相続不動産を売却して現金化し、その現金を相続人間で分ける方法)

があります。

 このうち③換価分割については売却して得られる現金を相続人間で分けるだけなので、相続不動産の評価でもめることが基本的にありません

 他方で、①現金分割の場合には、相続不動産の評価額を基準にして各相続人が取得する不動産や預貯金等の他の相続財産の取り分を協議するため、相続不動産の評価額がいくらなのかが問題となります。

 また、②代償分割についても相続不動産の評価額を相続人間で合意した上で、合意した評価額に基づき、相続人不動産を取得する特定の相続人が、相続不動産を取得しない相続人に対して代償金を支払うため、そもそも相続不動産の評価額をいくらで合意するか問題となります。

 具体的には、
現金分割の場合には、相続人Aは自身が取得する相続不動産Aの評価額が、相続人Bが取得する相続不動産Bと比べて低い方が、相続不動産A以外の相続財産の取り分が増えることになるため、相続人Aとしては相続不動産Aの評価額が低いと主張することになります(反対に、相続人Bとしては相続不動産Bの評価額が高いと主張することになります)。

代償分割の場合には、不動産を取得する特定の相続人としては他の相続人に支払う代償金を少なくするために相続不動産の評価額は低いと主張することになります。他方で、代償金を受け取る側の相続人としては相続不動産の評価額は高いと主張することになります。

このような相続人間の利害の対立が、「その金額は高すぎる」「安すぎる」といった感情的な争いを引き起こします。

2 相続不動産を評価する方法

遺産分割協議では、相続不動産をどのように評価するかについて法律上のルールはなく、「相続人全員の合意」によって相続不動産の評価額を決めることになります。

この際に相続不動産の合意形成の資料として用いられる相続不動産の評価方法には以下のようなものがあります。

① 固定資産税評価額に準拠する方法

固定資産税等の計算基準となる価格で、実勢価格の7割程度が目安です。 

メリット

各不動産の評価額を算定することが簡潔であるという点です。

デメリット

3年に1度しか評価替えがされないため、実勢価格(実際に市場で売買されると想定される価格)や公示地価等と差が生じやすい点などです。

② 相続税評価額(路線価)に準拠する方法

相続税や贈与税の計算に用いる価格で、一般的に実勢価格の8割程度とされています。

土地については「路線価方式」(路線につけられた1㎡あたりの評価額(路線価)に土地の面積・形状に応じた調整計算をして算出する方法)又は「倍率方式」(固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて算定する方法)により算定されます。他方で、建物については固定資産税評価額をそのまま使用します。

メリット

固定資産税評価額と同様に、評価額を算定することが基本的に簡潔であるという点です。また、毎年評価替えがされているため、固定資産税評価と比べて地価変動をより反映しているとされています。

デメリット

としては土地の形状等によっては調整して計算する必要がある点です。

③ 公示地価に準拠する方法

国土交通省が正常価格(自由公開市場で取引が行われるとした場合に通常成立すると認められる価格)として毎年公示する価格です。

メリット

比較的実勢価格に近いとされている点です。

デメリット

対象となる標準地・基準地が少なく、公示地価に基づいて遺産分割協議で対象となっている相続土地の評価を算定することが難しい場合がある点です。

④ 基準地標準価格(都道府県地価調査標準価格)に準拠する方法

  都道府県が、毎年特定の基準地について公表している価格です。

  メリットとデメリットは基本的に公示地価と共通です。

④ 不動産業者の査定

各相続人が、不動産業者に相続不動産に関する査定書の作成を依頼し、この査定書に基づき相続不動産の評価額を算定する方法です。

各相続人は取得した査定書の評価額が異なる場合には、複数の査定書の中間値や平均値に基づき評価額を決める方法などがあります。

メリット

コストを抑えつつ専門家の意見を反映した評価額を算定できる点です。
 デメリットは査定書の作成者の責任が問われるものでないため、査定者、査定書を依頼した相続人の恣意が入り込む余地が低くはない点です。また、不動産業者に対して依頼する手間もかかります。

なお、遺産分割協議もし合意できずに家庭裁判所の遺産分割調停や審判に移行した場合、裁判所は原則として「遺産分割時の時価(実勢価格)」を基準に判断します。不動産鑑定士による鑑定や各相続人が提出した不動産業者の査定書などに基づき決定していきます。

3 相続不動産の額が低いと主張したほうが良い場合

 相続不動産の額が低いと主張したほうが良い場合としては、自身が被相続人の方と同居していた相続不動産をそのまま相続したいなどの希望があり、①現物分割により自身が相続不動産を取得することを考えている場合や②代償分割により自身が相続不動産を取得し、他の相続人に対して代償金を支払うことを考えている場合などです。

なぜなら、相続不動産の評価額が他の相続人が取得する相続不動産以外の相続財産の金額や自身が他の相続人に支払う代償金の金額に影響するためです。

遺産が「評価額X万円の相続人不動産」と「現金3000万円」のみで、相続人が兄弟2人(この場合、各相続人の法定相続分は2分の1です)で、兄が相続不動産の取得を希望している事例をもとに、相続不動産の評価額がどのように影響するか説明いたします。

相続不動産の評価額が5000万円の場合には、各相続人の取り分は4000万円(相続財産8000万円×法定相続分2分の1)となります。この場合において、兄が相続不動産を取得するときには、弟は現金3000万円と取得したとしても本来の取り分より1000万円少なくなるため、兄は弟から代償金として1000万円を支払うように求められることになります。

他方で、相続不動産の評価額が2000万円の場合には、各人の取り分は2500万円(相続財産5000万円×法定相続分2分の1)となります。この場合においては、兄が相続不動産を取得したとしても、まだ500万円の取り分が残るため、弟に代償金を支払うことなく、現金500万円を得る余地があります。

相続不動産の額は低いと主張したほうが良い相続人としては、固定資産税評価額や相続税評価額により相続不動産の評価を行うように交渉することなどが考えられます。

4 相続不動産の額が高いと主張したほうが良い場合

相続不動産の額が高いと主張したほうが良い場合としては、①反対に自身が相続不動産の取得を希望しておらず、他の相続人が現物分割により相続不動産の取得を希望している場合②代償分割により自身が代償金を受け取る場合などです。

相続不動産の額は高いと主張したほうが良い相続人としては、できるだけ実勢価格に近い公示地価等により相続不動産の評価を行うように交渉するほか、不動産業者から固定資産税評価額等より高額の査定書を取得し、固定資産税評価額等は実勢価格と離れていると主張し交渉することなどが考えられます。

5 まずは弁護士にご相談ください

相続不動産の評価額については様々な算定方法があり、相続不動産の評価額について他の相続人の合意を得ることに難航することは少なくありません。

当事者間の話し合いでどうしても合意できず遺産分割協議が成立しない場合、家庭裁判所での「遺産分割調停」、それでもまとまらなければ「遺産分割審判」を行っていくことになります。 このような場合には、時間や費用がかかるばかりか、他の相続人との関係性に少なからず悪影響があります。

不動産を含む遺産分割は、専門的な知識と交渉戦略が不可欠です。

少しでも「もめそう…」と感じたら、問題が深刻化する前に、ぜひ一度、相続問題に精通した弁護士にご相談ください。

当事務所では、裁判官や公証人としての経験が豊富なベテランから若手まで、複数の弁護士が在籍しており、あなたのお悩みに寄り添いながら、親身になって丁寧に対応させていただきます。

法律用語もかみ砕いて分かりやすくご説明いたしますので、どうぞご安心ください。

まずはお気軽にお問い合わせいただき、あなたの声をお聞かせください。

身寄りのない親戚が死亡。立替えた葬儀等の費用は?残った遺産の取得(相続)をできるのか?

2025-10-21

1 はじめに

 身寄りのない親戚が亡くなり、葬儀や関連費用を立て替えた場合、その費用の精算や残された遺産の取得方法について、多くの方が疑問を抱かれることでしょう。本記事では、具体的な事例をもとに、これらの問題に対する法的な手続きや注意点を詳しく解説します。

2 参考事例の紹介

質問:先日、私の姪が亡くなりました。アパートの自室内で亡くなっているのが発見されたときには、死後1週間ほど経っていたようでした。

姪の両親は既に他界していて、兄弟もいないので相続人はいません。

私が親戚として姪の部屋の特殊清掃の手配や、火葬・葬儀などの事後手続を全て行い、費用が全部で150万円ほどかかりました。

姪の預金口座には500万円ほどありましたが、口座凍結されたので引出しはできませんでした。

私が支出した費用はどうなりますか? 姪の預金を私が相続することはできますか?

3 相続財産清算人の選任申立

 人がお亡くなりになった場合、多くの場合、相続人が死後の手続きを行います。そして、多くの場合、死後の手続きに要した費用は、相続人間の遺産分割協議において、必要経費として遺産から支出されることになります。

 ところが、相続人が誰もいない場合、相続人でない人が、やむを得ず、亡くなった方の死後の諸手続きを行うことがあります。その諸手続きに要した費用を、亡くなった方の遺産で支払ってもらうためには、まず、その遺産を管理して清算処理をする人である相続財産清算人を家庭裁判所に選任するように申立をすることが必要になります。

 相続財産清算人は、亡くなられた方の財産を管理して、その財産を処分したり、債権者に対して債務の弁済を行ったりする役割を担います。

【相続財産清算人の選任申立の手続き】

●申立人:

利害関係人(葬儀費用を立て替えた人など)や検察官が申し立てることができます。

●申立先:

亡くなられた方(被相続人)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所。

●必要書類:

⑴申立書

⑵被相続人の出生時から死亡時までの戸籍謄本類

⑶被相続人の住民票除票または戸籍附票

⑷財産関係資料(預貯金の通帳、不動産全部事項証明書、株や債券といった有価証券に関する資料など)

⑸被相続人との利害関係を示す資料(例えば、被相続人と同居していたことがわかる住民票、健康保険証、看護記録や親族関係を示す戸籍謄本類、被相続人が書き残したメモ、被相続人が支払うべき費用を立て替え払いしたことを示す書類など)

●費用:

⑴収入印紙代(800円程度)

⑵予納郵便切手代(申立先の家庭裁判所によって、それぞれ異なるので確認が必要です)

⑶官報公告費用(約4000~5000円程度)

⑷予納金(選任された相続財産清算人が行うべき活動の内容に応じて、家庭裁判所が決定します。少なくとも10万円から20万円は必要で、活動内容によって、それ以上の金額の予納が必要となります)

4 葬儀費用等の請求手続

 相続財産清算人が選任された後、本来、亡くなられた方が支払うべきであった費用などを支払った人は、それらの費用を被相続人の財産(遺産)から優先的に支払うように、相続財産清算人に対して請求することになります。

【手続きの流れ】

⑴費用の証明:立て替えた費用の領収書や明細書を相続財産管理人に提出します。

⑵相続財産清算人の判断:相続財産清算人は、提出された資料をもとに、費用の妥当性や必要性を判断します。

⑶家庭裁判所の許可:相続財産清算人は、家庭裁判所と協議し、支出の範囲や金額が合理的かどうかを検討します。家庭裁判所が許可した範囲内で、費用を支出した人に対して、遺産からの支払いが行われます。

 注意点として、支出したのが葬儀費用の場合、葬儀の規模や内容、費用の額が社会通念上適切であることが求められます。過度に高額な葬儀費用や、被相続人の意思に反するような支出は、認められない可能性があります。

5 残余財産分与請求(特別縁故者)

 上記の費用支払の請求と併せて、特別縁故者として残余財産の分与を請求することも考えられます。

 特別縁故者とは、亡くなった人(被相続人)と特別に親しい関係にあったことを理由に、相続人ではないにもかかわらず、遺産の全部又は一部を取得できることになる人をいいます。

 特別縁故者として認められる可能性があるのは、次のような人です。

⑴被相続人と生計を同じくしていた人

 内縁関係にあった人や、事実上の養子・養親などとして、被相続人と同居して生計を同じくしていた人は、特別縁故者として認められる可能性があります。

⑵被相続人の療養看護に努めた人

 被相続人の生前に、ずっと親身になって世話や介護を行っていた人は、特別縁故者として認められる可能性があります。自宅療養の場合だけでなく、施設療養の場合も、認められる場合はあります。もっとも、介護や看護を仕事として行っていた人は、原則として特別縁故者とは認められません。

⑶被相続人と特別密接な関係にあった人

 その他にも、亡くなられた方(被相続人)と特別に密接な関係にあった人は、特別縁故者と認められる可能性があります。

 特別に密接な関係があったと言えるためには、通常の交流があった程度では足りません。上記⑴の生計を同一にしていた場合や、上記⑵の療養看護の場合と同程度に密接な交流があり、その方に相続財産を分与することが被相続人の意思に合致するとみられる場合といえるか、が重要になります。

 例えば、生前に被相続人と特に親しく交流していた友人知人の方や、遺言書こそないものの、生前に被相続人が「財産を譲りたい」と言っていたことが証明できるような相手の方、被相続人から生前に継続的に金銭援助を受けていた人などが考えられます。

【手続きの流れ】

 特別縁故者であると主張する人が、遺産からの財産分与を求める申立をするのは、「相続人不存在の確定後3カ月以内」に行わねばなりません。その期限を過ぎると遺産からの財産分与を受けられなくなるので、注意が必要です。

●必要書類:

⑴申立書

⑵申立人の住民票または戸籍附票

⑶被相続人の戸籍(除籍)謄本

●費用:

収入印紙 800円

6 生前にできる対策(遺言書等の作成)

 法定相続人がいない方が亡くなられた場合、生前にその方の面倒を見ていた方や、お亡くなりになった後に葬儀を行った方などが、その方の遺産から立て替えた費用の支出などを得ようとすると、上述したような手続きを行わなければならず、大変、面倒です。また、せっかく手続きをしても、家庭裁判所に認めてもらえないリスクもあります。

 そのような手間やリスクを避けるためには、生前に、遺言書や死後事務委任契約書を作成しておいてもらうという対策をしておくことができればベストです。

 具体的には、生前にお世話になっていた方に対して、財産を残す(遺贈する)といった内容の遺言書を作成してもらい、かつ、そのお世話になった方を遺言執行者として指名しておくこと、葬儀の方法などを指定して、その葬儀の主催を委ねる死後事務委任委任契約書を作成すること、そして遺言書や死後事務委任契約書を公正証書で作成しておくといった準備ができていると、お亡くなりになったあとの手続きがスムーズになります。

7 特別縁故者の生前対策、死後の各種申立は、千瑞穂法律事務所にご相談下さい

 千瑞穂法律事務所には、長年にわたり裁判官や公証人を務めた弁護士や、家庭裁判所の現役の非常勤裁判官として多くの遺産分割問題に取り組んでいる弁護士が在籍しています。そうした経験と実績に基づいて、特別縁故者の生前対策、死後の各種申立てについて、適切な法的助言を行うことができます。

 特別縁故者の生前対策、死後の各種申立ての問題でお困りごとがあれば、まずはお気軽に、千瑞穂法律事務所にご相談下さい。

生命保険の死亡受取金は、相続(相続税、遺産分割)の対象に含まれますか?

2025-10-21

◆「税法」と「民法」で異なる取り扱い

生命保険は、相続税(税法)での取り扱いと、遺産分割(民法)での取り扱いが異なるので注意が必要です。

◆「税法」での取り扱い

生命保険は、契約者(保険料負担者)・被保険者、死亡保険金の受取人が、それぞれ誰なのか、その組み合わせによって税金の種類が変わってきます。

相続の場面で取り扱われる生命保険のほとんどは、契約者(保険料負担者)と被保険者がどちらも親で、受取人が子供になっています。このような場合、課される税金の種類は、相続税になります。

ところで、相続税の対象となるのは、原則として遺産、すなわち死亡時に被相続人の名義であった財産です。死亡保険金は受取人固有の権利だと考えられているため、原則通りであれば、遺産には含まれず、相続税の対象にはならないと言えそうです。

しかし実際には、税法上、死亡保険金は「みなし相続財産」とされており、相続税の対象になります。ですから、生命保険金についても相続税は考えなければなりません。

もっとも、生命保険金には「500万円✕法定相続人の数」の相続税の非課税枠があり、その範囲内については相続税がかかりません。

◆「民法」での取り扱い

他方、民法においては、死亡保険金を「みなし相続財産」とするというような例外的な定めはありません。したがって、原則どおり、死亡保険金は受取人固有の権利であって、遺産分割の対象に含まれません。

遺産分割の話し合いの際に、死亡保険金の受取人が「自分には死亡保険金があるから、その分を考慮して、遺産分割の金額を調整しよう」と言う場合は、そのようにすることはできますが、そうでない場合、死亡保険金の額を遺産分割の対象に含めて計算するということはできません。

◆例外的に遺産分割の対象になる場合

このように民法においては、生命保険金は原則として遺産分割の対象にならないのですが、例外的に、遺産分割の対象となる場合があります。

たとえば、親が亡くなったときの財産(=遺産)が4000万円だったのに、特定の相続人に対して別途、死亡時に受け取れる生命保険金が3000万円あった、というような場合です。

このような場合、相続人同士の間で、取得できる財産額に大きな差が生じてしまい、不公平な結果となってしまいます。

そこで、相続人同士の間で不公平となる程度が著しい場合には、生命保険金を「特別受益」として取り扱い、これを「みなし相続財産」として計算上、遺産に組戻して計算して、遺産分割の対象とするという裁判所の判断が出るケースがあります。

具体的にどの程度の不公平さの場合、裁判所がそのような判断をするか、というのは、ケース・バイ・ケースとなりますが、裁判例をみると、生命保険金が遺産総額の6割を超えてくると、裁判所はそのような判断を行う傾向があるようです。

◆まずは千瑞穂法律事務所にご相談を

 このように生命保険金をどう取り扱うかは、税法と民法で異なりますし、また民法の遺産分割の場面でも、原則と例外があって、その区別は難しい面があります。そこで、相続の場面で生命保険金をどう考えればよいかは、生命保険金と相続の関係に詳しい弁護士に相談した方が良いでしょう。

 千瑞穂法律事務所には、生命保険金と相続の関係に詳しい弁護士が在籍しています。ですので、生命保険金と相続の関係で分からないことや困ったことがある場合には、まずは千瑞穂法律事務所にご相談下さい。

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