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囲い込まれた親を救い出したい! 問題解決のための法的対応策とは?
1 親の囲い込みはなぜ起こる?
最近、「親の囲い込み」と呼ばれる事態が増えています。
「親の囲い込み」とは、親族(多くの場合は子どもの一人)が、高齢の親を囲い込んでしまい、他の親族(他の子ども)に会わせないようにしてしまう、という事態です。「高齢の親に会いたいのに、親に会えない、親に会わせてもらえない」といった相談が増えています。
では、なぜ、このような「親の囲い込み」が生じるのでしょうか?
親が高齢になると、身体が不自由になったり、認知能力が低下してきたりするため、自立した生活が難しくなります。親が自立した生活が困難になった場合、子どもなどの親族による介護が必要になったりします。親の介護はとても大変なので、以前は、子どもたち同士で、介護が必要な親を「押し付け合う事態」が問題になっていました。
ところが、最近では、前述のように「親の囲い込み」が問題になっています。
「親の囲い込み」が生じる理由は、事案ごとに様々ですが、親の財産を巡る子ども同士の争いが背景にある場合が少なくありません。
「親の囲い込み」をする側の立場の方の主張として、よく聞くのが「面倒な親の介護をずっと続けてきたのに、将来、親が亡くなったときの相続の場面で、親の面倒を全然みなかった他の兄弟たちと、遺産分配で全く同じ扱いをうけるのは、不公平だ」というものがあります。こうした不満を持つ方が、親の生前に、「何らかの形で親の財産を譲り受けておこう」とか、「自分に多く遺産を渡すような内容の遺言書を親に書いてもらおう」と思い、そのために「親の囲い込み」をする、というわけです。
2 「囲い込まれた」親の意思
「親の囲い込み」が生じた場合、囲い込んだ子どもに対して、他の兄弟たちが「親に会わせてほしい」と言っても、囲い込んだ側の子どもは、なかなか親に会わせてくれません。そのときに、会わせない理由として「親自身が会いたくないと言っている」と説明していることも、少なくありません。
確かに、本当に「親自身が会いたくないと言っている」という場合も、ありえます。ただ、多くの場合、親は、自分の子ども達には会いたいと思うものです。ですから、「親自身が会いたくないと言っている」という説明は、囲い込んだ側の子どもが親の意思に反する説明をしている可能性もあります。また、親自身が実際に「会いたくない」と言っているという場合でも注意が必要です。というのも、囲い込まれる側の親は、高齢になり、すでに自分一人では生活が維持できないため、自分の面倒を見てくれる人に頼らなければ生活できない状況になっています。そのため、自分を「囲い込んでいる」子どもの考えを無下にはできず、半ば、その言いなりになってしまう、ということもあるからです。
3 親の囲い込みの態様
では、「親の囲い込み」は、どのように行われているのでしょうか?
まず、囲い込みをしている子どもが、親と同居しているケースがあります。この場合、囲い込んでいる子どもが「(親と同居している)自分の家に入るな」「親も会いたくないと言っている」などと言って、他の兄弟たちが家に入ることを拒むことで、「親の囲い込み」を実現します。
次に、親が病院に入院しているケースや介護施設に入居しているケースがあります。このような場合、病院や介護施設は「キーパーソン」として定められた人の意向に沿って行動するところ、囲い込みをする側の子どもが、この「キーパーソン」になり、その立場から、病院や介護施設に対して「他の兄弟に会わせるな」「親も会いたくないと言っている」などと指示を出すことで、「親の囲い込み」を実現します。
4 親の囲い込みを解決する方法
「親の囲い込み」を解決するには、どうしたら良いでしょうか? 法的な手続きとして考えられる方法は、次のとおりです。
(1)法定後見人をつける方法(=×難しい)
「親の囲い込み」が生じている場合、その親の認知能力(判断能力)が低下していることがあります。認知能力(判断能力)が低下している人に対して、その権利や財産を保護するために用意されている制度の1つが、法定後見制度です。
法定後見制度は、本人の認知能力(判断能力)の低下度合いに応じて、家庭裁判所が、後見人、保佐人、補助人、のいずれかを選任して、本人に代わって法的手続をしたり(代理権)、本人の判断を補助したり(同意権)する、というものです。
法定後見人の選任をすることができれば、法定後見人が家庭裁判所の監督の下で、適切な身上監護や財産管理を期待できます。
もっとも、実際には、「親の囲い込み」が既に生じている状態から、法定後見人を家庭裁判所に選任してもらうのは、非常に困難です。
家庭裁判所に対して法定後見人を選任するように求める場合、必要な提出資料の中に精神科医による診断書があります。家庭裁判所の裁判官が、本人に対して法定後見制度を適用することが必要であるか否か、必要であるとして、後見人、保佐人、補助人、いずれが適切かを判断するためには、本人の認知能力(判断能力)がどの程度であるのかについて記載された精神科医による診断書が、必要不可欠といえます。
精神科医は、本人に対して問診をしたり、様々な検査をしたりして、診断書を作成します。ですから、精神科医は本人と会う必要があります。ところが、「親の囲い込み」がなされている場合、囲い込みを行っている側は、親に精神科医を会わせることもしません。その結果、精神科医による診断書を用意できなくなるのです。
精神科医による診断書がないまま、家庭裁判所に法定後見人の選任を申し立てても、申し立てが却下される可能性が高いです。
こうした訳で、「親の囲い込み」を解決するために、法定後見人の選任をするという方法は、難しいと言わざるを得ません。
(2)家庭裁判所の親族間紛争調整調停(=×難しい)
「親の囲い込み」の問題は、親子間・兄弟間の問題ですので、親族間の紛争です。親族間の紛争を解決するための制度としては、家庭裁判所の親族間紛争調整調停というものがあります。これは、紛争の当事者が、家庭裁判所に集まって、中立の第三者である調停委員を介して話し合いを行って、紛争の解決を図るというものです。
親族間の紛争は、当事者同士で話し合って解決するのが望ましいため、このような制度が設けられているのですが、実際のところ、「親の囲い込み」の問題を親族間紛争調整調停で解決するのは困難です。
というのも、そもそも調停制度は、裁判所を活用するものではありますが、基本的に当事者が任意に話し合いをすることを前提にしています。ですから、調停が行われる日に、当事者が参加するかどうかも、その人に任されており、参加する義務もなければ、参加しなかった場合の罰則もありません。ですから、「親の囲い込み」をした側の当事者が、誰も調停に参加しないというケースがほとんどです。このような場合、話し合いになりませんので、調停手続は不成立で終了になってしまいます。
また、仮に「親の囲い込み」をした側の当事者が、調停に参加したとしても、調停参加者の認識や意見がまったく噛み合わないことも多いです。調停手続は、当事者が話し合って合意に達することで問題を解決する手続きですので、話し合っても合意に達しないときには、調停手続は不成立で終了になってしまいます。
こうした訳で、「親の囲い込み」を解決するために、親族間紛争調整調停を行う方法も、難しいと言わざるを得ません。
(3)面会妨害禁止の仮処分(=△有効な場合がある)
「親の囲い込み」が生じている場合、排除されている側の子どもは、親に会いたくても会えません。この状態は、「親に会う権利」ないし「親に会うという法的に保護された利益」が侵害されていると考えることもできます。
そのような権利侵害ないし要保護利益侵害をしないことを求める訴訟を行うという方法も考えられます。もっとも、通常の訴訟手続では、多くの場合、結論が出るまでに1年以上の期間がかかってしまいます。囲い込みをされている親は高齢であることが多いところ、訴訟に時間をかけていては、親が亡くなってしまうかもしれません。
このように、訴訟での救済を求めていたのでは、侵害された権利ないし要保護利益の保護が実現できないような場合に、まずは仮の保護を実現させるための制度として「仮処分」という制度が用意されています。「仮処分」の制度は、法的な確定的な判断は後日行う訴訟で下してもらうとして、それまでの間、迅速に、取り急ぎの判断を下して、権利や利益を仮に保護しようというものです。
この制度を活用して、「親との面会を妨害することを禁止する」という仮処分を下すよう裁判所に求める、という方法が考えられます。
実際、この方法により、裁判所が「親との面会を妨害することを禁止する」という仮処分を下した事例があります(横浜地裁平成30年7月20日)。
もっとも、この事例では、仮処分の申し立て前に、上述した「親族間紛争調整調停の申立て」や、「成年後見人選任の申立て」など、様々な方法を行ったにもかかわらず、親と会うことができなかった、という事情があったうえでの、裁判所の判断でした。
ですから、この先行事例に基づけば、面会妨害禁止の仮処分を裁判所に下してもらうためには、事前に、それ以外の方法を尽くしていることが必要になると考えられます。
(4)損害賠償請求の訴訟(=△有効な場合がある)
前述したとおり、「親の囲い込み」が生じている場合、「親に会う権利」ないし「親に会うという法的に保護された利益」が侵害されていると考えることもできます。
そこで、「親の囲い込み」を不法行為として捉え、それによって権利ないし利益を侵害されたとして、それによって生じた損害の賠償を求める訴訟を提起する、という方法も考えられます。
実際、東京地裁は「親と面会交流したいという子の素朴な感情や、面会交流の利益は法的保護に値する」とし、合理的な理由なく面会を拒む行為は不法行為であるとして、面会を妨害した子供に対する損害賠償請求を認める判決を下しています(東京地裁令和元年11月22日判決)。
ただ、訴訟手続は判決を得るまでに通常は1年以上の時間がかかること、また、損害賠償請求が認められたからといって、直ちに親と会えるようになるわけではないことには注意が必要です。「親の囲い込み」が不法行為であると裁判所に認定されることにより、例えば「キーパーソン」の指示に従っていた病院や介護施設が、不法行為者である「キーパーソン」の指示に従わなくなり、親に会わせてくれるようになる、といった間接的な効果を期待することになります。
5 親の囲い込みをされそうなときには何をすべき?
「親の囲い込み」が発生してしまった場合、これを解決するのは多くの困難を伴います。そこで、「親の囲い込み」が生じないようにすることが一番なのですが、もし「親の囲い込み」をされそうになったときは、何をすべきでしょうか?
まず考えられるのは、親との信頼関係を維持し、より高めていくことです。親と多くあって、いろいろな話をして、親の考え方や意向を十分に踏まえて行動するようにしておけば、他の兄弟による「親の囲い込み」の芽を摘むことができる可能性があります。
次に考えられるのは、「親の囲い込み」をしそうな兄弟と、よく話し合うことが考えられます。もし、事前の話し合いを通じて、「親の囲い込み」を行う動機がなくなれば、「親の囲い込み」を未然に防ぐことが可能になります。
また、親がすでに病院や介護施設にいる場合には、他の兄弟ではなく自分自身が「キーパーソン」になるという方法もありえます。この場合は、もちろん、自分自身が囲い込む側になるということではなく、他の兄弟も自由に会えるようにしつつ、他の兄弟による親の連れ去りは防止する、という形になります。
法的な対応として考えられるのは、もし親の認知能力(判断能力)が既に低下しているのであれば、早い段階から法定後見制度を利用しておくことです。法定後見制度を利用して、親に、後見人、保佐人、補助人、のいずれかが付いている場合、他の兄弟が「親の囲い込み」を行おうとする心理的な抑止力になります。
6 囲い込まれて不利な遺言書を書かれるなど相続トラブルになったら?
「親の囲い込み」によって親と会えないまま、親が亡くなってしまった後、遺産分割の場面で、親を囲い込んだ側の兄弟から親の遺言書があるという話が出てくることがあります。そのような場合、その遺言書には親を囲い込んだ側の兄弟に有利な内容(=自分にとっては不利な内容)が書かれている場合が多いです。このような場合には、親に会えなかった子どもたちは遺言書に納得せずに、相続トラブルになることが少なくありません。このような場合、どうすればよいでしょうか?
もし、その遺言書が、親の本心から書かれているものであるならば、たとえその内容に不満があっても、法的には有効であると考えざるを得ません。したがって、そのような場合には、もし遺留分の侵害があれば遺留分侵害額請求をするしかない、ということになります。
もっとも、「親の囲い込み」が生じている事案では、遺言書が作成された時点で、すでに親の認知能力(判断能力)が相当程度、低下していたというケースも少なくありません。そのような場合、遺言書に記載された内容を親自身がはっきりと理解できていなかった可能性があります。
そこで、遺言書が作成された時点での親の認知能力(判断能力)を判断するための資料(医療カルテ、介護記録、認知能力診断など)を取り寄せて検討することになります。そして、それらの資料に基づいて遺言無効訴訟を提起し、裁判所に認めてもらうことができたら、その遺言書を法的に無効にすることができます。
7 「親の囲い込み」にまつわるお悩みは弁護士に相談を
これまで述べた通り「親の囲い込み」の問題を解決するためには、多くの困難が伴います。また「親の囲い込み」に関係する相続トラブルも多発しています。
この点、千瑞穂法律事務所には、長年にわたり裁判官や公証人を務めた弁護士や、家庭裁判所の現役の非常勤裁判官として多くの親族間トラブルに取り組んでいる弁護士が在籍しています。
そうした経験と実績に基づいて、千瑞穂法律事務所では、「親の囲い込み」にまつわる様々な問題や相談に対して、適切な法的助言を行うことができます。
「親の囲い込み」の問題や、それにまつわる相続トラブルについてお困りごとがあれば、まずはお気軽に、千瑞穂法律事務所にご相談下さい。

特別受益と寄与分とは?弁護士が特別受益・寄与分で損をしないための3Stepを解説
大切な方が亡くなる際には、相続時のことをあまり考えていない方も多いのではないかと思われます。もっとも、あなた1人が被相続人の方の看病をし、それなりにお金をかけたという場合、相続される額が他の相続人と同じだとすれば、不満に思われる方が多いのではないのでしょうか。
本記事では、そのような不満など相続時に生じることが多い不満、その不満を是正する制度について解説し、弁護士が認められるケースと請求方法をご説明いたします。
遺産分割で生じる不満
遺産分割の際の不満とはどのようなものなのでしょうか。よくある例をご紹介いたします。
(1) 「あの子だけずるい!」生前の援助が招く不公平
あなたのお父様が亡くなる際、相続財産が2000万円あり、相続人はあなたと兄の2人だけであったとします。もっとも、亡くなる直前、あなたのお父様がお兄様に対して生計の資本として1000万円を譲渡していたという事情が明らかになったとしましょう。
この際、お父様が亡くなった時点では相続財産が2000万円しかなかったのであるから、相続財産が原則通りに分配されると、あなたは相続財産として1000万円しか受け取ることができないということになってしまいそうです。これに対し、お兄様は亡くなる直前に譲渡された分も含めて2000万円を受け取ることになります。この際、あなたはお兄様に対し、「あの子だけずるい!」と思うことでしょう。
(2) 「私が面倒を見たのに!」生前の援助が招く不公平
上記と同様にあなたのお父様が亡くなる際、相続財産が2000万円であり、相続財産はあなたとお兄様の2人だけであったとします。そして、あなたのお父様は生前病院に入院しており、あなたはお父様が入院してから亡くなるまで500万円の支払いをしていたとしましょう。
この際、原則通りに相続を分配されると、あなたは1000万円ずつお兄様と同額の相続財産を受け取ることになります。この際、あなたはお兄様に対し、「私が面倒を見たのに同じ額を受け取るなんてずるい!」と思うことでしょう。

2. 不公平を是正する制度①(特別受益)
1(1)に記載した不公平(「ずるい!」と思う気持ち)を是正する制度として特別受益をご説明いたします。
(1) 特別受益とは
特別受益とは、被相続人から遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた場合に当該遺贈又は贈与を特別受益といいます(民法903条1項参照)。
そして、特別受益が存在する場合、相続開始時に被相続人が有していた財産の価格に特別受益の価格を加えたものを相続財産とみなし(このようにして計算される財産を「みなし相続財産」という。)、かかるみなし相続財産を前提に相続分を算定します(このような定め方を「特別受益の持ち戻し」といいます。)。その後、特別受益を得ている者は、上記の特別受益の持ち戻しによって計算された額から特別受益の価額を控除した残額が具体的相続分となります(その他の相続人は、上記の相続分が具体的相続分となります)。
(2) 具体的計算方法
1(1)に示した例の相続分の具体的計算方法をご説明いたします。まず、1(1)で示した事例では、あなたのお父様はお兄様に対し生計の資本として1000万円を譲渡しており、かかる1000万円が「特別受益」に該当します。
この場合、相続財産の2000万円に1000万円を加算した額である3000万円がみなし相続財産となります。そして、遺言等がない場合、それぞれ2分の1ずつ相続されることとなりますので、3000万円の2分の1、すなわち1500万円が特別受益の持ち戻しによって計算された額となります。そして、お兄様は1500万円から特別受益の額である1000万円を引いた500万円を受け取り、あなたは1500万円を受け取ることになります。
(3) 持ち戻し免除の意思表示について
以上が「特別受益」についての原則となります。もっとも、被相続人が特別受益に該当する贈与又は遺贈をする際、これらを持ち戻しによる計算をしない旨の意思表示をされている場合(これを「持ち戻し免除の意思表示」といいます。)、上記のような持ち戻しによる計算は行われなくなります(民法903条3項)ので、注意が必要です。
3. 不公平を是正する制度②(寄与分)
1(2)に記載した不公平(「ずるい!」と思う気持ち)を是正する制度として寄与分をご説明いたします。
(1) 寄与分とは
寄与分とは、相続人の中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした場合にかけた金額を言います(民法904条の2参照)。
そして、寄与分が存在する場合、相続分から寄与分に当たる金額を控除した額を相続財産とみなし(このようにして計算される財産を「みなし相続財産」という。)、かかるみなし相続財産を前提に相続分を算定します。その後、寄与分がある相続人は、みなし相続財産を前提に計算された額に寄与分を加えた額を具体的相続分として受け取ることになります(その他の相続人は上記の相続分が具体的相続分となります。)。
(2) 具体的計算方法
1(2)に示した例の相続分の具体的計算方法をご説明いたします。まず、1(2)で示した事例では、あなたはお父様が入院してから亡くなるまで500万円の支払いをしており、これは本来お父様の財産から支払われるべき額をあなたが支払ったものであり、「寄与分」に該当します。
この場合、相続財産の2000万円から500万円を控除した1500万円がみなし相続財産となります。そして、遺言等がない場合、それぞれ2分の1ずつ相続されることとなりますので、1500万円の2分の1、すなわち750万円がみなし相続財産を前提とした相続分となります。そして、あなたは500万円分の寄与分がありますので、750万円に500万円を加えた1250万を受け取り、お兄様は750万円を受け取ることとなります。
4. 特別受益・寄与分で損をしないための3Step
相続の際に生じる不公平を解消する制度についての説明は以上のとおりです。以下では、上記の特別受益・寄与分で損をしないためにあなたがとるべき行動を3Stepに分けて説明させていただきます。
(1) Step1(証拠集め)
あなたの行った支出が寄与分に当たるのではないか、また被相続人の方の支出が特別受益に当たるのではないかなどと疑問に思われた場合、これらの証拠(病院への支払いの領収書や、何月何日誰の口座に金銭を振り込んだかがわかる記録等)を残しておく必要があります。仮にあなたが、支出時点で相続時のトラブルが生じると思われないとしても、相続時点では関係が悪化し、トラブルに発展するというケースはよくあります。後の相続トラブルに備えておくという意味でも、これらの証拠は必ず残しておくべきでしょう。
(2) Step2(特別受益、寄与分該当性の判断)
Step1のとおり証拠を収集した後は、これらの支出が特別受益、寄与分に該当するかを判断する必要があります。本記事で紹介した典型例以外にも寄与分、特別受益に該当する可能性のあるものは多くありますので、判断に迷われた場合には、弁護士等の専門家の意見を聞くことが望ましいでしょう。
(3) Step3(交渉、遺産分割調停)
Step2で特別受益、寄与分に該当すると判断される場合には、そのような前提で計算した相続分を他の相続人に提示し、交渉を行います。こちらの主張に任意に応じてもらえる場合には問題は生じませんが、相手方がこちらの主張に応じてくれない場合、弁護士等の第3者を通じた交渉や遺産分割調停を行うことになります。このように紛争性の高い場合には、解決に専門的見解や法的手続きが必要となるケースが多いため、弁護士等の専門家に依頼することが望ましいでしょう。
5. 遺産の不公平に関するお悩みは当事務所にご相談ください
これまで述べてきたとおり、特別受益、寄与分の問題が生じている場合に、弁護士ができることも多くあります。当事務所では特別受益、寄与分の問題でお困りの方を全力でサポートいたします。
具体的には、特別受益、寄与分該当性の判断についてのリーガルコメントの提供、他の相続人の方との交渉、遺産分割調停の代理人として参加するなど様々なサポートを行っております。
また、千瑞穂法律事務所では、相続分野を強みとしている弁護士のほか、非常勤裁判官に任官されている弁護士や36年という長期にわたって裁判官を務めていた弁護士がおり、裁判官の視点も踏まえた解決方法の提示をすることが可能です。
特別受益、寄与分の問題で悩まれている方は、お気軽にご相談ください。

親の賃貸アパート、相続後の家賃は誰が受け取る?放置が招く「共有不動産の悲劇」と専門家による3つの解決策
広島市内やその近郊で、親御さんが大切に経営されてきた賃貸アパートや駐車場。ご家族にとっては、安定した収益をもたらす貴重な資産であり、同時に多くの思い出が詰まったかけがえのない場所でもあるでしょう。
しかし、いざ相続が始まると、真っ先にこんな疑問が頭をよぎりませんか?
「親が亡くなった後、毎月入ってくるアパートの家賃は、一体誰が受け取る権利があるのだろう?」
この素朴な疑問こそ、資産家一族が深刻な相続トラブルに陥る、まさにその入り口なのです。「家族だから大丈夫」とこの問題を放置した結果、
「兄が全ての家賃収入を独り占めし、話し合いにも応じてくれない…」
「相続人の意見がまとまらず、誰も管理しないアパートが廃墟のようになっている…」
といった、取り返しのつかない事態に発展するケースを、私たちは広島でも目にしてきました。私たちは、これを「共有不動産の悲劇」と呼んでいます。
この記事では、あなたのその最初の疑問に法律の専門家として明確な答えを提示し、放置した場合に待ち受ける「悲劇」の正体を明らかにし、そして、その全てを解決するための「専門家による3つの解決策」を具体的にお示しします。
あなたの家族と資産の未来を守るため、ぜひ最後までお付き合いください。
1 【答え】相続後の家賃は「法定相続分に応じて相続人全員で」受け取るのが法律の結論
まず、あなたの最初の疑問に、専門家として単刀直入にお答えします。
(1)最高裁判所が示したルール(判例)
相続が開始してから遺産分割の話し合いが完了するまでの間に発生した家賃収入は、「遺産」そのものではありません。法律上は「遺産から生じる果実」と呼ばれ、遺産分割協議を待つことなく、発生した瞬間に、各相続人がその法定相続分に応じて受け取る権利が確定します。
これは、最高裁判所が示した明確なルール(判例)であり、交渉や裁判における大前提となります。例えば、相続人が配偶者と子2人であれば、家賃収入を受け取る権利の割合は、配偶者が2分の1、子がそれぞれ4分の1ずつ、となります。
(2)なぜ、この単純なルールが深刻なトラブルを生むのか?
それは、「遺産分割(財産分けの話し合い)」と「家賃の分配」が、法律上、完全に別問題として扱われるからです。
多くの方は、「兄が管理している家賃収入も、遺産分割の際にまとめて精算すればいい」と考えがちです。しかし、法律上、これは間違いです。
もし兄が3年分の家賃1,000万円を分配していなくても、家庭裁判所で行われる遺産分割の場で「兄は1,000万円多く得ているから、その分アパートの所有権は私が多くもらうべきだ」という主張は、原則として認められません。
家賃の不払い問題は、遺産分割とは別に地方裁判所で行う「不当利得返還請求」という手続きで解決する必要があり、問題が二重化・複雑化してしまうのです。この法的な構造を理解していないと、話し合いはいつまでも平行線を辿ることになります。
2 【悲劇】放置が招く「共有不動産の悲劇」その恐るべき実態
「共有不動産の悲劇」とは、問題を先送りした結果、資産と家族の両方を失ってしまう最悪のシナリオです。具体的には、次の3つの段階を経て深刻化していきます。
(1)悲劇①:金の切れ目が縁の切れ目。「賃料独り占め」と家族の断絶
最も多く、最も根深いトラブルです。生前から親の不動産管理を手伝っていた長男が、相続発生後もそのまま管理を続け、他の相続人に収支を明かさず、賃料を分配しない。最初は「兄さんだから任せておこう」と思っていた他の兄弟姉妹も、やがて不信感を募らせます。
電話をしても出ない、手紙を送っても返事がない。猜疑心は憎悪に変わり、かつて仲の良かった兄弟姉妹は、法廷で罵り合う関係へと堕ちていきます。
【弁護士の視点】
弁護士として数多くの骨肉の争いを見てきました。その経験から断言しますが、一度こじれた親族間の金銭問題が、感情的な話し合いだけで円満に解決することは、まずありえません。弁護士による内容証明郵便の送付や訴訟といった「法的な介入」という外部からの力を加えなければ、事態は確実に悪化の一途を辿ります。躊躇や遠慮は、あなたの正当な権利を永遠に失わせるだけなのです。
(2)悲劇②:誰も決められない。「塩漬け不動産」化による資産価値の暴落
相続人の間で関係が悪化すると、不動産の経営(管理・運営等)に関する意思決定が完全にストップします。法律上、共有不動産(相続による遺産分割前の共有を含む)に関する行為には、以下のような厳格なルールがあるからです。
- 大規模修繕や売却(変更・処分行為): 全員の同意が必要
- 新規の賃貸契約(管理行為): 持分の過半数の同意が必要
共有者の一人でも反対すれば、老朽化した建物の修繕も、有利な条件での売却もできません。空室が増え、雨漏りが発生しても、誰も責任を取らない。結果、広島市内の一等地にあるはずの優良物件が、管理不全のスラムと化し、資産価値は半値、更には3分の1へと転がり落ちていくのです。
(3)悲劇③:資産の強制喪失。望まない「競売」という結末
相続人間での話し合いによる解決が絶望的となった場合の最終手段が「遺産分割調停・審判」です。しかし、これは諸刃の剣です。審判にまで至ると、裁判所が、当事者の主張する分割方法では公平な解決は困難と判断した場合、不動産全体を競売にかける、という判断を下すことがあります。
競売による売却価格は、通常の不動産市場で取引される価格の6~7割程度になってしまうことも珍しくありません。つまり、法的手続きに訴えた結果、相続人全員が経済的に大きな損失を被るという、誰も望まない最悪の結末を迎えるリスクをはらんでいるのです。
3 【解決策】専門家集団が提言する「共有不動産の悲劇」を回避する3つの解決策
ここまで見てきた悲劇を回避し、あなたとご家族の資産を守るため、私たちは状況に応じて3つの段階的な解決策をご提案します。
(1)解決策①:【紛争解決】発生してしまったトラブルを法的に、かつ有利に解決する
すでに相続人間の関係がこじれてしまっている場合、感情的な話し合いは無意味です。法律という客観的なルールに則り、問題を解決する必要があります。
ア 交渉・調停・訴訟による権利の実現:
弁護士が代理人として介入し、賃料の返還や遺産分割協議を進めます。当事者同士では不可能な冷静な交渉が可能です。話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所での調停や審判、訴訟へと移行します。
【調停の現場を熟知】
広島家庭裁判所の調停の現場では、法律論だけでなく、当事者の感情やこれまでの経緯も重視されます。しかし、最終的に調停委員や裁判官の心を動かすのは、客観的な証拠と、第三者が聞いても納得できる論理的な主張です。私たちは、広島の調停実務を熟知しており、どのような資料を、どのタイミングで提出すれば、調停を有利に進められるかを戦略的にアドバイスします。
イ 揉めないための4つの分割方法の選択:
不動産の分割には、4つの方法があります。私たちは、ご家族の状況を伺い、最適な方法をご提案します。
(ア)現物分割
たとえば、不動産Aを長男が取得し、不動産Bを次男が取得する、といったように、現にある物を、物理的に分割する方法
一つの筆の不動産を現物分割するような場合であれば、測量や分筆登記が必要となります。私たちは、提携している土地家屋調査士や司法書士と連携して、円滑な手続きの進行をサポートします。
(イ)代償分割
一人が不動産を取得し、他方に金銭を支払う方法
不動産をいくらと評価すべきなのか、適切な主張を行うために、提携している不動産業者からの査定書を取得したり、提携している不動産鑑定士に鑑定意見書の作成を依頼するなどのサポートを行います。
(ウ)換価分割
不動産を売却し、現金を公平に分ける方法
売却する方法のなかでも、相続人同士が協力しあって行う「任意売却」と、裁判所の手続きで強制的に行う「競売」とがあります。「競売」では適正な価格が実現できないので、換価分割をするのであれば「任意売却」をお勧めしています。提携している不動産業者を通じて、適切な価格での販売の実現をサポートします。
(エ)共有分割
共有名義のままにする方法(非推奨)
これは問題を将来に先送りするだけであり、私たちは、この選択肢を回避する方法を全力で模索し、提案します。
(2)解決策②:【生前対策】「争族」の火種そのものを消し去る
最も賢明で、最も効果的な解決策が、問題が起きる前に手を打つ「生前対策」です。これは、親が子に残せる、最高の贈り物です。
- 遺言書|あなたの「想い」を法的な形にする
遺言書があれば、そもそも遺産分割協議は不要となり、「共有不動産の悲劇」は起こりえません。
【多くの実務経験から】
弁護士として多くの遺言作成に立ち会いました。その経験から言えるのは、愛情のこもった「付言事項」(なぜその分割にしたのか、家族への感謝などを綴る欄)が、時に法的な効力以上に、残された家族の心を繋ぎ、無用な争いを防ぐ力を持つということです。私たちは、法律的に完璧なだけでなく、あなたの「想い」が100%伝わる、血の通った公正証書遺言の作成を、言葉選びの段階からお手伝いします。
- 家族信託|認知症による資産凍結をも乗り越える究極の承継手法
遺言は死後の対策ですが、生前のリスクで最も恐ろしいのが「認知症による資産凍結」です。家族信託は、元気なうちに信頼できる家族に財産の管理権限を託すことで、この最悪の事態を回避できる柔軟な制度です。
【元公証人が在籍する強み】
当事務所には、その信託契約公正証書をご自身の手で数多く作成してきた、広島の信託実務における第一人者が弁護士として在籍しています。 私たちは、信託契約のあらゆるパターンを熟知しています。だからこそ、法務・税務・登記、そしてご家族の感情面まで、360度どこにも隙のない「失敗しない」信託契約を設計できるのです。これは、他のどの事務所にも決して真似のできない、当事務所の強みです。
(3)解決策③:【高度な資産承継】資産と事業を次世代へ円滑に引き継ぐ
複数の収益物件や親族経営の会社をお持ちの資産家の皆様には、より高度な戦略が必要となります。
- 資産管理会社の設立・活用:
法人を設立し、そこに不動産を所有させることで、相続の対象を「不動産」から「法人の株式」へと転換します。これにより、後継者に株式を集中させることで経営権の分散を防ぎ、安定した資産経営を継続できます。
- 事業承継と自社株対策:
親族経営の会社がある場合、株式の承継が最大の難問です。株式が分散すれば、会社の経営は即座に不安定化します。
【元国税OB税理士と弁護士の連携】
私たちは、税務署で資産税を長年担当した元国税OB税理士と緊密に連携しています。税務署の視点を熟知した税理士と、数々の事業承継紛争を解決してきた弁護士がタッグを組むことで、後継者への円滑な株式集中と、他の相続人の遺留分対策、そして相続税の圧縮という、複雑な方程式の最適解を導き出します。
【知らないと数千万円損も】広島の相続不動産「円満売却」の絶対法則|税金・揉め事・事業承継の最適解
4 結論:「あなたに全てを託したい」当事務所が広島の資産家から選ばれる、唯一無二の7つの理由
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。最後に、なぜ私たちが、広島の複雑な不動産・事業承継の問題の解決に、絶対的な自信を持っているのか。その理由を「7つの強み」としてお伝えさせてください。
- 【信託実務の第一人者】元公証人による絶対的な信頼性
私たちは、机上で家族信託を語るだけの事務所ではありません。信託契約公正証書をその手で作成してきた張本人であり、広島の信託実務を知り尽くした第一人者が、あなたの未来を守るための、完璧で、戦略的な信託契約を設計します。
- 【最終判断者の視点】元裁判官在籍
あなたの紛争がもし裁判になれば、最終判断を下すのは裁判官です。私たちは、その「判断者」の思考を知るからこそ、決して負けない戦略を立てられます。
- 【調停の現場を知る】現役の広島家裁・家事調停官在籍
広島の相続紛争の「今」を、私たちは知っています。どのような主張が通り、どのような提案が調停委員の心を動かすのか。机上の空論ではない、生きたノウハウがここにあります。
- 【登記までワンストップ】大手司法書士法人と一体運営
法的な解決が決まっても、不動産の名義変更(登記)ができなければ意味がありません。私たちは、司法書士法人みつ葉グループとの連携で、解決から実行までをシームレスに行います。
- 【税務署の視点を熟知】元国税OB税理士との連携
相続に税金問題はつきものです。私たちは、税務署の思考を読み解き、あなたの税負担を最小化し、税務調査にも耐えうる万全の対策を講じます。
- 【不動産実務に精通】不動産関連企業との強力なネットワーク
私たちは、広島の優良不動産会社と常に連携しています。絵に描いた餅ではない、現実的な不動産の価値や市場動向を踏まえた、最も有利な解決策をご提案します。
- 【事業承継のプロ】親族経営の顧問実績多数
私たちは、多くの親族経営企業の法律顧問をしています。だからこそ、単なる相続問題としてではなく、会社の未来、従業員の生活まで見据えた、大局的な視点での事業承継サポートが可能です。
私たちは、弁護士、司法書士、税理士、不動産のプロが結集した、あなたの資産と家族を守るための「専門家チーム」です。
【当事務所からのメッセージ】
もう、一人で悩まないでください。あなたのその悩み、私たちには解決できます。
相続問題は、風邪と違って、時間が経っても自然に治ることはありません。むしろ、時間と共にガン細胞のように蝕み、気づいた時には手遅れになります。
今、この瞬間のあなたの小さな一歩が、ご家族の未来を、そしてあなた自身が守りたかったはずの「大切なもの」を救う、唯一の道です。
まずは、お話をお聞かせください。あなたの状況を整理し、私たちが提示できる「未来へのロードマップ」を、具体的にご説明します。相談したからといって、依頼を強要することは決してありません。安心してお問い合わせください。
未来を変える60分が、ここにあります。
当事務所は広島市中心部にございます。お電話または下記フォームより、お気軽にご連絡ください。

【広島の経営者様へ】「家督相続のように、後継者だけに全資産を遺したい」その願い、何もしなければ“争族”を招きます。
広島市及びその周辺で、幾多の困難を乗り越え、会社を、そしてご一族の資産を守り抜いてこられた経営者・資産家の皆様へ。
「俺の目の黒いうちは大丈夫だ」
「事業の後継者である長男に、すべての財産を集中させて円滑に事業承継を終えたい」
「家督相続のように、財産を分散させずに会社を引き継がせたい」
もし、少しでもこのようにお考えなら、“思い込み”が、あなた様が人生をかけて築き上げてきたすべてを、数年後に崩壊させてしまうかもしれない「時限爆弾」のスイッチになり得ることを、ご存知でしょうか。
これは決して脅しではありません。三代続いた優良企業が、たった一度の事業承継の失敗をきっかけに経営権争いに発展し、見る影もなく衰退してしまった…そんな悲劇もあります。事業承継の失敗は、そのほとんどが、「ウチは大丈夫」という、何の法的裏付けもない自信から始まっているのです。
この記事は、単なる法律の解説書ではありません。皆様が直面する経営上の最重要課題、すなわち「事業承継」を成功に導くため、「株式の集中方法」「後継者が直面する遺留分問題」「不動産相続のトラブル」「事業に関係ない相続人への対処」といった、あらゆるお悩みに対し、現代の法律に即した最適解を網羅的にお伝えする「事業承継の処方箋」です。
そして何より、なぜこれらの問題を解決する上で、当事務所が広島の経営者・資産家の方のお役に立てることを、その理由も具体的にお伝えします。この記事を最後まで読み終えたとき、あなたはご自身の会社と後継者、そしてご家族の未来を守るための、具体的で、かつ最も確実な一歩を踏み出すことができるはずです。
【危険度セルフチェック】あなたの事業承継、本当に大丈夫ですか?
本題に入る前に、まずはご自身の現状を客観的に把握してみましょう。一つでも当てはまる項目があれば、将来、事業承継が「争族」の引き金となるリスクが潜んでいます。
▢ 遺言書をまだ作成していない、または10年以上前に作成したままだ。
▢ 会社の財産のほとんどが、自社株と事業用の不動産だ。
▢ 後継者である長男以外にも、子供がいる。
▢ 事業に関わっていない子供から、「自分の取り分はちゃんともらえるのか」と聞かれたことがある。
▢「相続税がいくらかかるか」「自社の株価が今いくらか」を正確に把握していない。
▢ 財産はすべて後継者に渡したいので、他の子供には「相続放棄」してもらえば良いと思っている。
▢ 顧問税理士はいるが、事業承継の専門家ではない。
▢ 家族仲が良いので、法律よりも家族の話し合いで円満な事業承継ができると信じている。
もし3つ以上当てはまったら、要注意です。 今すぐ具体的な対策を講じなければ、あなたの引退後、残された後継者とご家族が、取り返しのつかない事態に巻き込まれる可能性が高いと言えます。
1 なぜ「後継者に全財産」という想いが“争族”の火種になるのか
そもそも、なぜ「跡取りである後継者にすべてを」という、経営者として当然の願いが、トラブルを引き起こすのでしょうか。それは、皆様が持つ「家督相続」のイメージや経営者の「常識」と、現代の法律との間に、決定的なズレがあるからです。
(1)旧民法の「家督相続」と現代法の残酷な現実
戦前の家督相続は、家の財産分散を防ぎ、長男が単独で全財産と戸主の地位を承継する制度でした。しかし、現行民法の大原則は「法定相続人は、皆平等」です。この根本的な違いを認識しないまま、ご自身の想いだけを突き通そうとすれば、それは法的には「不平等」な要求となり、他の相続人からの強い反発と法的な権利主張に直面するのです。
(2)最大の障壁!「遺留分」という、後継者を襲う〈最強の権利〉
たとえ遺言書で「全財産を後継者である長男に相続させる」と明記しても、他の子供たちには「遺留分」という、法律で保障された最低限の遺産取得分を主張する権利があります。
これは、あなたが遺言で「お前には1円もやらん!」と書いたとしても、覆すことのできない非常に強力な権利です。遺留分を侵害された相続人が権利を行使(=遺留分侵害額請求)すれば、財産を多く受け取った後継者は、その不足分を現金で支払う義務を負います。
【ケーススタディ】ある製造業A社の悲劇
A社の社長は、後継者である長男に自社株と工場敷地のすべてを相続させる遺言を遺し、盤石な事業承継ができたと安心していました。しかし、会社経営に全く関わってこなかった次男と長女が、弁護士を立てて遺留分を請求。長男は、会社の運転資金にも手を付けられず、やむなく相続したばかりの工場敷地の一部を売却して支払いに応じました。結果、事業承継直後の拡大計画は頓挫し、会社の成長は完全に止まってしまいました。社長が望んだのは「会社の発展」と「後継者の幸せ」だったはずで、後継者が苦しむ姿は望んではいなかったはずです。
(3)【不動産 相続 トラブル】が事業承継を頓挫させる
特に賃貸アパートなどの収益不動産が絡むと、その評価額や将来の収益分配を巡って、対立はさらに深刻化します。当事務所は、不動産関連企業との緊密な連携により、このような収益不動産を含む相続紛争を数多く手掛けてきた実績があります。単なる法律論だけでなく、不動産の実務的価値を踏まえた現実的な解決策をご提案できるのが、当事務所の強みです。
(4)家庭裁判所における「調停」のリアル
もし話し合いで解決できなければ、家庭裁判所で「遺産分割調停」を行わなければなりません。調停は、裁判官と民間の有識者からなる調停委員が間に入り、話し合いでの解決を目指す手続きです。
しかし、この調停で有利な結果を得るには、単に自分の主張を繰り返すだけでは不十分です。調停委員を納得させ、裁判官が最終的に下すであろう「審判」を見据えた、法的かつ論理的な主張を展開する必要があります。
当事務所には、広島家庭裁判所の現役の非常勤裁判官(家事調停官)として、実際に数多くの相続案件の調停を担当している弁護士が在籍しています。広島の家裁で、どのような主張が通りやすく、どのような証拠が重視されるのか。その実務と空気を肌で知っているからこそできる、的確なアドバイスと戦略立案が可能です。事業承継が紛争化した際に、後継者の立場を最大限に守るための戦い方を、私たちは熟知しています。
2 あなたの想いを形にするための「3つの処方箋」
では、どうすれば法的なリスクを回避し、円滑な事業承継を実現できるのでしょうか。そのための具体的な方法を、3つのステップで解説します。
【処方箋①】遺言書 ― すべての基本、しかし奥が深い“事業承継の第一歩”
遺言書は、すべての対策の基本です。しかし、ただ書けば良いというものではありません。
Q1. どの種類の遺言書が良いのですか?
A1. 資産家・経営者の皆様には、公証役場で作成する「公正証書遺言」一択です。 当事務所には、公証人を8年間務め上げたベテラン弁護士が在籍しています。公証人として何千という遺言書作成に携わった弁護士が断言しますが、自筆の遺言書は、形式不備で無効になったり、死後、他の相続人に「無理やり書かされたものだ」と争われたりするリスクが常に付きまといます。その点、公正証書遺言は、専門家である公証人が内容を厳格にチェックするため、後から無効と争われるリスクを限りなくゼロに近づけられます。
Q2. 遺言書で一番大切なことは何ですか?
A2. 法的な効力以上に、「付言事項」であなたの“想い”を後継者と他の家族に伝えることです。 付言事項とは、法的な効力はないものの、家族へのメッセージを自由に記せる欄です。 「なぜ私が、数いる子供の中から長男を後継者として選んだのか。彼の真面目さ、従業員からの信頼、そして何よりこの会社を愛する気持ちを、私はずっと見てきた」 「他の子供たちへ。お前たちの人生を応援している。この会社を守り続けることが、皆の未来の礎になると信じている。どうか、後継者である兄を支えてやってほしい」 このような想いを自分の言葉で綴ることで、他の相続人の感情的なわだかまりを和らげ、事業承継への納得感を促す絶大な効果があります。
【処方箋②】生前対策 ― 「遺留分」という時限爆弾から後継者を守る技術
遺言書だけでは、遺留分の問題をクリアできません。将来必ず請求されることを見越して、生前から周到な準備を進めることが、後継者と会社を守る上で絶対不可欠です。
◆王道にして最強の対策:「生命保険」の活用
これは、遺留分対策と納税資金対策を兼ねた、事業承継における「必須科目」です。 【契約者・被保険者:あなた】、【保険金受取人:後継者である長男】という形で生命保険に加入します。あなたが亡くなった際に支払われる死亡保険金は、後継者固有の財産となり、遺産分割の対象になりません。後継者は、この保険金を原資として、他の兄弟から遺留分を請求されても、会社の資産に手を付けることなく支払うことができます。これは、あなたが後継者に残してあげられる、最後の、そして最大の武器になります。
◆税務のプロと組む「戦略的生前贈与」
遺留分を請求する可能性のある他の子供たちに対し、生前から暦年贈与などを活用して計画的に財産を渡しておくことも有効な対策です。しかし、これは相続税の問題と表裏一体であり、やり方を間違えれば多額の税金が発生します。 当事務所は、税務署で相続税などの資産税分野を長年担当していた国税OB税理士が所属する税理士事務所と緊密に連携しています。税務調査の現場を知り尽くしたプロの視点から、皆様の資産状況に合わせた、最も安全かつ効果的な節税対策と遺留分対策を一体でご提案します。
【処方箋③】民事信託(家族信託) ― 現代に「家督相続」を実現する“究極の一手”
遺言書の「一代限り」という限界を超え、より確実で永続的な資産承継を実現する、現代における最強のツールが「民事信託(家族信託)」です。
◆事業承継における絶大な効果
自社株を信託財産とすることで、議決権を後継者に集約し、あなたが存命のうちからスムーズな権限移譲を進めることができます。相続発生時に株式が分散するリスクを完全に排除し、経営の安定化を図ります。
◆後継者育成プログラムとしての信託
信託は、単なる資産承継のツールではありません。あなたが「委託者兼受益者」、後継者を「受託者」とすることで、あなたが元気なうちから、後継者に受託者として会社資産の管理を任せ、その仕事ぶりを監督・指導することができます。これは、事業承継に向けた、極めて実践的なOJT(オンザジョブトレーニング)の仕組みとなり、後継者の経営者としての自覚と能力を育む上で、計り知れない効果を発揮します。
◆広島における信託契約の第一人者によるオーダーメイド設計
民事信託は非常に強力ですが、その契約書は極めて専門的で、誰が作っても同じではありません。 当事務所に在籍する元公証人の弁護士は、公証人として在職中、公正証書で作成する信託契約を広島で誰よりも多く手掛けてきた、まさに信託契約の『広島における第一人者』です。特に、複雑な条項が求められる事業承継のための信託契約においては、その経験と知識が、計画の成否を分けると言っても過言ではありません。
3 なぜ、あなたの事業承継は当事務所で成功できるのか
ここまで様々な対策をお話ししましたが、これらを個別に実行するだけでは不十分です。法務(弁護士)、税務(税理士)、登記(司法書士)という異なる分野の専門家が、あなたの事業承継への想いを共有し、一つのチームとして機能する必要があります。
当事務所が、広島で事業承継をお考えの皆様にとって、必ずお役に立てる理由は、この「高度な専門性と、盤石な連携体制」を、一つの窓口でご提供できる点にあります。
理由1:裁判所と公証役場の「思考」を知り尽くしているから
◆元裁判官(35年)の視点:
もし事業承継が紛争化し、裁判になった場合、裁判官はどのような証拠を重視し、後継者の正当性をどう判断するのか?当事務所には、裁判官を35年間務め上げたベテラン弁護士が在籍しています。長年の経験から、裁判官の思考回路を熟知しているため、紛争を未然に防ぐための、本当に「効く」対策を講じることができます。
◆元公証人(8年)の視点:
先述の通り、広島における信託契約の第一人者である元公証人が、あなたの事業承継プラン、いわば「現代版家督相続」の設計図を、完璧に反映した鉄壁の信託契約・公正証書遺言を作成します。公証役場の実務を知り尽くしているからこそできる、スピーディーでミスのない手続きをお約束します。
理由2:広島の家庭裁判所の「今」をリアルタイムで把握しているから
◆現役の家事調停官の視点:
当事務所には、広島家庭裁判所の現役の非常勤裁判官(家事調停官)として、実際に数多くの相続案件の調停を担当している弁護士が在籍しています。現在の広島の家裁で、どのような主張が通りやすく、どのような解決案が受け入れられやすいのか。その「生きた情報」と「現場感覚」に基づき、あなたのケースに最適な戦略を立案します。
理由3:各分野のトッププロとの「盤石なワンストップ事業承継チーム」があるから
あなたは、弁護士、税理士、司法書士をそれぞれ探し、事業承継という複雑な計画を何度も説明する必要はありません。
◆司法書士:
全国規模の大手司法書士法人「みつ葉グループ」広島拠点と事務所を一体で運営。信託や相続に伴う、複雑な不動産登記手続きを迅速かつ正確に行います。
◆税理士:
元国税OBが所属する税理士事務所との連携により、税務調査の視点を踏まえた、最も安全で効果的な相続税・贈与税対策を事業承継計画と一体で実現します。
◆不動産・M&A関連企業:
親族経営の会社の顧問弁護士を数多く務めてきた実績から、不動産評価や株式評価が絡む複雑な案件も、提携企業と連携し、ワンストップで解決に導きます。後継者がいない場合のM&Aという選択肢も含め、あらゆる可能性を検討します。
4 相談すべきか迷っている、あなたへ
ここまでお読みいただき、「対策の重要性はわかったが、弁護士に相談するのはまだ早い」「費用が心配だ」「何から話せばいいかわからない」と感じていらっしゃるかもしれません。
どうか、その一瞬の迷いで、手遅れにならないでください。
事業承継対策は、あなたが元気で、正常な判断能力があるうちにしか、講じることができません。認知症になってしまってからでは、有効な遺言書も信託契約も、もう作れないのです。それは、あなたが守りたかった会社と後継者、そしてご家族を、無法地帯に置き去りにするのと同じことです。
私たちは、単に法律手続きを代行するだけの事務所ではありません。あなたの想いに深く耳を傾け、後継者の覚悟を受け止め、ご家族一人ひとりの人生に配慮しながら、10年後、20年後に「あの時相談しておいて、本当によかった」と思っていただける、最高の事業承継を共に創り上げるパートナーです。
事業承継は、あなたの経営者人生における、最後にして最大のプロジェクトです。
初回のご相談は60分無料です。その60分で、あなたが今抱えている漠然とした不安の正体を明らかにし、事業承継への道のりを明確に照らし出します。無理にご契約を勧めることは一切ありませんので、ご安心ください。
人生をかけて守り抜いてきた大切な会社と、未来を託す後継者、そして愛するご家族のために。 まずは、あなたの想いをお聞かせください。
当事務所は広島市中心部にございます。お電話または下記フォームより、お気軽にご連絡ください。

葬儀費用は誰が負担すべきなのか?相続の遺産から出してもよい?
遺産から支出するのが普通なのでは?
遺産分割の話し合いにおいて、葬儀費用をどのように取り扱うかで、相続人間で争いになることがあります。
1 相続税の分野での取扱い
この点、相続税の分野では、葬儀費用を遺産から控除して、残った金額を対象に相続税を計算していきます。
2 遺産分割での取扱い
⑴遺産から控除するとの考え方
遺産分割においても、相続税の分野での取り扱いと同様に、葬儀費用は遺産から出して(立て替えた人に先に充当して)、残った遺産を分割の対象にしよう、という考え方があります。もともと、亡くなった父母が、葬儀費用は遺産から出してくれと生前に語っていたような場合で、相続人全員がそれに同意しているケースでは、そのように扱われます。
⑵喪主が負担するとの考え方
これに対して、葬儀費用は、葬儀の主催者である喪主が負担するものであって、遺産から出す(喪主が支出した分に充当する)ことを認めない、という考え方もあります。この考え方は、そもそも葬儀というのは、亡くなられた方を弔うために喪主が開催するものであって、香典なども全て喪主が受領するのだから、喪主の計算で行うべきだ、というものです。このような処理をすべきだと主張されるのは、例えば、もともと兄弟間の中が悪く、兄弟の一人が他の兄弟に相談せずに独断で葬儀の段取りを整えて進めたような場合で、かつ、場合によっては仲の悪い兄弟を葬儀にすら招かなかった、というような場合で主張されたりします。
3 裁判所の考え方
では、家庭裁判所は、葬儀費用の取扱いについて、どう考えているでしょうか。
この点、葬儀費用を最終的に誰が負担するのかについては、実は法律に定めはないため、意見が分かれています。
また、法律上の制度としての遺産分割調停は、あくまでも〈遺産の分割〉を目的にしているため、相続開始後に発生する葬儀費用を誰がどう負担するのかは、遺産分割調停制度の直接の対象とはなっていません。
ですので、相続人間で負担のあり方に合意できなかった場合、遺産分割調停(および移行後の審判)からは切り離して、裁判で決着をつけざるを得ないことになります。
そして、裁判にまでなったケースでは、「喪主が負担すべき」という考え方(喪主負担説)が主流になってきています。
遺産分割調停の実務の多数説と、裁判での判断の主流の考え方とが異なっている理由は、裁判にまで発展するのは、もともと「遺産分割の内容との兼ね合いで、葬儀費用を相続人全員で負担することにするのはおかしい」という事案が多いからだと思われます。たとえば、喪主を務めた方が遺産分割においては多額の遺産を相続することになってた場合であるとか、生前贈与により多額の特別受益を受けていた場合などです。このような場合でも、相続人全員が「葬儀費用は相続人間で平等に負担する」というような合意に達するのであれば遺産分割協議で解決できますが、そうでなければ裁判にまで発展します。そして遺産を多くもらった人が喪主になっているケースが大半であるため、裁判にまでなったケースでは「喪主が負担すべき」という判断になることが多いのです。
このように、葬儀費用の負担のあり方は、一律に正しいやり方が決まっているわけではなく、事案に応じてケース・バイ・ケースと言わざるを得ません。
4 葬儀費用の負担について争いになっている場合は、千瑞穂法律事務所にご相談下さい
千瑞穂法律事務所には、長年にわたり裁判官や公証人を務めた弁護士や、家庭裁判所の現役の非常勤裁判官として多くの相続問題に取り組んでいる弁護士が在籍しています。そうした経験と実績に基づいて、葬儀費用の負担について争いになっている場合について、適切な法的助言を行うことができます。
お困りごとがあれば、まずはお気軽に、千瑞穂法律事務所にご相談下さい。

余った香典は誰のもの?香典にまつわる注意点や生じうるトラブルについて
大切な方を亡くされ、葬儀を執り行っている皆様、心からお悔やみ申し上げます。
葬儀費用については全額ないし一定額を香典から支払うことを検討されている方もおられるでしょうが、この香典はそもそも誰のものなのでしょうか。このような話はあまり一般的な話ではなく、自分が当事者となるまで意識しない方が多いと思われます。もっとも、香典を相続財産としてよいのかという点や税務上どのように取り扱われるのかという点については、よくわからないまま判断すると法律上誤った判断をする恐れがあり、後のトラブルにつながりかねません。
そこで、本記事では、香典にまつわる注意点や生じうるトラブルをご紹介いたします。本記事を読むことで、香典についての知識を深めていただけますと幸いです。
1.香典の特徴について
(1)香典は相続財産に当たるか
結論から申し上げますと、香典は、被相続人に対して与えられるものではないため、相続財産には該当しません。一般に、香典は遺族の方の負担を軽減することを目的とする喪主への贈与と考えられています。そのため、香典については、他の相続財産とは異なるルールが適用されることになります。
(2)税務上の注意点
まず、香典については、(1)に記載のとおり相続財産ではありませんので、相続税はかかりません。
次に、香典に対して贈与税がかかるかについてですが、国税庁のHPの「タックスアンサーNo4405」では、贈与税のかからない財産として「個人から受け取る香典で・・・社会通念上相当と認められるもの」としています。したがって、社会通念上相当(=常識的に考えて妥当)な香典の額と認められるものの場合には贈与税もかからないということになります。もっとも、香典に対して贈与税が発生するかについて、具体的にいくらもらうと贈与税が発生するかなどの基準はなく、社会的な常識等を考慮して妥当な額といえるかによって決定されるところ、かかる判断を行うためには一定の専門的知見が必要となります。
以上から、香典に対して贈与税がかかるかご不安な方は、お近くの税理士等の専門家に相談してみるのがよろしいかと思われます。
2.香典で生じうるトラブル
(1)香典について生じるトラブルの具体例
一般的に香典については、葬儀費用に充てられるところ、香典を全て葬儀費用に充てる限りにおいてトラブルになる事例は少ないでしょう。
もっとも、社葬などを行い、香典の総額が葬儀費用よりも高くなった場合には、余った香典を喪主が取得するか、相続人が取得するかでトラブルになることがあります。
(2)余った香典は誰のものか
余った香典が誰のものになるかについて、法律は明確な規定を設けていません。余剰分の香典を誰が取得するかについては、喪主に帰属するという考えと、相続人に帰属するという考え方があります。
裁判例でも余剰分の香典の帰属について明確に判断したものはありません。もっとも、香典について、香典の基本的性格は葬式費用の一部負担であり、香典は喪主に贈られたものと解するのが相当であるとした裁判例(広島高裁平成3年9月30日)があります。この裁判例は、香典を喪主への贈与としているところ、贈与の範囲について具体的にどの範囲という限定を付しておらず、香典の全額が喪主への贈与であることを前提としていると思われます。そのため、この裁判例は、余剰分の香典について喪主に帰属するという考え方と親和性が高いものといえるでしょう。ただし、香典の基本的性格を葬式費用の一部負担としている以上、余った香典を喪主が私的に使い込んだというような場合には、かかる裁判例を前提としても、当該香典については、喪主に帰属しないとされる可能性が高いです。
3.香典トラブルに対する対応策
(1)トラブルにならないための予防策
2(2)に記載のとおり、香典に余剰が生じた場合に当該香典が誰に帰属するかについて、明確な規定はありません。そのため、後のトラブルを防止するという観点では、香典に余剰分が生じた場合にどのように分配するかについてあらかじめ書面等で合意をしておく方法が考えられます。
また、香典の総額や使途について明確にしておくことものちのトラブル防止という観点から望ましいといえるでしょう。
(2)トラブルが生じてしまった場合にはどうすればよいか
香典についてトラブルが生じてしまった場合、当事者間で協議を行う方法のほか、家庭裁判所に対し調停や審判の申立てを行う方法や地方裁判所に訴訟提起をする方法が考えられます。
いずれの方法にもメリット、デメリットがあり、ベストな解決方法は人によって様々です。そのため、どの方法による解決が自分にとってベストな解決方法か気になる方は、弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。
4.香典トラブルに関して千瑞穂法律事務所ができること
香典についての説明は以上のとおりであるところ、特に香典で余剰金が生じた場合にはトラブルとなる可能性を含んでいると言えます。
千瑞穂法律事務所では上記のようなトラブルを抱えている方々を全面的にサポートしていきます。具体的には、法律相談を通じた適切な解決手段をアドバイスすることや調停ないし訴訟の代理人となり、書類の作成や手続きのサポートをするといったことを行っております。
また、香典についてトラブルが生じている場合、相続財産についても同時にトラブルが生じている可能性が高いと思われるところ、それぞれについて解決することが望ましいのか、それとも一挙に解決することが望ましいかなど、一人一人の状況に応じて、ベストな対応は異なると思われます。そして、ベストな対応をするには、その分野について深い知識を持つ専門家のサポートが不可欠です。
千瑞穂法律事務所では、相続分野を得意分野としており、当事務所の口コミで丁寧な対応であると依頼者様から高く評価していただいている弁護士が在籍しており、依頼者様のお話をじっくり聞いたうえで最も満足のいく解決方法を提示することができます。また、30年以上にわたって裁判官を務めた弁護士も在籍しており、裁判官の視点も踏まえた解決方法の提示をすることも可能です。
香典についてのトラブルで悩まれている方は、お気軽にご相談ください。

家族が亡くなった場合に仏壇・お墓は誰が負担する?祭祀財産の承継について
亡くなった人の仏壇・お墓は誰が承継するのでしょうか。
大切な方とのお別れの際には、その方が生きている時間を少しでも大切にしたいと思われることでしょう。そのため、亡くなった後の相続問題についてはどうしても後回しになってしまうことが多いです。また、仮に相続問題について意識していたとしても、仏壇・お墓を誰が承継するかという問題まで意識している方は少ないのではないでしょうか。
もっとも、昨今では、先祖代々お墓を継ぐのが当たり前であるという価値観が変化していること、仏壇やお墓は維持費がかかること等様々な要因から、お墓・仏壇を相続したくないという方も多くなっており、兄弟間で誰がお墓・仏壇を相続するかというトラブルが生じる可能性は高まっております。
そこで、本記事では、亡くなった人の仏壇・お墓を誰が承継するかをご説明いたします。
本記事を読まれることで祭祀財産の承継についての知識を深めていただければ幸いです。
1.仏壇・お墓は相続財産に当たるのか
(1)仏壇・お墓は相続財産とは異なる「祭祀財産」に該当することについて
結論から申し上げますと、仏壇・お墓などは相続財産には該当しません。かつての家制度の名残もあり、祖先の祭祀を特に尊重すべきだとする習俗や国民感情が存在することから、上記のような財産については、通常の相続財産とは異なる性質を有するものとされています。そのため、仏壇・お墓に代表される「祭祀財産」(民法897条1項)に該当するものについては、通常の相続とは異なるルールによって承継者が決定されます(具体的な決定方法については2参照)。
(2)祭祀財産とは何か
民法897条1項では、祭祀財産に当たるものが列挙されており、系譜、祭具、墳墓が祭祀財産に当たるとされています。
「系譜」とは、家系図など家系について示された図や文書を指します。また、「祭具」とは、祭祀や礼拝に用いる道具で位牌、仏壇などがこれに当たります。そして、「墳墓」とは、墓石や墓地の使用権などを指します。
これらの「祭祀財産」に該当するものについては、2に記載の方法に従って承継方法が決定されることとなります。
2. 仏壇・お墓等の祭祀財産の承継者となるのは誰か、その決定方法について
(1)承継者の指定がある場合について
祭祀財産を誰が承継するかについて、被相続人が指定している場合には、指定された者が祭祀財産の承継者となります(民法897条1項但書)。この指定の方法は、遺言などの書面によるもののほか、口頭によるものでも認められることとなります。
もっとも、裁判例において、祭祀財産の承継人の指定について、特定の方式を必要とはしないものの、人の死後に効果を生ずる場合が原則である意思表示であるから、表意者の真摯さ、表示内容の明確さにおいて、一般の意思表示より慎重にその存在を判断すべきもの(前橋家審平成3年5月31日)とされていることからすれば、安易に指定による承継が認められると判断するべきではありません。
祭祀財産の承継について指定している場合で、兄弟間で争いが生じる場合には、上記指定の効力が争われる可能性が高いと思われます。そのようなリスクを回避するためには、公正証書遺言を作成し、相続財産の分割についてと共に祭祀財産の承継を指定しておくのが望ましいといえるでしょう。
(2)承継者の指定がない場合について
祭祀財産の承継者について被相続人の指定がない場合、慣習に従って祖先の祭祀を主催すべき者が承継することとなります(民法897条1項本文)。
そして、慣習が明らかでない場合には、家庭裁判所が承継する者を定めることとなります(民法897条2項、家事事件手続法190条、別表第二の11)。裁判所がどのような者を承継者としているかという点について、裁判例(大阪家審平成28年1月28日)では、被相続人と共同生活を行うなどの密接な関係が認められるのが誰か、葬儀を主催したのが誰か、祭祀財産を現に所持しているのは誰かなどの事情を考慮して承継者を決定しています。このような裁判例が存在することからすれば、家庭裁判所によって承継者が決定される場合には、上記要素が考慮されることになるでしょう。
(3)祭祀財産を承継した場合どうなるか
被相続人による指定、慣習、裁判所による決定によって承継者が決定された場合、被相続人の死亡時点において当然に祭祀財産を承継することになります。
この際、承継者は権利を放棄することはできず、遺産分割等において特別な分配を得る権利を持ちません。もっとも、承継者になったからといって祭祀の主催が義務付けられるわけではなく、公序良俗に反しない限り、祭祀財産を自由に処分することは許されるでしょう。
3.祭祀財産について争いが生じた場合にはどうするか
祭祀財産の承継者の決定方法については、以上のとおりです。そして、祭祀財産の決定方法について争いが生じる場合の解決策として、相手方との間で協議を行う方法のほか、家庭裁判所に対して調停ないし審判申立てを行うことが考えられます。
また、祭祀財産の承継の問題は厳密には遺産分割とは別個の問題であるところ、紛争の一体的解決の観点から、当事者間に争いがない場合には、遺産分割調停で祭祀財産の承継者を指定するという方法も実務上取られています。
どのように紛争解決を図るかについては一人一人の事情によって様々であると思われますので、自分にとってどの手段が適切かについて気になる方は、弁護士などの専門家に相談することをお勧めいたします。
4. 千瑞穂法律事務所ができること
これまで述べてきたとおり、祭祀財産に争いが生じた場合に考えるべきことは多くあり、解決のために弁護士ができることも多くあります。以下では、祭祀財産の承継問題でお困りの方に当事務所がサポートできる内容をお示しします。
(1)あらかじめ仏壇・お墓等に関して承継者を指定しておきたい方へ
依頼者様のお話を聞いたうえで費用対効果を比較のうえ、どのような手法により承継者を指定しておくことが将来の紛争トラブル防止の観点から望ましいかを、法律の専門家の視点からアドバイスさせていただきます。そして、法律相談の内容をもとに、遺言書等の書面を残すのが望ましいと判断した場合には、遺言書の作成についてもサポートさせていただきます。
(2)仏壇・お墓の承継に関して揉めている方へ
(1)と同様に、依頼者様のお話を聞いたうえで紛争の解決としてどのような手段が最も望ましいかという点をアドバイスいたします。そして、相談の結果、調停や審判を行うことが望ましいと判断した場合には、裁判所に提出する文書の作成についてもサポートいたします。
(3)千瑞穂法律事務所の強み
祭祀財産の承継についてトラブルが生じている場合、相続財産についても同時にトラブルが生じている可能性が高いと思われるところ、それぞれについて解決することが望ましいのか、それとも一挙に解決することが望ましいかなど、一人一人の状況に応じて、ベストな対応は異なると思われます。そして、ベストな対応をするには、その分野について深い知識を持つ専門家のサポートが不可欠です。
千瑞穂法律事務所では、相続分野を得意分野としており、当事務所の口コミで丁寧な対応であると依頼者様から高く評価していただいている弁護士が在籍しており、依頼者様のお話をじっくり聞いたうえで最も満足のいく解決方法を提示することができます。
また、30年以上にわたって裁判官を務めた弁護士も在籍しており、裁判官の視点も踏まえた解決方法の提示をすることも可能です。
祭祀財産の承継問題で悩まれている方は、お気軽にご相談ください。

亡くなった方の預金をおろすにはどうすればよいですか?
亡くなった方の預金口座はいつ凍結されるか
亡くなった方の預金口座は、金融機関が口座の名義人が亡くなった事実を把握した時点で凍結されます。役所に死亡届を提出したからといって、自動的に預金口座が凍結されるわけではありません。
金融機関が口座名義人の死亡を知る経路の大部分は、ご親族からの連絡です。その他、銀行担当者が新聞の訃報欄を見たり、口座名義人の葬儀が行われたことを知ったりするといったケースもあります。
一度預金口座が凍結されてしまうと、その口座からの入出金が一切できなくなります。
これには、口座からの引き落としや、振り込みによる受け取りも含まれます 。
そのため、葬儀費用など、急を要する資金が必要な場合であっても、口座から預金を引き出すことができなくなってしまいます。
口座凍結前に預金を引き出すと起こること
葬儀費用や生活費などを確保するために、亡くなった方の預金が凍結される前に預金を引き出すことを検討される相続人は一定数おられます。
もっとも、口座凍結前に亡くなった方の預金口座から預金を引き出すことには、以下のリスクがあるため、注意が必要です。
⑴ 相続放棄ができなくなる可能性
亡くなった方に多額の借金があった場合、亡くなった方の借金を引き継がないようにするために「相続放棄」という手続きを相続人は行うことができます。
相続放棄が認められるためには、①相続人が、被相続人(亡くなった方)が亡くなったことと自分が相続人になったことを知った日から3カ月以内に行うこと(原則)や②単純承認に該当しないこと(相続人が相続財産の全部又は一部を処分しないこと等)などの条件があります。
亡くなった方の預金を引き出す行為は、この「単純承認」とみなされる可能性があります。
このため、もし亡くなった方の預金口座から預金を引き出し、単純承認とみなされた場合には、亡くなった方に多額の借金などのマイナス財産があることが発覚した場合でも、相続放棄が認められないというリスクがあります。
相続放棄手続きについては、以下の記事で詳しく解説しておりますので、ぜひご参照ください。
⑵ 他の相続人とのトラブルに発展する可能性
亡くなった方の預貯金は、遺言により取得者が定まっている場合や遺産分割協議により誰がどの預金をいくら取得するか定まった場合を除いて、相続人全員の共有財産となります。
そのため、遺言がなく、遺産分割協議が未了の段階で、一部の相続人が他の相続人の了解を得ずに無断で預金を引き出してしまうと、他の相続人との間でトラブルに発展する可能性があります。
最悪の場合には、他の相続人の方から、不当利得返還請求や損害賠償請求といった訴訟を起こされる可能性があります。
後々のトラブルを防止するためにも、口座凍結前に亡くなった方の預金口座から預金引き出しはできる限り行わない方が賢明です。
どうしても引き出す必要がある場合には、その使途を明確にし、さらに相続人全員の了承を事前に得ておくことが重要です。
また、引き出した預金の使途、金額を他の相続人の方に説明できるように領収書等を残しておくべきです。
3 口座が凍結された後に、預金を引き出す方法
⑴ 相続手続きによる引き出し
口座が凍結されてしまった後に預金を引き出すには、相続手続きを完了させなければなりません。具体的には、亡くなった方の遺言がある場合はその内容に基づき、遺言がない場合は相続人全員で遺産分割協議を行い、亡くなった方の遺産(預貯金を含む)をどのように分割するのか決定します。
その後、相続人全員で決定した内容を「遺産分割協議書」にまとめて、これを金融機関に提出することで、預金口座を引き継ぐ者に指定された相続人が、預金口座から預金を引き出すことができるようになります。
この方法は時間がかかりますが、最もトラブルの少ない方法と言えます。
⑵ 仮払い制度の利用
もっとも、葬儀費用の支払いや、亡くなった方の借入金の返済が滞ったり、残された相続人が困窮する事態などが生じ、亡くなった方の預金口座から緊急で預金口座を引き出す必要がある場合も考えられます。
このような場合には、仮払い制度を活用することにより、亡くなった方の預金口座から預金を引き出すことができます。
この制度は、各相続人が単独で凍結された口座から預金の払い戻しを受けることができるものです。
もっとも、無制限に引き出すことはできず、以下の計算式により算出される金額が上限額となっています。
亡くなった方の死亡時の預金口座残高×3分の1×仮払い制度により払い戻しを受ける相続人の法定相続分
※ ただし上記により算出された金額が150万円を超える場合には、150万円が引き出せる上限額となります。
また、仮払い制度に基づいて銀行に預金の払い戻しを請求する際には、以下の書類を提出する必要があります。
・ 銀行所定の申請書
・ 亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本
・ 相続人全員の戸籍謄本等
・ 払い戻しを受ける相続人の印鑑証明書
なお、仮払い制度は比較的新しい制度であり、銀行ごとに必要書類等が異なる場合があります。
そのため、仮払い制度を利用される場合には、事前に各銀行に問い合わせてご確認ください。
⑶ 仮払い制度を利用する際の注意点
仮払い制度を利用する場合であっても、口座凍結前に預金を引き出した場合と同様に、①相続放棄ができなくなるおそれや②他の相続人とのトラブルに発展するおそれは変わりません。
②については、使途が明確であることを証明できるよう、必ず領収書などの証拠書類を保管しておくようにしましょう。これは、後々「使い込み」と疑われ、相続人間でトラブルに発展することを防ぐ上で非常に重要です。
①については、葬儀費用として妥当な金額だけ引き出し支出した場合などには単純承認に該当しない可能性もあります。ただし、明確に判断することは難しいので、事前に弁護士に相談するのが安全です。
身内が亡くなったらトラブルになる前に弁護士に相談を
相続は、相続人間の感情と法律が絡み合うため、親族間でのトラブルに発展しやすいものです。特に、亡くなった方の預金の使い込みが疑われるような場合、遺産分割協議とは別に、不当利得返還請求や不法行為に基づく損害賠償請求がなされるリスクも考えられます。
このようなリスクを避けるためにも、身内が亡くなり、相続や預金に関する問題が生じた場合は、できるだけ早い段階で弁護士に相談することをおすすめいたします。

「遺産分割協議後に新事実発覚!?遺産分割のやり直しは可能か」
遺産分割協議を終えた後で、新たな事実が発覚したり、内容に納得がいかなかったりした場合、そのやり直しは可能なのでしょうか。 本記事では、遺産分割協議をやり直すことができるケース及び遺産分割のやり直しについてのポイントをご説明いたします。

遺産分割協議をやり直すことができる場合とは
遺産分割に不満があったとしても、一度遺産分割協議が有効に成立している以上、法的安定性を確保する観点から、それだけの理由で遺産分割協議をやり直すことは原則としてできません。もっとも、遺産分割協議の対象となる財産や意思決定過程に問題があり、遺産分割協議が無効となる又は取り消しが認められる場合や遺産分割協議の合意解除が認められる場合には、例外的に遺産分割のやり直しが認められる可能性があります。
以下では、遺産分割協議がどのような場合にやり直すことができるかについて裁判例も交えながらご説明いたします。
(1) 相続人全員の合意がある場合に遺産分割協議をやり直すことができるか
遺産分割協議は、当事者たる相続人の私的自治で行われるものです。そのため、相続人全員の合意があれば、遺産分割協議を合意解除したうえで、遺産分割協議をやり直すことが可能です。判例も、遺産分割協議の相続人全員による合意解除を認めています(最判平成2年9月27日)。
(2) 遺産分割協議の当事者に間違いがあった場合にやり直せるか
遺産分割協議の当事者に間違いがある場合としては①本来相続人となるべき者を何らかの事情で除外して遺産分割協議を行った場合や、②相続欠格である者など、相続人でない者を加えて遺産分割協議を行った場合があり、これらそれぞれについて遺産分割協議のやり直しが認められるかをご説明します。
まず、①の場合、そのような遺産分割協議は原則として無効となり、遺産分割協議のやり直しが認められる可能性が高いです。裁判例でも同様の事例において、遺産分割協が無効となるとしています(東京地判昭和39年5月7日)。もっとも、相続開始後、死後認知等によって相続人となった者がやり直しを請求する場合、すでに他の相続人が財産の処分等をしていれば価額の支払いによる解決となり、遺産分割協議が無効であるとしてのやり直しは認められません(民法第910条)。
次に、②の場合、遺産分割協議が無効となり、遺産分割協議のやり直しが認められるかについては、事情によって結論が異なります。この点について、裁判例では、法的安定性確保の観点から、原則として当該相続人でない者が取得するとされた部分に限って無効となるとして、遺産分割協議全体を無効としてやり直しをすることは認めていません(大阪地判平成18年5月15日)。もっとも、上記裁判例でも、遺産分割協議の全体を無効としなければ著しく不当な結果となるような特段の事情がある場合には遺産分割協議全体が無効となる余地を残しており、相続人でない者が取得するとしていた財産の重要性等の事情次第では遺産分割協議全体が無効となり、遺産分割協議をやり直すことが可能となるでしょう。
(3) 遺産の範囲に関して間違いがあった場合にやり直せるか
遺産の範囲に関して間違いがある場合としては①遺産に属しない財産を分割の対象とした場合や、②本来遺産分割の対象とすべき財産を遺産分割の対象としなかった場合があり、これらについて遺産分割協議のやり直しが認められるかをご説明いたします。
まず、①の場合には、実務上遺産に属しない部分の財産分割のみが無効となり、遺産分割協議のやり直しまでは認められないとしており、裁判例でも同様の考え方がとられています(名古屋高決平成10年10月13日)。
次に、②の場合については、遺産分割の前提となる財産に認識の食い違いが生じている以上、錯誤(民法第95条)が認められ、遺産分割協議を取り消すことで遺産分割のやり直しが可能となる可能性が高いです。裁判例でも②の事例で、錯誤(改正前民法95条)が認められた結果、遺産分割協議が全体として無効となるとしたものがあります(東京地判平成27年4月22日)。
(4) その他遺産分割のやり直しが可能な場合
一般的に遺産分割協議が無効となる可能性があるのは上記の(1)~(3)に記載した通りです。もっとも、上記の場合のほかにも、遺産分割協議において詐欺や脅迫が行われた場合や、遺産分割協議の前提とした事情について認識の食い違いがあった場合には遺産分割協議を取り消した上で、遺産分割協議のやり直しができるとされています(民法第94条、第95条、第96条)。
遺産分割のやり直しのポイント
続いて遺産分割のやり直しを希望される方へ向けたポイントを3つご紹介します。
まず1つ目のポイントは、遺産分割を相続人全員の合意によってやり直す場合、前回の遺産分割協議を全員の合意によってやり直すことを明記しておくことが重要であるということです。
遺産分割協議を1(1)に記載した相続人全員の合意解除によってやり直す場合、遺産分割協議が2回存在することとなります。そのため、のちに2回目の遺産分割協議の有効性を争われた場合に備え、遺産分割協議書に1回目の遺産分割協議を相続人全員の合意によって解除し、新たに遺産分割協議を行う旨を明記しておくことが望ましいです。
次に2つ目のポイントは、他の相続人の同意を得ず、1回目の遺産分割協議が無効であるとして遺産分割のやり直しを行う場合、証拠収集が非常に重要であるということです。
他の相続人の同意を得ず、遺産分割協議のやり直しを行い、争いになった場合、そもそも前回の遺産分割協議は無効であるとして、裁判所に対し、遺産分割協議無効確認の訴えを起こす必要がある可能性があります。こうした場合には、1回目の遺産分割協議の有効性に争いがあることを証拠によって示す必要があります。ですので、1回目の遺産分割が無効であることを示す客観的な証拠を収集しておくことが望ましいです。また、ご自身の考える証拠が十分なのか不安がある方は、弁護士等の専門家に相談することも有力な選択肢となるでしょう。
そして3つ目のポイントは、やり直しが必要であることが判明した場合には、できるだけ早く手続きを開始するないし専門家に相談することが重要であるということです。
理由としては、仮に遺産分割の無効、解除によるやり直しが認められ、新たに遺産分割協議を行うとしても、遺産が第三者に売却等されている場合には、当該遺産を取得できない可能性があるためです。平成30年の民法改正によって追加された民法第899条の2により、法定相続分を超える権利の承継については、対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができないということが明記されました。これにより、遺産分割後、土地や建物についてやり直しを行う前に売却等が行われ、登記がされた場合には、やり直しによる遺産の取得を主張できなくなってしまいます。ですので、やり直しが必要であることが判明した場合には、遺産が売却・登記される前に、できるだけ早く手続きを開始したり、専門家に相談したりすることが望ましいでしょう。
遺産分割のやり直しについてのお悩みは当事務所にご相談ください
これまで述べてきたとおり、遺産分割のやり直しは原則として認められませんが、特段の事情がある場合や相続人全員の同意があれば可能です。もっとも、遺産分割のやり直しを考える場合、必要な資料の準備や証拠収集など、ご自身のみで行うには非常に大きな負担となる可能性が高いです。そして、これらの手続きについては、弁護士等の専門家のサポートを受けることで迅速かつ満足のいく解決が可能な可能性も高いといえます。そこで、当事務所では遺産分割のやり直しについての問題でお困りの方を全力でサポートいたします。
具体的には、遺産分割のやり直しが可能かどうかについてのリーガルコメントの提供、他の相続人の方との交渉、遺産分割協議無効確認の訴えを行うなど様々なサポートを行っております。
また、千瑞穂法律事務所では、相続分野を強みとしている弁護士のほか、非常勤裁判官に任官されている弁護士や36年という長期にわたって裁判官を務めていた弁護士がおり、それぞれの事例で遺産分割協議の無効によるやり直しを裁判官が認めるかどうかの判断基準をお伝えすることができ、裁判官の視点も踏まえた解決方法の提示をすることが可能です。
遺産分割のやり直しに関する問題で悩まれている方は、お気軽にご相談ください。

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【知らないと数千万円損も】広島の相続不動産「円満売却」の絶対法則|税金・揉め事・事業承継の最適解
(モデルケース)広島の資産家A様の「眠れない夜」
広島市内でクリニックを経営するA様(60代)。先日、先代である父親が亡くなり、ご兄弟3人で、広島市中心部にある土地と収益マンション、そしてご実家を相続することになりました。
遺産の総額は大きいものの、そのほとんどが不動産。高額な相続税の納税期限は、刻一刻と迫ってきます。
「兄さんは先祖代々の土地を売りたくないと言い、妹はとにかく現金で公平に分けてほしいと主張している。納税資金も準備しなければならないし、一体どうすれば…」
弁護士や税理士に相談すべきとは分かっていても、誰に相談すれば本当に家族のためになるのか分からない。大切な家族が、資産を巡ってバラバラになってしまうかもしれない。そんな不安から、A様は眠れない夜を過ごしていました。
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さあ、あなたの「眠れない夜」に終止符を打ちましょう。
1 なぜ、資産家の相続は「換価分割」が最適解になりうるのか?
遺産の分割方法には、代表的なものとして「現物分割」「代償分割」「換価分割」の3つがあります。このうち、私たちは、多くのケースで「換価分割(不動産を売却して現金で分ける方法)」を視野に入れるべきだと考えています。
(1)「公平」という名の幻想 ― 代償分割の落とし穴
「長男が不動産を継ぎ、他の兄弟に代償金を払う」という代償分割は、一見すると丸く収まるように見えます。しかし、ここには大きな落とし穴があります。
不動産の「評価額」が争いの火種になる:
「路線価」「固定資産税評価額」「時価(実勢価格)」…どの基準を使うかで評価額は数千万円単位で変わります。不動産をもらう側は安く、もらう側は高く主張しがちで、ここが決まらなければ話し合いは永遠に平行線です。
「本当に払えるのか?」という不信感:
高額な代償金は、通常、分割払いになります。しかし、その支払いが滞れば、家族間に深刻な亀裂が入ります。
(2)換価分割がもたらす「絶対的な公平」と「3つのメリット」
換価分割は、不動産を第三者に売却し、その代金を分配する方法です。これにより、上記の問題はすべてクリアになります。
メリット①:絶対的な公平性の実現
1円単位まで明確に分けられる「現金」で分配するため、「不公平だ」という不満や疑念が生じる余地がありません。これこそが、円満相続の最大の基礎となります。
メリット②:納税資金問題の完全解決
売却代金から相続税を一括で納付できるため、「納税のために借金をする」「物納を検討する」といった悩みから解放されます。
メリット③:将来の紛争リスクの根絶
不動産を共有名義で残すことは、問題を次世代に先送りするだけです。換価分割は、共有関係を完全に解消し、あなたのお子さんやお孫さんの代に紛争の種を残しません。
【弁護士の視点】裁判所も選択する「換価分割」という解決策
遺産分割調停がまとまらずに家庭裁判所が審判を下す場合、最終的に裁判官は「不動産を競売にかけ、その代金を分配しなさい」という判断(審判)を下すことが少なくありません。これを「換価競売」と呼びます。このような判断(審判)が下される理由の1つは、裁判所は「法の下の公平」の実現を重視するからです。裁判所が最終手段として選ぶ方法(=「換価競売」)を、当事者の合意のもとで、より有利な条件(市場価格での任意売却)で、裁判所の判断(審判)に先行して自主的に行う。それが「換価分割」の本質であり、極めて合理的な解決策なのです。
【まとめ】
不動産を無理に残そうとすることが、かえって家族の絆を壊すことがあります。換価分割という選択肢を冷静に検討することが、円満解決への第一歩です。
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2 【弁護士が徹底解説】換価分割・成功への7ステップ
換価分割は、法務・税務・不動産実務が複雑に絡み合うプロジェクトです。自己流で進めると、思わぬトラブルや損失を招きます。ここでは、私たちがプロジェクトの「指揮者」となって進める場合の「成功へのロードマップ」を具体的に示します。
ステップ1:専門家チームによる総合戦略会議
ステップ2:元裁判官の視点で創る「完璧な」遺産分割協議書
ステップ3:大手司法書士法人との連携による「最速」の相続登記
ステップ4:広島の不動産市場を熟知したプロによる「高値売却」戦略
ステップ5:契約書に潜むリスクを見抜く「弁護士のリーガルチェック」
ステップ6:安全・確実な代金決済と所有権移転
ステップ7:元国税OB税理士による「万全の」税務申告と最終分配
当事務所にご依頼いただければ、あなたは個別に税理士や司法書士、不動産会社を探し、何度も同じ説明をする必要はありません。私たちの事務所が窓口となり、すべての専門家があなたの情報をシームレスに共有し、ストレスフリーで最適な結果を導き出します。
【まとめ】
成功の鍵は、各分野の専門家を束ねるプロジェクトの「指揮者」がいるかどうかです。
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3 【知らないと数千万円損も】元国税OB税理士が明かす、不動産売却の「最強節税術」
換価分割で最大の懸念点は「税金」です。しかし、ご安心ください。法律で認められた特例を最大限活用すれば、税負担は劇的に軽減できます。
(1)絶対に活用すべき「取得費加算の特例」
これは最強の節税策です。支払った相続税額の一部を、不動産の取得費(仕入れ値)に上乗せできるというものです。これにより売却益が圧縮され、譲渡所得税が大幅に安くなります。
落とし穴:
この特例には「相続開始から3年10ヶ月以内に売却」という時間制限があります。遺産分割で揉めて時間を浪費すると、この権利を失い、数百万~数千万円の税金を余計に払う羽目になります。だからこそ、迅速な解決が不可欠なのです。
(2)「3,000万円特別控除」を使いこなす
ご実家などを売却する場合、一定の要件を満たせば売却益から最高3,000万円を控除できる特例があります。これには「居住用」と「空き家」の2種類があり、適用要件が非常に複雑です。
プロの視点:
例えば「空き家特例」では、売却前に建物を取り壊す必要がありますが、更地にすると固定資産税が最大6倍に跳ね上がります。売却のタイミングと税額のバランスをシミュレーションし、最も有利な選択肢を導き出すのが私たちの役目です。
【弁護士の視点】税務署は「ココ」を見ている
税務署が特に厳しくチェックするのは、不動産の「取得費」の根拠と、特例適用の「要件」です。古い不動産で契約書がない場合、安易に「概算取得費(売却額の5%)」で申告すると、本来よりはるかに高い税金を払うことになります。私たちは、登記簿や当時の資料を徹底的に調査し、法的に認められる範囲で取得費を積み上げます。また、特例の適用についても、税務署が「是」とする万全の証拠書類を揃えて申告します。私たちのチームには、税務署で資産税部門に在籍していた税理士が在籍するため、必要な資料を整えて、万全の申告をすることができるのです。
【まとめ】
税金対策は、知識と経験、そして「時間」との勝負です。少しでも早くご相談いただくことが、最大の節税に繋がります。
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4 資産家特有の難問 ― 事業承継・収益物件・共有不動産への最適解
(1)【親族経営の会社オーナー様へ】事業承継と相続の同時解決
当事務所は、数多くの親族経営企業の顧問弁護士として、事業承継問題を解決してきました。
自社株の分散防止:
経営権の要である自社株が、相続によって後継者以外に渡ることは絶対に避けなければなりません。遺言、生前贈与、そして遺産分割協議を組み合わせ、不動産売却で得た資金で他の相続人の遺留分を支払う(代償分割とのハイブリッド)など、会社の未来を守るための最適なプランを設計します。
株式評価を巡る争いへの対応:
非公開株式の評価は非常に専門的で、争いの元になりがちです。提携する公認会計士や税理士と共に、法的に正当な評価額を算出し、後継者に不当な負担がかからないよう交渉します。
(2)【アパート・マンションオーナー様へ】収益不動産の円満分割
広島市内で収益不動産を複数お持ちの場合、その分割はさらに複雑になります。
管理・運営権の問題:
売却までの間の家賃収入の分配、修繕費の負担、管理会社との折衝など、煩雑な問題を弁護士が窓口となって整理します。
資産価値の最大化:
連携する不動産会社は、収益物件の売買に特化したプロフェッショナルです。入居率や将来性などを正確に査定し、最も高く評価してくれる買主を見つけ出します。
【弁護士の視点】調停の場で、当事者は何を話すのか
遺産分割調停の場で、私たちは多くのご家族の「本音」に触れてきました。「兄さんばかり優遇されてきた」「この家には私の思い出がたくさんある」などなど。遺産分割は、法律や数字だけでは割り切れない、長年の感情が噴出する場でもあります。私たちは、この現実を知っているからこそ、法律論を振りかざすのではなく、まず皆様一人ひとりのお気持ちを丁寧に紐解きます。その上で、法的な落としどころと、感情的な納得感の両方を満たす解決策を提示します。この「対話」と「共感」のプロセスこそが、本当の意味での円満解決に不可欠なのです。
【まとめ】
あなたの資産背景が複雑であるほど、私たちのチームが持つ総合力が真価を発揮します。
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5 よくあるご質問(Q&A)
Q1. 相談したら、必ず依頼しないといけませんか?
A1. いいえ、そんなことは全くありません。まずは初回相談で、私たちの専門性や人柄が信頼に足るか、じっくりご判断ください。その上で、ご依頼いただくかどうかを決めていただければ結構です。私たちは、無理な勧誘は一切いたしません。
Q2. 弁護士費用はどのくらいかかりますか?
A2. 事案の複雑さや財産額によって異なります。初回相談の際に、私たちの役割、解決までの道筋を明確にご説明した上で、詳細な費用のお見積りを提示するという流れになります。ご納得いただくまで、丁寧にご説明しますのでご安心ください。
Q3. まだ家族間では揉めていないのですが、相談しても良いのでしょうか?
A3. はい、もちろんです。むしろ、揉めていない段階でご相談いただくことが、最高の「争続対策」になります。事がこじれる前に専門家が交通整理をすることで、驚くほどスムーズに、そして円満に解決することが可能です。
最後に:あなたの「決断」が、家族の未来を創る
あなたの前にも、今、2つの道があります。
一つは、これからも一人で悩み、不確実な情報に振り回され、家族との関係が悪化するリスクを抱え続ける道。 もう一つは、今日、勇気を出して専門家の扉を叩き、家族の絆と大切な資産の両方を、万全の形で次世代へ繋ぐ道。
どちらを選ぶかは、あなた次第です。 しかし、もしあなたが後者を選ぶなら、私たちにはそのための知識、経験、そして何よりも「あなたの家族を幸せにしたい」という強い想いがあります。
初回相談は、あなたの未来への第一歩です。
当事務所は広島市中心部にございます。お電話または下記フォームより、お気軽にご連絡ください。

