遺産を独り占めしようとする相続人がいる場合の対処法|広島の弁護士が解説

「遺産はすべて自分がもらう」と主張する相続人が現れた——。そんな状況に直面し、どう対処すればいいかわからず、お困りの方が広島市でも少なくありません。「長男だから」「介護したから」など一方的な理由を持ち出してくる相続人に対し、泣き寝入りをする必要はありません。法律は、すべての相続人の権利をきちんと守っています。広島で遺言・相続案件を専門に取り扱う千瑞穂法律事務所が、遺産の独り占め問題への対処法を、法的根拠とともにわかりやすく解説します。

このページの目次

1.特定の相続人が「遺産はすべて自分がもらう」と主張してお困りの方へ

(1)よくある「独り占め」のパターン

「遺産の独り占め」といっても、実際の相談をお聞きすると、その状況はさまざまです。まずは、よくある4つのパターンを確認しましょう。

ア 「長男だから」「家を継ぐから」という主張

被相続人の長男が「自分が家督を継ぐのだから、遺産もすべて自分のものだ」と言って譲らないケースです。しかし、現行の民法には家督制度は存在しません。1947年(昭和22年)の民法改正により廃止されており、長男であることを理由に遺産全額を取得する法的根拠はまったくありません。このような主張は、法律的には通らないものです。

イ 「介護していたから全部もらう権利がある」という主張

被相続人が亡くなる前に長年介護をしていた相続人が、「自分だけが苦労してきたのだから、遺産はすべてもらう権利がある」と主張するケースです。介護の貢献は「寄与分」として相続に反映される余地はありますが(詳細は後述)、全額を独り占めできる根拠にはなりません。寄与分の主張が過大である場合、他の相続人はこれを拒否することができます。

ウ 被相続人の預金を無断で引き出している(使い込み)

相続開始の前後に、一部の相続人が被相続人名義の預金口座から現金を無断で引き出しているケースです。「生活費のため」「介護費用のため」などと言いながら実際には私的に流用しているケースも多く、放置すると相続財産が大幅に目減りしてしまいます。早急な証拠保全が必要です。

エ 遺言書を根拠に全財産の取得を主張

「遺言書に自分に全財産を譲ると書かれている」として、他の相続人の取り分を認めない主張をするケースです。遺言書があっても、他の相続人の「遺留分」は保護されます。また、遺言書の有効性自体を争えるケースもあります。

(2)こんなお悩みはありませんか

独り占めを主張する相続人が現れると、さまざまな形で圧力をかけてくることがあります。次のようなお悩みを抱えている方は、早めにご相談ください。

ア 「協議書に早く印鑑を押せ」と迫られている

遺産分割協議書への署名・押印を強引に求められているケースです。内容を十分に確認する前に印鑑を押してしまうと、後から覆すことが非常に困難になります。「早く終わらせたい」という気持ちにつけ込んで迫ってくることも多いため、必ず弁護士に内容を確認してもらってから対応することが重要です。

イ 「遺産はこれだけしかない」と言われているが信用できない

財産調査を担当した相続人が「遺産はこれだけだ」と言っているが、実際にはもっと財産があるのではないかと疑っているケースです。相続人であれば、自分で財産調査を行う権利があります。金融機関への照会や不動産の名寄帳の取得など、独自に調査することが可能です。

ウ 「弁護士を使うほどのことではない」と言われたが納得できない

相手方から「親族内のことなのだから弁護士を入れるまでもない」などと言われ、専門家への相談をためらっているケースです。しかし、遺産の独り占め問題は、相続人の正当な権利が侵害される深刻な問題です。弁護士に相談することは権利であり、遠慮する必要はまったくありません。

2.「長男だから」「介護したから」——そのような主張は法的に通るのか

(1)遺産は相続人全員の共有財産(民法898条・899条)

被相続人が亡くなると、その時点で遺産はただちに相続人全員の「共有財産」となります(民法898条)。各相続人は、それぞれの相続分に応じてその権利義務を承継します(民法899条)。つまり、誰か一人が勝手に遺産を処分したり取得したりすることはできないのです。遺産の分け方を決めるには、原則として相続人全員の合意が必要です。

(2)法律が保障するあなたの正当な権利「法定相続分」とは

民法900条は、相続人が複数いる場合の取り分(法定相続分)を明確に定めています。

ア 法定相続分の具体的な割合

相続人の組み合わせによって、それぞれの法定相続分は異なります。配偶者と子が相続人の場合は配偶者が2分の1、子全員で残りの2分の1を等分します。配偶者と親(直系尊属)が相続人の場合は配偶者が3分の2、親全員で3分の1。配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合は配偶者が4分の3、兄弟姉妹全員で4分の1となります。子が複数いる場合はその人数で均等に分けます。

イ 遺言書がある場合でも「遺留分」は守られる

たとえ遺言書に「全財産を特定の一人に譲る」と書かれていても、配偶者・子・直系尊属(父母・祖父母)には「遺留分」として最低限の取り分が法律上保障されています(民法1042条)。遺留分を侵害された場合は、受け取った相手に対してその侵害額相当の金銭の支払いを請求することができます(遺留分侵害額請求)。

(3)「介護したから全額もらえる」は間違い——寄与分の正しい理解

ア 寄与分として認められる要件

民法904条の2は、被相続人の事業への労務提供や財産給付、療養看護などによって被相続人の財産の維持または増加に「特別の寄与」をした相続人に、その貢献度に応じた「寄与分」を認めています。ただし、「特別の寄与」と認められるためには、通常の親族間で期待される範囲を超えた相当程度の貢献が必要であり、単に親と同居していた、通院に時々付き添っていた程度では認められないことが多いです。

イ 寄与分は法定相続分への「上乗せ」であり全額取得の根拠にはならない

仮に寄与分が認められたとしても、それは「法定相続分に一定額を上乗せする」ものにすぎず、他の相続人の取り分をゼロにする根拠にはなりません。「介護したから全額もらえる」という主張は、法律的には成り立ちません。寄与分の額は相続人全員の協議で決めますが、合意できなければ家庭裁判所の審判によって決定されます。

3.泣き寝入りしないために!今すぐ取るべき3つの行動

遺産の独り占めに気づいたら、時間を無駄にしてはいけません。できるだけ早く以下の3つの行動を取ることが、あなたの権利を守ることにつながります。

(1)行動① 遺産分割協議書に印鑑を押さない

ア なぜ押してはいけないのか

遺産分割協議書は、相続人全員が署名・押印した時点で法的に有効な合意として成立します。一度成立した協議書を後から変更・取り消すには、協議書が錯誤・強迫等によるものだったことを立証するか、相続人全員の再合意が必要となり、どちらも容易ではありません。どんなに急かされても、内容に納得していない状態で印鑑を押してはいけません。

イ 圧力をかけられているときの対処法

「早く押さないと手続きが進まない」「相続税の申告期限がある」などと急かしてくることがあります。しかし、申告期限(相続開始から10か月)を超えた場合でも、法定相続分で申告する方法があります。焦らず、まず弁護士に相談して内容を精査してもらうことが最善の対処法です。

(2)行動② 預金の無断引き出しがないか証拠を保全する

ア 口座の凍結手続き

被相続人が亡くなったことを金融機関に連絡することで、その口座は凍結されます。凍結後は相続手続きが完了するまで入出金が停止されるため、他の相続人が無断で引き出すことを防ぐことができます。特に被相続人が高齢で、一部の相続人が通帳や印鑑を管理していた場合は、死亡後すみやかに金融機関へ連絡することが重要です。

イ 取引履歴の取得と証拠確保の方法

口座凍結と並行して、取引明細書の発行を申請しましょう。過去5〜10年分の入出金記録を取得することで、不自然な高額引き出しや頻繁な出金がないかを確認できます。引き出しの事実が記録に残っていれば、後の不当利得返還請求や損害賠償請求において重要な証拠となります。取得には被相続人の除籍謄本や申請者の本人確認書類等が必要です。

(3)行動③ 弁護士を通じた毅然とした交渉をスタートする

ア 弁護士に依頼するタイミング

「もう少し話し合ってみてから」と先延ばしにする方も多いですが、独り占めを主張する相続人がいる場合は、なるべく早い段階で弁護士に相談・依頼することをお勧めします。早期に弁護士が介入することで、証拠の散逸を防ぎ、相手方の不当な行動をけん制することができます。また、交渉が長引くほど双方の感情的対立が深まり、解決が難しくなっていく傾向があります。

イ 広島の千瑞穂法律事務所が対応できること

広島市に拠点を置く千瑞穂法律事務所では、遺産分割交渉の代理、遺産分割調停・審判の申立て、不当利得返還請求訴訟、遺留分侵害額請求など、遺産の独り占め問題に関するあらゆる法的手続きに対応しています。初回相談は無料ですので、「まず話を聞いてもらいたい」という段階からお気軽にご連絡ください。

4.遺言書に従って遺産の独り占めを主張された場合

(1)まず確認すべきこと——遺言書は本当に有効か

ア 遺言書が無効になる主なケース

遺言書には法律上の方式が定められており、これを満たさないものは無効です。特に自筆証書遺言については、①全文・日付・氏名がすべて遺言者本人の自筆であること、②押印があること、③訂正方法が民法の定める方式に従っていること、などの要件があります(民法968条)。これらのいずれかを欠く場合は遺言書として無効となります。また、遺言書の作成時に認知症等により意思能力を欠いていた場合、詐欺・強迫によって作成させられた場合なども無効を主張できます。

イ 公正証書遺言でも無効になることがある

公正証書遺言は公証人の関与のもとで作成されるため、形式的な瑕疵は生じにくいのですが、それでも「作成時に遺言能力がなかった」という主張は可能です。公証人は法律の専門家ですが医師ではないため、認知症の症状があっても見落とすことがあります。疑いがある場合は、作成当時のカルテや介護記録などを手がかりに無効を主張することを検討しましょう。

(2)遺言書が無効な場合の対処法——遺言無効確認請求

ア 遺言無効確認調停・訴訟とは

遺言書の有効性について争いがある場合、まず家庭裁判所に「遺言無効確認調停」を申し立てることができます。調停で合意できない場合は「遺言無効確認訴訟」に移行します。訴訟で遺言書の無効が確認されれば、法定相続分に基づいた遺産分割協議を改めて行うことになります。

イ 手続きの流れと弁護士関与の重要性

遺言無効の主張には、医療記録の精査や専門家(医師・筆跡鑑定人等)の意見書の取得が必要になることも多く、手続きが複雑です。また、遺言無効確認訴訟は通常の民事訴訟手続きで進むため、法律知識がない状態での対応は非常に困難です。証拠収集から裁判所での主張・立証まで、弁護士に一貫したサポートを依頼することをお勧めします。

(3)遺言書が有効な場合の対処法——遺留分侵害額請求

ア 遺留分とは何か・その割合

遺言書が有効であっても、配偶者・子・直系尊属には「遺留分」として最低限の財産取得が保障されています(民法1042条)。遺留分の総額は、相続人が直系尊属のみの場合は相続財産の3分の1、それ以外の場合(配偶者・子がいる場合)は相続財産の2分の1です。各自の遺留分はこの総額を法定相続分の割合で按分した額となります。なお、兄弟姉妹に遺留分はありません。

イ 請求の方法と注意すべき時効(1年・10年)

遺留分を侵害された場合は、遺産を取得した相手方に対して遺留分侵害額相当の金銭の支払いを請求できます(遺留分侵害額請求権)。この請求権には時効があり、「相続の開始および遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から1年」または「相続開始の時から10年」で消滅します(民法1048条)。どちらか早い期限が到来すると請求できなくなりますので、遺言書の内容に不満があれば早急に弁護士にご相談ください。

5.遺言書はないが遺産を独り占めしようとする相続人がいる場合

(1)遺産分割協議での正しい対応

ア 全員の合意なしに分割は成立しない

遺言書がない場合、遺産分割は原則として相続人全員の合意によって行われます(民法907条1項)。つまり、独り占めを主張する相続人がいても、他の相続人が同意しない限り、その主張どおりに遺産を分けることはできません。「全員が合意しない限り協議は成立しない」という原則は、独り占めを主張する側の最大の弱点です。この原則を踏まえて、安易に合意しないことが何より重要です。

イ 弁護士による代理交渉の活用

感情的な対立がある場合や、相手方から直接圧力をかけられている場合は、弁護士を代理人として選任することが有効です。弁護士が代理人になれば、以後の交渉はすべて弁護士を通じて行われますので、相手方から直接連絡が来ることもなくなります。弁護士は法定相続分を前提に適正な分割案を提示し、相手方の不当な主張に対して法的な反論を行います。

(2)話し合いが決裂した場合——遺産分割調停・審判へ

ア 遺産分割調停の申立て方法と流れ

当事者間の話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てることができます。申立ては相手方相続人の住所地を管轄する家庭裁判所(または当事者が合意した家庭裁判所)に行います。費用は収入印紙1200円と郵便切手代のみで、弁護士なしでも申立て自体は可能ですが、調停期日での主張・立証を適切に進めるためには弁護士のサポートが心強いです。調停では、裁判官と調停委員が中立の立場で双方の話を聞き、合意形成を後押しします。

イ 調停不成立の場合は審判へ移行する

調停が不成立となると、自動的に「遺産分割審判」に移行します(家事事件手続法272条)。審判では相続人間の合意は不要で、裁判官が遺産の分割方法を決定します。審判の内容に不服がある場合は即時抗告(高等裁判所への不服申立て)ができますが、法的根拠のない主張を続けることは難しくなります。

ウ 審判の内容には強制執行力がある

審判によって確定した遺産分割の内容は、相手方が従わない場合に強制執行が可能です。不動産の名義変更や預金の払い戻しを相手方が拒否したとしても、強制執行によって実現することができます。最終的には法律の手続きが独り占めを防ぐ有効な手段であることを、覚えておいてください。

6.相続財産の規模が大きい場合(不動産・株式・事業を持つ方)の注意点

相続財産に多額の不動産や非上場株式、事業用資産が含まれる場合、遺産の独り占め問題はより複雑な様相を帯びます。広島市周辺でも、土地や賃貸物件を多く所有する地主の方や、中小企業を経営している方の相続では、こうした問題が起きやすい傾向があります。

(1)財産評価の争いが独り占め問題を複雑にする

ア 不動産評価額をめぐる対立

不動産の評価方法には時価(実勢価格)、路線価(相続税評価額)、固定資産税評価額などがあり、どの基準を使うかによって評価額が大きく変わります。独り占めを主張する側が意図的に低い評価額を提示して遺産の総額を小さく見せようとするケースや、自分が取得したい不動産を低く、他の相続人に渡したい財産を高く評価しようとするケースも見受けられます。客観的な証拠として不動産鑑定士による鑑定評価を取得し、対抗することが有効です。

イ 非上場株式・事業資産の評価問題

中小企業の株式や事業用資産は市場での取引価格がなく、評価方法が複雑です。純資産価額方式・類似業種比準方式など複数の評価手法があり、どの方法を選択するかで評価額が大幅に変わることがあります。こうした案件では税理士との連携が不可欠であり、弁護士と税理士が早期から協力して対応することが重要です。

(2)特別受益・寄与分が複雑に絡み合うケース

事業を長年手伝ってきた相続人の寄与分や、生前に事業資金の援助を受けていた相続人の特別受益など、複数の要素が絡み合うケースでは、単純な法定相続分どおりの分割では全員が納得しないことがほとんどです。これらの算定には過去の事業に関する資料や金融記録が必要になることも多く、弁護士が早期に関与して証拠を確保しておくことが解決への近道となります。

(3)相続税の申告期限(10か月)との競合リスク

ア 特例が使えなくなると税額が大きく増える

遺産分割協議が相続開始から10か月以内に完了しないと、「小規模宅地等の特例」(居住用・事業用宅地の評価額を最大80%減額できる)や「配偶者の税額軽減」といった有利な特例が適用できなくなります。相続財産に不動産が多い場合や配偶者が相続人となっている場合、これらの特例が使えないことによる税額の増加は、数百万円から数千万円にのぼることもあります。

イ 早期解決が節税にもつながる

遺産の独り占め問題が長期化すると、この申告期限を過ぎてしまうリスクが高まります。千瑞穂法律事務所では必要に応じて税理士との連携も行っており、法律面・税務面の両方から最善の解決策を検討します。「相続争いを解決することが節税にもつながる」という視点で、早期の相談をお勧めしています。

7.まずはご相談ください——広島市の千瑞穂法律事務所

(1)弁護士が早期に関与することで変わること

ア 感情的対立の緩和と適正な交渉

独り占めを主張する相続人と当事者同士で直接交渉を続けると、どうしても感情的な対立が深まり、本来解決できるはずの問題が難しくなっていくことがあります。弁護士が代理人として間に入ることで、交渉を法律的な観点に立ち戻らせ、冷静な話し合いを進めることができます。

イ 証拠保全・財産調査の迅速対応

使い込みの疑いがある場合や財産が隠されているおそれがある場合は、早期の証拠保全と財産調査が不可欠です。弁護士であれば、金融機関への照会、不動産の調査、取引履歴の取得などを法的な裏付けをもって迅速に進めることができます。

ウ 調停・訴訟・税務の専門家チームによるサポート

千瑞穂法律事務所は遺言・相続分野を専門に取り扱っており、特に不動産や事業資産を含む高額案件の遺産分割に豊富な経験を有しています。交渉から調停・審判・訴訟まで一貫して対応するとともに、必要に応じて税理士・司法書士・不動産鑑定士などの専門家とも連携し、法律面・税務面・登記面での総合的な解決をサポートします。

(2)初回相談無料・完全予約制

ア 相談の流れと費用の目安

初回相談は無料で承っています。相談いただいた内容をもとに、事案の概要と今後の対処方針についてご説明します。正式にご依頼いただく場合の費用については、事案の複雑さや争いの規模によって異なりますので、相談時に個別にご説明いたします。

イ お問い合わせ方法

広島市内にお住まいの方はもちろん、広島県内のどこからでもご相談いただけます。お電話またはお問い合わせフォームにてご予約のうえ、お越しください。遠方の方や外出が難しい方には、オンライン相談にも対応しています。「すぐに来所する余裕はないが、まず話だけ聞いてほしい」というご要望にも柔軟に対応いたしますので、お気軽にお問い合わせください。

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